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マーケティング研究 他社事例 730 「やり抜く文化を育てる1」 ~NECの新野改革~

2021-01-19 08:38:46 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 730 「やり抜く文化を育てる1」 ~NECの新野改革~


昔、ある方から、『大企業は大企業に学び、中小企業は中小企業から学ぶ』という言葉を教えていただきました。

当時はあまりそのことがしっくり来なかったのですが、今では理解しているつもりです。

・・・ですが、それでも大企業が何に取り組んでいるかを知る事は悪い事では無いとも思っているので、今回はNECの人材育成について取り上げて考えて行きたいと思います。

NECは現在、株式市場からの評価が高まっています。

当時NEC副社長だった新野副社長の社長昇格が2016年4月でしたが時価総額は7000億円前後でした。

ところが2020年10月には2倍以上の1兆6000億円前後となっています。

これは新野社長の取り組みが大きいと言われています。

大和証券は今後も株価の上昇基調が続くとしており「買い」の投資判断を下しています。(2020年10月現在)

アナリストからは、「社長就任当初はおとなしかった新野さんが豹変した」と評価しています。

おとなしいと評価されていた新野氏ですが、私はビジョナリーな人だっただけと思います。

名著ビジョナリーカンパニー(ジム・コリンズ)では、第5段階の経営者と説明されていますが、その経営者像と新野氏が私には重なって見えます。

新野氏が変わり始めたとされているのは社長就任後8カ月が経過した2016年暮れの事です。

川島CFO(当時)から事前に受けていた「2016年度第3四半期の業績が悪い結果となりそうだ」との報告の通り、業績悪化が確定的になった時期でもあります。

それまで新野氏は川島氏の悲観的な見通しに対して、「そんなことはないはずだ」と疑っていました。

公共・医療・金融向けの事業部門や、通信会社向けの事業部門など、「ビジネスユニット(BU)」と呼ぶ9つの大組織を率いる各BU長たちが、新野氏に「上期は不調だったが、毎年収益が集中する下期に巻き返す」との楽観的な報告を上げてきていたからです。

しかし、2016年度第3四半期の数値が固まってくるにつれて、下期に入っても不調が続いていることが濃厚になりました。

年度末を迎え、2016年度通期決算の蓋を開けてみれば、売上高は前年度比5.7%減の2兆6650億円、営業利益は同54.2%減の418億円の減収減益となりました。

特に営業利益は期初に予想した1000億円の半分にも届きませんでした。

新野氏は「とんでもない結果だ。企業文化に問題がある。ビジネスプランを立てることは出来るけれども、最後まで『やり抜く力』がない」と痛感したそうです。

BU長から末端の社員まで実行力を植え付けるべく、『新野改革』が始まりました。

まず決断したのが2016年度にスタートしたばかりだった3ヶ年の中期経営計画の撤回でした。

自らが策定を主導した中計でしたが、このままでは最終年度である2018年度の業績目標を達成できないと判断しました。

2018年度を初年度とする新たな3ヶ年の中計を急いで策定し、2018年1月に公表しました。

最終年度である2020年度の業績目標は、撤回した中計と同じ売上高3兆円、営業利益1500億円、営業利益率5%としました。

ところが、株式市場の反応は冷ややかでした。

NECには実は前科があるからでした。

遠藤信博会長が社長だった時代に取り組んだ2010年~2012年度と2013年~2015年度の中計は、どちらも最終年度の業績目標を達成できずに終わっていました。

半導体などの分野で世界一を誇ったかつての『名門企業』は見る影も無く、中計を練り直して目標達成時期を2年間延長したところで、NECにはもはや、やり抜く力はないとの諦めが株式市場に広がっていました。

(続く)



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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 
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