図書館で「音」と名がつく本を見かけたら、とりあえず借りてきて一通り目を通すことにしている。
で、先日「新刊コーナー」で目に触れたのがこの本。
さして期待もせずにペラペラと頁をめくっていたら、150頁に「超高周波音が音楽の印象を変える」との項目立てがあった。
オッ、これは面白そう!
大要、次のとおり。
先に、唐揚げが食べ頃になると(油がはじける音に)超高周波音が含まれると述べた。超高周波音それ自体は通常聴くことができない「非可聴音」である。
このような空気振動は人の聴こえに本当に影響するのだろうか。
このことを確かめるために、楽曲音に超高周波音を付加するとその印象がどのように変化するのかを調べてみた。
つまり、同じ楽曲に「22~60KHz」を付加して聴取してみたところ、8名の印象評価の集計は次のとおり。
ご覧のとおり、1項目を除いてすべてプラス評価となった。
これらの結果が示唆するのは本来感じることができない超高周波空気振動が付加されるとその影響を受けて可聴音の空気振動の近くが変化するということである。
つまり、人は非可聴音を含めて音源の空気振動を知覚しているという可能性が考えられる。
考えてみると、可聴音は周囲に存在するごく一部の周囲の空気振動に過ぎない。自然界には人には音として聞こえない超高周波空気振動も多く存在している。
木々の葉のこすれる音、虫や鳥の鳴き声、潮騒や川のせせらぎなどの自然環境音には超高周波音が豊かに含まれている。これらの音源から可聴音を感じるときに同時に超高周波音も身体に受けていると考えることはごく自然であろう。
以上のとおりで、周知のとおり人間の可聴帯域は「20~2万ヘルツ」とされている。
しかるに人間には聞こえないはずの2万ヘルツ以上の帯域を追加することによって「可聴音の上限近くの空気振動が変化」し、音の印象が変化するというのだからこれは聞き捨てならないですな(笑)。
オーディオは理屈では説明できないこと、言い換えると現象に理論が追い付いていないことに遭遇することが極めて多い分野だがこれは最たるものだろう。
むらむらとオーディオ魂が沸き起こってきて、さっそく実験してみたくなった。
「スーパー・ツィーター」っていったい いくら ぐらいするんだろう。オークション・サイトを覗いてみると有名な「ムラタ」製があった。
お値段は7万円・・、もっと値上がりしそうなので実験するにはちょっと高いなあ(笑)。それに肝心の能率が「88db」と低くて明らかに真空管アンプ向きではない。
ちなみに、「中高音域を鳴らすのには絶対に真空管アンプを使う」は我が家のレーゾン・デートルである。その理由は・・、もうお分かりですよね、そう「倍音」の存在です(笑)。
そこで窮余の一策として我が家の「075ツィーター」(JBL)をスーパー・ツィーターとして活用してみることにした。
なにしろ能率が「110db」とメチャ高いので小出力の真空管アンプで対応できるので大いに助かる。
どういうシステム構成にしようか・・、とはいっても、もちろん答えは決まっている(笑)。
「AXIOM80」にまったく高音不足は感じないが、「超高音」の追加によって起きる全体的な音の変化には大いに興味がある。
ポイントはツィーターの「075」のクロス・オーバーをどのあたりで設定するか・・、ここで極小値のマイカ・コンデンサー「0.075μF(マイクロ・ファラッド」の出番となる。
「クロスオーバーネットワーク早見表」で計算すると理論上はローカットが「26万5千ヘルツ」となる。無論、人間の耳で聴きとるのは不可能な範囲である。
ところが・・、「075」専用の真空管アンプで鳴らしてみると、ちゃんと音が聴こえるのである。むしろ、出過ぎるくらいなのでアンプのボリュームを6割程度に絞るほどだった。
で、問題はこの追加した「075」で全体的にどう聴こえるかということになるわけだが、たしかに高音域の輝きが増した気がするし、低音域も引き締まった印象を受ける。前述した実験通りの結果が出た。
これで万歳といきたいところだが、オーディオはそんなに甘くないです(笑)。プラスとマイナスの差引き勘定が付きまとうことが多い。
で、この場合のマイナス面としては重量級のホーンを箱に載せたせいで、(箱の)響きが抑えられたような印象を受ける。
差し引きしてどちらを選択するか・・、実に迷うがブログ主は変化を求めて075を追加する方に軍配を上げた。
とはいえ、いささか心許ないので素直に第三者の耳を借りることにした。ここで、オーディオ仲間の「Y」さんのご登場である。
「お仕事中に済みません。AXIOM80に075ツィーターを追加してみたんですが、一度聴いて頂けませんか‥、出てこれますか?」
「ハイ、いいですよ。20分後ぐらいにお伺いします」 さすがに大の「AXIOM80」ファンである(笑)。
そして・・、その後にまったく「予想だにしない展開」が待ち受けていようとはそのときは知る由もなかった。
以下、続く。
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その昔、といってもおよそ50年ほど前のことだが、当時のベストセラーに「間違いだらけのクルマ選び」という本があった。中高年の方々の一部には懐かしいタイトルだと思う。
薄給のサラリーマンにとってクルマは値が張る大きな買い物なので、失敗しないようにと参考にさせてもらった記憶があるが、その本の著者が「徳大寺 有恒」氏。
その徳大寺氏のエッセイ集が図書館の「返却専用」の書架にあったので何気なしに手に取ってみた。
2015年の刊行なのでもう10年も前のこと、別に目新しいことも書いてなさそうだがと、立ち読みしてパラパラとめくっていたところ、「金は かたち に残らないものに遣え」(163頁)という「項目」があった。これは面白そうだと借りることにした。
要約すると、
「喫煙が好きだ・・、タバコは吸うと同時に煙となって虚空に消えてしまう。その時間ははかない、しかしその短い時間の中に、くつろぎと、贅沢と、優雅さが高密度に凝縮している。こんな素敵なお金の遣い方はほかにない。かたちに残るものは買わない、それが私の一番好きな金の使い方である。」
「土地を買って家を建てる。それを人生の最大の目標にしている人たちもいる。しかし、私の趣味ではない。どんなに高い土地に高級な家を建てても、それ自体がとても貧乏くさく感じられる。そういう財産を一度つくっておけば、子や孫も安心できるだろう、などと思うのかもしれないが、子孫は子孫でがんばればいいのだ。」
以上、「間違いだらけの・・」がヒットした一因に、氏独特の歯切れの良さがあったわけだが、ここでもそれが存分に発揮されており、その決めつけ方に全面的に賛同するわけではないが、なかなか考えさせられる事柄ですね。
「子孫に美田を残さず」(西郷 隆盛)という言葉があったけど、今ではすっかり「死語」になってしまった感がある。たとえば、今の政治家なんか苦労せずに地盤を引き継いだ跡継ぎのボンボンだらけなので、日本の政治劣化の一因もそこにありそうだとは思いませんかね・・。
とはいえ、舞台の主役は「時空を駆ける遺伝子か、それとも本人自身か」という答えの出ない命題が後ろに控えているわけですが。
で、なぜこうい話を持ち出したかというと、つい最近購入したウィスキー「ラガヴリン16年」も、タバコと同様に飲んだ後は何にもかたちに残らないけど、気持ちだけは刹那的に随分贅沢になるんですよね~(笑)。
こういう芳醇なウィスキーはストレートに限りますね・・、夕食時に舐めるように少しずつ舌の上に載せながら、肴を食べていると独特の風味が程よく刺激して気分的にすごくハイになります。
大いに気に入ったので継続しようと思っているが、このくらいの贅沢は許されてもいいよねえ・・、ちなみにお値段は「角瓶」のたったの「7倍」くらいです(笑)。
というわけで「金はかたちに残らないものに遣え」に「その意気(粋)や良し!」と共感するわけだけど、これを別の観点からとらえると「刹那的な生き方」を取るか、将来を見据えた生き方を取るかを問われているような気がするわけで、いわば、前者は「無頼」派、後者は「優等生」派といえそうだ。
「優等生」派は無難だけど、傍(はた)からみてあまり魅力がないのはたしかですね~、ちなみにブログ主はどうなんだろう・・、あまり偉そうなことは言えないか(笑)。
それから、もう一つ。
<トランプ大統領の就任>
トランプさんが大統領に就任してから早くも1週間以上が経ち、さっそくいろんな波乱を巻き起こしている。
で、ネットで見かけた意見だけど・・、
「現状に生きづらさを感じて、変化を望む人々がトランプに期待するのは理解できる。ただ、人権・民主主義より経済を、国際協調より自国の利益をはっきり優先させるリーダーにあれだけ熱狂する社会に、とてつもない怖さを感じる。
アメリカのみならず、日本にも一定の期待の声があるのがさらに恐ろしい。不法移民の強制送還等、大統領令の乱発でとりあえずは外科治療的に目に見えた変化をもたらし、功績をアピールしてくるのは間違いない。
ただその先の未来…人々の心の分断や置き去りにされる人権、ないがしろになる地球温暖化対策…。私にとってもあの国のことと傍観していられない。 胸苦しい。」
以上、同感だけど、個人的には政治は「長期的な視野」をもとにしながら「短期的な視野」を上手くミックスさせて展開することが好ましいと思っているが、トランプさんを見ているとどうも「短期的な視野の損得勘定」ばかりを優先させているように思えてならない。たとえば、国際社会における孤立がこれから有形無形の影響をどう及ぼしてくるか・・。
どうせ4年後には大統領の任期が切れるわけだけど、それから先の展開が見ものですね。
つまり「修正路線」になるのか、あるいは「継続発展路線」になるのか・・、政治家の評価は「棺を覆うて事定まる」、いわば「後世の史家」がどう判断するかにかかっているが、はたしてトランプさんのケースはどうなんだろう。
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つい先日のブログで紹介した、日経新聞の「私の履歴書」だが、主人公の「岡藤」氏(現「伊藤忠商事」会長)がいよいよ社長に就任し、マンネリ化した社風に大ナタを振るう佳境に入った。
この1か月ほど「断られてからがほんとうの仕事だ!」という商社マンの意気軒昂たる姿に煽られっぱなしだった。
世の中にはガッツに溢れた凄い人が居るもんです・・、自分のような迫力の無い人間なんて繊細な「趣味の道」に生きるのが精一杯だなあ~(笑)。
「私の履歴書」で、ふと思い出したのが指揮者の「リッカルド・ムーティ」氏で、もはや長老の域に入っていると言えるが、過去にこんなことを書いていましたよ。
☆ 指揮者「リッカルド・ムーティ」氏の「私の履歴書」
ムーティ氏の記事はなにしろクラシックに関することばかりなので、毎回興味深く読ませてもらっていたが、こういう箇所があった。
90歳になる音楽家のヴィットリオ・グイ氏が当時30歳のムーティに対して次のように述べた。
「なんて残念なんだ。人生の終わりが近づいている今になって、やっとどうやって指揮をするのか分かり始めるなんて・・」
ふと「江戸時代」の稀代の浮世絵師「葛飾北斎」(享年89歳)が臨終のときに「天がせめてあと5年の命を与えてくれたら本物の絵師になれたのに・・」を思い出した。
「芸術」の本質に肉迫するためにいかに時間がかかり、そして難しいことなのか・・、それを物語るエピソードだと思うが、実は我が「音楽&オーディオ」もそうなんです~。
「人生の幕がそろそろ終わりに近づこうとしているときに、ようやく満足できるサウンドが出るようになるなんて・・」、うれしさ半分、悲しさ半分といったところかな~(笑)。
いずれにしても、ようやく本命のシステムが固まってきたのでそろそろ「断捨離」に入らないと・・、「遺された時間は無限ではない」とわかっちゃいるけど思い切りがねえ~。
さしずめ、第一次候補に挙がるのは、
JBLの「175ドライバー」(小型ハチの巣ホーン付き)、「075ツィーター」(削り出しステンレスホーン付き)、「D123ユニット」(口径30cm:箱付き)
どなたかに有効活用して欲しいのは山々だが、いったいいつになることやら・・、ものすごい熱意にほだされると話は別ですけどね(笑)。
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先日のブログ「このシステムの音を聴いて感動できないとすれば、それはあなたの耳が悪いからです」は、ガチのオーディオ記事なので、さぞかし「評判の悪いことだろうて・・」と期待していなかったところ、予想外のクリ~ンヒット(アクセス)に唖然~。
どうも読者の嗜好の傾向がよく分からんなあ~(笑)、ま、結果良ければオーライといこう。
ここで、ふと「ユートピア」(「湊 かなえ」著)の一節を思いだした。
「何で多くの人から認められたいなんて思うんだろうな。他人の評価が欲しくて作品に向き合っているうちは、多くの人どころか自分自身ですら心底満足できるものが作れないってことに、どうして気が付かないんだろう」
なかなか含蓄のある言葉だと思うが、そうはいってもやはり読者あってのブログだからね・・(笑)。
それはさておき、冒頭の過去ブログで紹介した(オーディオ機器の)「黄金の組み合わせ」についていささか思うところがあります・・、というのもブログ主はかなりの「心配症」というか、用心深いタイプなんですよねえ。
どういうことかというと、日頃から命の次に大切にしているつもりのオーディオシステムだけど、所詮はモノなので寿命とか故障とかは宿命のように付きまとうもの。
で、そういうときの対処法も慌てないように日頃から頭の片隅に叩き込んでおきたい・・、つまり「スペア」を前もって準備しておくに越したことはないという思考の持ち主なので~す(笑)。
というわけで、具体論に入ろう。
<スピーカー>
レギュラーの「AXIOM80」(オリジナル:画像左)の代替品として、修繕期間のうちは「復刻版」(画像右)を使用すればいい。繊細さにおいてやや劣るけど、やはり「同じ穴の狢(むじな)」として十分我慢できるレベルにあるのは頼もしい。
<パワーアンプ>
レギュラーの「6A3シングル」(モノ×2台)の代替品候補は実はかなり恵まれている。
まずは「PP5/400シングル」、「WE300Bシングル」、「2A3シングル」、「6AR6シングル」(三極管接続)と枚挙に暇がないが、最近実験して見直したのが「171Aプッシュプル」だ。
さすがに「プッシュプル」だけあって、中低音域の量感が「シングル」に比べて分厚い印象を受ける。このアンプだと、サブウーファー(ウェストミンスター)はもう要らないんじゃないかな・・、そういう気がする。
ちなみに、昔、交流のあったオーディオ仲間が「71系真空管に限っては、シングルもプッシュプルも音の差がありません」と言ってたことを思い出す。
それに、真空管が全部で9本あってすべて点灯すると、冬場なので暖房の助けになる。つまり「暖房器具」としても使えるので、これこそ「一石二鳥」だね~(笑)。
<DAC>
現用は「エルガー プラス」(英国:dCS)で、音質の繊細さは近代の「D2R」(SMSL)に一歩譲るけど、たっぷりとした量感は確実に「一頭地を抜いて」いる。つまり「AXIOM80」独特の「線の細さ」を見事に補っていて、これこそ「黄金の組み合わせ」といえる~。
万一、故障したときは絶対に「即修理」だけど何せ「旧石器時代の産物」みたいなもので受け付けてくれる会社があるかなあ~。こればかりは唯一の不安要素だけど、これまで10年以上使ってきて故障は一度もないんだから取り越し苦労だよなあ~、と思うことにしている。
ほかに残るのは「プリアンプ」だけど、実力伯仲のスペア(3台)が目白押しなので、故障してもさして絶望の淵に沈むことはなかろう。
以上、スペアには不足していないのでどこかが故障しても、むしろ「ピンチはチャンス」になるかも・・、と前向き思考だけど、やはり故障しないのが一番だよなあ~(笑)。
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つい先日のブログ「脳を麻痺させて音楽を受け入れやすくする工夫」の中で、「音楽とウィスキー」の関係性に言及したところ、さっそく南スコットランド在住の「ウマさん」からメールが届きました。
タイトルは「アイラ島」
「ウィスキー大好きな僕は陰口を言われたことがあります…「あいつはウィスキー好きが昂じてスコットランド人を嫁に貰った」
スピリッツには「精神」と「蒸留酒」の意味があるので、このジョークは結構ウケますね。
このアイラ島にあるすべての蒸溜所を、やはりウィスキー好きの親友、日本フィルのソロ・コンサートマスター木野雅之と訪れたことがあります。彼はどの蒸溜所でもヴァイオリンを演奏しました。
彼の最愛のウィスキー「ラガブリン」の海辺で演奏したバッハ「シャコンヌ」は見事でした。蒸溜所で働いている方々が、聞こえて来るヴァイオリンの音色に惹かれて次々と外に出て来ました。蒸溜所所長が感激して、蒸溜所限定の特別な「ラガブリン」をプレゼントしてくれたのはいい想い出です。
「素敵なお話、ありがとうございました。ラガヴリン・・、量販店ではまず見かけませんけど一度飲んでみたいものですね(笑)。」
すると、すぐに往信が・・。
ハ~イ・・、こうまでご親切に誘導していただくと乗らざるを得ませんね~(笑)。
田舎の量販店では絶対といっていいほど見当たらないブランドなのでネットで探したところ、すぐに見つかった。しかも「送料無料」ときている。
かなり高価だけどお金を持ったまま息を引き取るわけでもないしねえ~、たまにはいっか(笑)。
注文すると、見事に2日後の一昨日(23日)に到着。
独特の風味と香りがする・・、極めて個性的なテイストといっていい。
ウマさんは「海藻の薫り」と仰ったが、自分には古い木材の匂いが染みついた樽の独特の匂いがしてくる感じ・・、しかし、これは慣れてくると「病み付き」になりそうな風味だよなあ~(笑)。
なぜ高名なウィスキーのお値段があんなに高いのか・・、やっとその理由の一端がわかった感じ、「このウィスキーじゃないと絶対に出せない風味があるから」。
音楽では「一小節」聴いただけですぐに「モーツァルト」の作品だとわかるし、オーディオも音を聴いただけで想像できるスピーカーがあるし、人間だってそう・・、「この人ならでは」の個性あふれるタイプになりたいものです。平々凡々としたブログ主に偉そうなことを言う資格は無いけどね(笑)。
それはさておき、チビリチビリやりながら、「絶対個性」の持ち主のスピーカー「AXIOM80」で、モーツァルトの「ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ」(K261:You Tube)を聴いていると、まさに「バラ色のパラダイス」が出現しましたぞ!
ちょっと大袈裟だけど、このまま息が止まってもいいくらい(笑)。
ウマさん、素敵な「ウィスキー」をご教示いただいてどうもありがとうございました。