年末に大阪から帰省する途中の娘が、危うく降りる駅を乗り過ごすところだったという。車中で読んでいた本があまりに面白くてつい引き込まれてしまい、我を忘れたらしい。
その面白い本の題名は「模倣犯」(宮部みゆき)。2001年の作品で平成17年に新潮文庫で5冊に分かれて出版されたもので、これまでもちらっと噂には聞いていたがあまりの分厚さに面倒くささが先にたち敬遠していたものだが、身近でそう聞かされると食指が動く。
”宮部みゆきの本はこれだけ読んでおけばいいよ”と娘から父親へリレーされた文庫本(第一分冊)の帯封の裏にはこう書かれてある。
「模倣犯」が獲得した主なタイトル
☆ 「このミステリーがすごい!」2002年版NO.1
☆ 「週間文春ミステリーベスト10」2001年第1位
☆ 「毎日出版文化賞特別賞」
☆ 「芸術選奨文部科学大臣賞文学部門」受賞
「このミス」と年末恒例の「文春ミス」ともに第1位とは掛け値なしにすごい!こうなると大のミステリーファンとして見過ごすわけにはいかない。
宮部みゆきの本は1冊だけ、ずっと以前に「蒲生邸事件」(97年日本SF大賞)を読んだことがある。筋の展開には感心したが素人っぽい会話文にいまいちの感想を持ったが、この「模倣犯」は果たしてどうだろうか。
大晦日に外泊許可をもらって母を病院から連れ帰るなど年末年始はドタバタして、ようやく2日から読書開始。
ウーム、なかなか面白い!密室ものなどの謎解きのトリックではなくて、犯罪者、被害者の心理を実に丹念に描いているいわば社会派サスペンスとでもいうべき小説で、一人娘を誘拐された家族の無念と心情がこれでもかというように抉ってある。文章も不自然さが無い。
ただ、登場人物がやたらと多いのに閉口する。巻頭に登場人物の紹介コーナーが無いので誰が誰だかときどき分からなくなる。この点、読者サービスが行き届いていない。
「武上というのは誰だっけ」「それは刑事さんよ、分からないときはいつでも聞いて」と並んで読んでいる娘にときどき教えてもらいながらまたたくまに一番分厚い第一分冊を読破。
余勢をかって第二分冊もバタバタと読み上げたところ娘はまだ第三分冊にかかったばかりで1日半で追いついてしまった。内容の理解はともかく、読むスピードにかけては人後におちない。
結局、第三分冊の奪い合いになったが、腕力ではこちらが有利だが「お金を出して買ったのはワタシよ」と頑強に抵抗されたので”それもそうだ”としばし待つことになった。
暮れの忙しい31日に「坂の上の雲」(司馬遼太郎:文庫本八分冊)を娘が購入するのに運転手として付き合ったので、そっちを先に読めばいいじゃないかと恩をきせてみたが、どうしても読みかけの推理小説を中途で放り出すにはいかないらしい。
結局、娘の読了待ちでのペース・ダウンとなって、4日までに第三分冊までを読み終えた。第二、三分冊は犯人側の心理状態と行動が描かれているがややしつこさと冗長さを感じて第一分冊ほどには軽快さがないし引き込まれない。刑事がいっさい登場してこないのも面白くない。(娘も同意見で二と三は一冊にまとめてもよいくらいと言う。)
果たして、第四、五分冊でどのくらい面白さを挽回できるのだろうか。
新年早々こういう調子だから、どうやら今年も相も変わらず読書と音楽と釣りで明け暮れそうな予感がする。
なお、娘が本とともに持ち帰ったCD盤があって5296(こぶくろ)という題名のアルバムで2007年のレコード大賞受賞曲「蕾」が収録されている。レコード大賞なんてどうでもいいが今頃どういう曲が評価を得て受賞しているのだろうという興味はある。
早速聴いてみたがこれがさっぱり。あくまでも個人的な感想だが学芸会に毛が生えたような歌唱力とメロディで、とても鑑賞にたえる代物ではない。いくら音楽は好き好きといってもこれはちょっと・・・・・・。しかし、このCDものすごく売れているみたいだから自分が時代に遅れているのかもしれない。