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「大丈夫ではない、『大丈夫』の使い方」  

2016年04月10日 | コンサルティング

「部下が『大丈夫です』と繰り返していたので上司は安心していたところ、実は全然『大丈夫』ではなくて、品質問題になってしまったんです」

これは、先週新入社員研修を担当させていただいたある製造業の人事担当者の方々から伺った話です。

製造部門の上司が部下に指示した仕事の進捗状況を何度か尋ねたとき、その都度「大丈夫です」と返答したため、予定通りに進行していると安心していたところ、実際には完成品には不具合があり、あとで大きな問題になってしまったとのことでした。

上司としては、これまで指示してきたものより難しい仕事であったため、折々のタイミングで「予定通りに進んでいるか、またフォローの必要があるか」を尋ねているつもりでした。ところが、部下としては上司から何度も「大丈夫か」と確認されることが少々うっとうしく感じていたのか、「確認はもう結構です」というお断りの意味合いで「大丈夫」を使っていたようです。

上司から指示された仕事が上手く進んでいないのであれば、その時点でSOSを出すべきだったはずです。本人としては上手く進んでいると思ったのか、もしくは度々進捗状況を尋ねる上司を少々うっとうしく思ったのかどうかはわかりませんが、「大丈夫です」を繰り返しました。上司としては上手くいっているものと判断してしまった結果、品質に問題が生じてしまい、全く「大丈夫」ではない事態に発展しまったとのことでした。

最近、若い人を中心にこの「大丈夫」の言葉の意味が、本来の意味とは異なる使われ方をしていると感じますが、改めて「大丈夫」の意味を広辞苑で調べてみると、(1)立派な男子、(2)しっかりしているさま、(3)間違いなく、たしかに とあります。

しかし、現在では先述のように「結構です」や、他者からの誘いなどを遠回しに拒否する語として「そんな気遣いは必要ない」という意味にも使われているようですが、これは本来の意味からは不適切な使い方です。

冒頭の話を伺って初めて、最近の若い人が使う「大丈夫」には本来の意味とは異なる使い方があることをあらためて理解しました。これまで研修の途中で「質問はありますか?」と問いかけて「大丈夫です」と返答があると、研修内容を十分に理解してもらえたと思い次の項目に進めていたのですが、実のところこの「大丈夫」は「もう確認しないでください」という意味だったのかもしれません。

明日からの新入社員研修でも、「大丈夫」の返事には「本当に大丈夫ですか?」と再度確認をしたほうがいいのではと考えています。

そんなことを考えながら、数時間前に近所のスーパーでレジ待ちの列に並んでいたところ、目の前で若い店員と若い買い物客との間で「大丈夫」をめぐってやりとりがなされているのをリアルタイムに目撃しました。

店員:「箸は大丈夫ですか?」、

買い物客:「大丈夫です」

思わず「もしもし、その『大丈夫』の使い方、間違っていますよ」と割って入りたくなりました。

(人材育成社)