中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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製造業で働く文系社員の皆さんへ

2017年10月01日 | コンサルティング

「上場企業に就職できたら一生安泰。少なくとも食いっぱぐれることはないだろう。」これは某私立大学文系学部4年生A君の、就職活動を始めるにあたっての正直な気持ちでした。同じ学部の友人たちの多くは金融機関や流通業への就職を希望していましたが、彼は製造業を第一志望としていました。それは次のようの彼なりの(幼稚な)打算によるものでしそた。

(1)大手銀行や有名デパート、商社などは文系を大量採用するが、結局は東大、一橋、早慶の成績上位の連中が優遇される。(2)製造業は文系を多く採らないが、逆に入社後の出世競争は厳しくないだろう。(3)製造業の年間労働時間は金融や流通に比べて少ない。休みも工場の操業に合わせてしっかり取れる。

彼は会社訪問の解禁日に、誰もが名前を知っている大手企業ばかりの家電や重電業界は避け、ある地味なメーカーに足を運びました。そして、その会社(業界トップの一部上場企業)から内定をもらいました。

しかし(言うまでもないことですが)、入社後A君の目論見は外れました。とにかく残業が多く、仕事の内容もかなりハードでした。その後、A君が上司や先輩に叱られながらも、何年もクビにならずに働き続けることができたのは、その会社が「終身雇用」を社是としていたからに他なりません。

製造業はモノ作りの現場が中心にあります。モノを作るためには多額の設備投資と知識やノウハウの蓄積が必要です。また、一度製品が市場に出れば、その後何十年も補修用の部品と人員も確保しなければなりません。製造業の「時間感覚」は他の業種に比べて非常に長いのです。ですから、終身雇用は製造業向きの制度と言えるでしょう。

ところが、製造業の「時間感覚」は21世紀に入ってから急速に短くなってきました。A君の就職した会社もとうに終身雇用の看板を下ろしました。そして、日本を代表するような大手電機メーカーも倒産の危機にさらされ、社員の多くが転職して行きました。

もちろん、転職できるのは技術を身に付けているエンジニアがほとんどです。こうなるとメーカーの文系社員は非常に弱い立場になります。技術があるわけでもなく、他業種の知識やノウハウもそれほどありません。いったん会社が傾きはじめると、転職したくてもそう簡単にはいきません。

金融や流通など文系出身者の割合が非常に高い業界では、転職活動は比較的楽です。こうした業界での知識やスキルは、製造業に比べればポータビリティ(会社が変わっても使える性質)が高いからです。

製造業に勤めている文系社員の皆さん、ご自身のキャリアをしっかりと見据えた戦略を練ってください。「使える」資格を取ったり社会人大学院に行くなりして、少しでも付加価値を付けてください。

今からでも打てる手は何でも打ちましょう! A君こと私からの真摯なメッセージです。

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