中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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OJTは全社員の責務

2018年04月01日 | コンサルティング

入社4年目のA君は3月の最終週のある日、上司のB課長に呼び出されました。(なんかイヤな予感がするな・・・)A君は緊張しながら課長が待つ会議室に入って行きました。

やあA君、お疲れ様!君をはじめみんなが頑張ってくれたおかげで、うちの営業1課は受注目標をクリアできたよ。ご苦労様!」B課長はにこやかに言いました。そして「ところでA君に頼みたいことがあるんだ」と続けました。(そら来た!)とA君は身構えました。

「再来週、うちの課に新人が1人配属されるんだ。ようやく君にも後輩ができるってわけだ。」

(え!それはうれしいな。今まで俺が一番下っ端だったからなあ・・・)A君は一瞬ほっとしました。その後の課長の言葉を聞くまでは。

「で、君に新人のOJT担当者をやってほしいんだ。これが新人のプロフィールと人事部が作ったOJTマニュアルだ。よく読んでおいてくれ。トレーニング期間はファーストクォーターの終わり、6月末までだ。久しぶりの新人だからしっかり育ててくれよ。じゃ、頼んだよ!」そういうと課長はさっさと部屋を出ていきました。

(ああ、面倒くさいことになった・・・)会議室に1人残ったA君がぼやいていると、同じ課の先輩Cさんが入ってきました。

Cさんは「おまえOJT担当になったんだってな。余計な仕事を押し付けられて、かわいそう。ついてないな〜」とからかうのでした。

ご存知のようにOJT(On the Job Training)とは、上司や先輩が、実際の仕事を通じて部下や新入社員を指導し、仕事に必要な知識や技術などを教える育成方法です。

OJTの方法は会社によって異なります。人事部が具体的な育成方法を記したガイドラインを示している会社もあれば、「現場に丸投げ」という会社もあります。

「丸投げ」の場合、OJTトレーナーに指名された社員が、完全に自己流で仕事を教えることになります。その多くは「おれの仕事の様子を横で見ていろ」、「簡単な仕事をやるからやってみろ」、「わからなければなんでも俺に聞け」という指導を行うことになります。

しかし、これはOJTではありません。

OJTとは、仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを合目的・計画的・継続的に指導し、修得させることで社員を育成する活動です。特に「計画的」であることは重要な点です。計画的であるということは、目指すゴールとそこに至るスケジュールが明確でなければなりません。なりゆき指導ではいけないのです。

最近は、新卒を採用するのがなかなか難しくなっています。ようやく採用できたかと思えば、数年と経たずに辞めてしまう。大企業ですらそんな厳しい状況に置かれています。

それなのに先ほどのA君、いや彼だけではなくB課長や先輩のCさんもそうですが、「OJTは厄介で何のメリットもない余計な仕事」という認識が全社にはびこっているとしたら大変にまずいことです。

なにも新人を甘やかせと言っているわけではありません。「計画的に」育てるために必要なことは何かを職場のメンバーはもちろん、全社員が理解し実行することがOJTです。

つまりOJTとは担当者1人の仕事ではなく、全社員が「よってたかって」新人を育てる活動なのです。

さて、4月になりました。社長以下、全社員がOJT担当者だということ肝に銘じておきましょう!

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