前回のブログ(4月18日)で講師を選ぶ際の評価基準は、「楽しい」ではなく「役に立つ」であるべきということをお伝えしました。では「実務の役に立つ研修」とはどのようなものでしょうか。そもそも「役に立つ」とは一体何を意味しているのでしょう。
仕事イコール日常的に行われる実務と考えるならば、「役に立つ」ことを定義するのは比較的容易です。
たとえば、品質管理を担当している社員にとって、統計分析の知識は役に立ちます。ソフトウェア技術者ならプログラミング言語の習得、経理部員ならば簿記・会計の知識、海外営業担当なら英会話や英文契約書の知識など、必要とされる知識やスキルははっきりしています。それらを身につけることが目的ならば、役に立つ研修の定義で悩むことはありません。
しかし、仕事をより広い意味でとらえるならば、「役に立つ」を定義するのは容易ではありません。
たとえば、管理職研修(課長職などに昇格した人たちが対象)では、より幅広い知識やスキルを習得することになります。それは受講者の職種に関係なく、組織を管理・運営する上で必要なものです。
管理職研修では、自らが率いるチームの業績を上げるため具体的にどう行動するかを徹底的に学びます。たとえば部下とのコミュニケーションの取り方では、報連相(報告・連絡・相談)のさせ方や指示・命令の下し方はもとより、適切なほめ方や叱り方も演習を通じて身につけます。また、チームの目標を定め、現状とのギャップを明らかにし、どうやってそれを埋めていくのかも学びます。抽象的な表現ですが「組織の活かし方」を学ぶ研修です。
研修内容はさほどおもしろいとは言えませんし、日々の実務に直接役に立つものでもありません。では、なぜ多くの会社がそのような研修を行うのでしょう。
答えはずばり「役に立つ」からです。
「定義するのは難しいと言っておきながら、役に立つと断定するのは一体どういうこと?」と思われた方も多いでしょう。
社員1人1人の知識・スキルレベルが上がったとしても、皆がタコつぼに入り込むようにお互いを無視して仕事を進めていたら職場は、いや、会社はいつか崩壊してしまいます。ここであらためて、仕事を「(会社の利益を確保するために)社員同士が協力し合って進める業務」とするならば、研修で学ぶ「組織の活かし方」はとても役に立つことがわかります。
では、組織を活かすために必要な指導とはどのような内容でしょうか。研修担当者の皆様には、それをご自身でじっくり考えていただきたいと思います。そして、研修講師を選ぶときには必ず事前に面談し、自分の考えとズレが無いかを確認してください。
それが「役に立つ研修」を実現する唯一の方法です。