中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,178話 「失敗を許すのか? 許さないのか?」

2023年08月09日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「責任をとって辞めます」

これは、日本の組織において仕事などで大きな失敗をしてしまった人が、自ら職を辞することで責任を取ろうとする際によく使われる言葉です。テレビドラマの女性外科医のように「私、失敗しないので」と皆が言えればいいのですが、現実には必ず失敗は起こるものです。

ところで、企業をはじめとする日本の組織は己が招いた失敗については何らかの「形」にして責任をとらざるを得ない、つまりは「失敗を許さない」という企業風土が強くあるように思えます。実際、経済協力開発機構(OECD)が各国の15歳を対象にした2018年の調査でも、日本は「失敗への恐れを感じる生徒の割合が77%と、加盟国中で最高とのことです。(日本経済新聞2023年8月7日)

このような「失敗を許さない・認めない」、「個人が責任をとる・職を辞する」といった、ある種の文化のようなものになっていると思えるものは、組織にとどまらず国民性とさえ言えるのかもしれませんが、一体いつ頃から形作られてきたものなのでしょうか。これは定かではないものの、相当昔からのもののような気もします。たとえば、江戸時代に武士が切腹したというのも同じような責任の取り方だったのではないでしょうか。藩内で起こった不祥事に対して、ときには主君を守るために、自らが責任を取って切腹するという道を選んだわけです。

翻って、現在の組織は失敗をした人に対してもちろん切腹こそさせないものの、限られた人に責任を負わせる形で事を締めくくることが往々にしてあるように思います。つまりは、今も脈々とこうした文化が受け継がれているのかもしれません。しかし、このような責任の取り方は結果として失敗を次に活かすことをせずに、闇に葬っているだけです。

一方で、数は少ないのかもしれませんが、組織を揺るがすほどの大きな失敗をした人を許したことによって、その後それらの人が大活躍をしているという組織もあります。

そのような企業を取り上げている番組が、最近NHKで放送されている「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」です。番組では、大失敗した商品や巨大プロジェクトなどを「黒歴史」として取り上げ、講談師の神田伯山が当時のエピソードを講談調でおもしろおかしく紹介しています。

これまで放送された中で私が特に印象に残っているのが、生活日用品メーカー「エステー」の家電開発秘話を取り上げた回です。社運をかけて開発した商品が結局は全く売れず、社の「黒歴史」となったのですが、しかしそのときの開発技術者は現在部長に、そのときに営業力を発揮できなかった営業パーソンは今年6月に、何と社長に就任しているのです。

当時、会社には大きな損失・損害を与えたわけですが、失敗の責任を追及してそこで辞職させていたら、現在のこのような姿はなかったわけです。本人の努力はもちろんのこと、今後その失敗以上の成果を得ることに期待して、リカバリーのチャンスを与えた会社(経営者)の「器」の大きさが見えるような気がしています。

失敗はしない方がいいのというのはもちろんですが、失敗することによってはじめて見えてくる世界や、新たな知恵が生まれるということもあると思います。失敗を許し、教訓を次に活かすことができる組織になれるかどうかが、組織としての「器」というものなのかもしれません。

競争がますます厳しくなる今、失敗しないための取り組みはもちろんですが、成長という観点で「大きな器の組織」にするためにはどうすればよいのかということを考えていく必要もあるのではないでしょうか。

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