「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「Aコーチが良いから来ています」
これは私が通っているスイミングスクールの若い仲間が語った言葉です。スクールには老若男女様々なメンバーがいるのですが、長期間通っている人が多く各々の技量の向上に向けて毎週練習に励んでいます。その中の一人が1年前に練馬区に引越しをしたのですが、引き続き品川区にあるこのスポーツクラブまで毎週遠路電車を乗り継いでやってきていて、その彼が語ったのが冒頭の言葉なのです。
彼の言うとおり、我々のAコーチはなかなかに魅力的な人です。具体的には、まず説明がとてもわかりやすく、理論に基づき一挙手一投足の動きを説明してくれるため、我々も十分に納得した上でそれを実践することができるのです。Aコーチは50代だそうですが、現在でも定期的にレースに出て良い成績を挙げていて、経験に裏打ちされた説明には説得力があります。
また、Aコーチはメンバーに一律にコメントをするとともに、個々へのフィードバックがとても豊富です。コーチのコメントに基づき改善できた泳ぎができると、その瞬間に水中で親指を立てて「グッド」を示してくれることもあり、こちらも正しく改善できたことが即座に理解できるのです。そして、25m泳ぎ終えるたびに、「○○さん ここが良くなったですね。あとはこの点をこのようにすると、さらに良いですよ」と言うなど、とても褒め上手でもあります。
さらに一貫して明るく、「必ずできる」といった雰囲気で接してくれるため、たとえ難しい課題を与えられてもこちらも前向きな気持ちなって、俄然モチベーションが上がるのです。現在はメンバー全員に「年末までにバタフライ50m完泳」という目標が与えられていて、毎週それに向けて努力しているのですが、皆、達成できそうな気持になってきています。
このようなAコーチの指導を毎週受けるたびに、私も「教えることとはこのようなことか」と改めて実感しています。知識やスキルを伝えることに加え、やる気にさせることがいかに大切かを改めて感じています。
これらは様々な組織における上司から部下へ、先輩から後輩に仕事を教える際にヒントとなるところが多いと感じます。同時に私が日々担当している研修でも、「Aコーチのようにできているだろうか」と自身で振り返るきっかけにもなっているのです。
一方で、私が担当している研修や職場での指導と、Aコーチをはじめとするスポーツ競技などでの指導では、条件が大きく異なる点があると考えています。
それは、教えられる側のモチベーションの高低です。スポーツなどの監督やコーチが指導する選手は、そもそもその種目に対するやる気が高い人達です。サッカーやラグビーなどの球技スポーツも、駅伝をはじめとする陸上競技であっても、「レギュラーになりたい、試合に出たい」という強い目標があると思います。同じ意味で私が通うスイミングスクールの受講者の多くも、「もっと楽にもっと長く泳げるようになりたい」という前向きな気持ちを持っていて、そもそもモチベーション高い人たちです。
そのように考えると、Aコーチの指導が職場や研修においてすべてが活用できるというものではないとは思います。しかし彼の行っていることは教える対象がどういう人であっても、教えたり指導したりする側にとっての大切なポイントをしっかりと押さえていると思いますので、私も研修講師としてAコーチのようでありたいと考えています。
「教える」ことは実に奥が深く、やり方も一つではないでしょうが、それ故に追求し続けるべき課題であると考えています。