「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。
「入社後は営業を希望していたのに、経理に配属されてしまいました。当初は嫌で仕方がなかったんです。営業に配属された同期が立派に見えてね、焦りましたよ。でも、今では経理に配属されたことはとても良かったと思っているんです。経理に配属されたことで、若いときから会社全体の数字が理解できるようになりましたから、とても役に立っていますよ。」
これは先日、ある40代のビジネスパーソンから伺った言葉です。入社後に本人の希望とは異なる部署に配属されたときのことを振り返って、話してくれました。
これに関連して先日、内定を得た学生が入社後に希望している部署へ配属してもらうために、配属活動(通称「ハイカツ」)を始める例があるとの報道がありました。(8/2 日経新聞)
企業の人事部に希望部署を伝える手段として、希望職種の養成のセミナーに20万円の費用をかけて参加したり、人を紹介してもらったり、インターンを始めたりする人などがいるそうです。
企業の側も人材の流出を防ぐために、できる限り新入社員(以下新人)の希望の沿うようにしたり、希望に添えない場合は配属理由を具体的に説明したりするそうです。
この結果、入社1~3年目の社会人の約7割が職種・配属が希望通りになったとのことです。
もちろん組織として新人の希望をかなえることができたり、配属理由を丁寧に説明したりすることはとても大切なことです。
一方で、企業にはそれぞれのキャリアパスがあります。キャリアパスとは「新人を効率的に育てるためには、どんなキャリアを踏んでもらうのが良いか」という観点をもとにつくられたキャリアのルートのことです。
企業の側では新人の適性を踏まえた上で、長いスパンで考え決めているのですが、それぞれの希望を優先することによって、全体のバランスやその後の育成にマイナスの影響が出やしないかと心配になります。
実際に弊社の顧客のあるサービス業では、現場を知るという意味で、新人は必ず一定期間顧客と接する窓口に配属することをルールにしているところもあるのですが、希望を優先した結果、現場のことを知らずにその後のキャリアを積んでしまう例も出てくるかもしれません。
もう一つ気になるのは、まだ働いたことのない学生が企業の職種のことをどれくらいきちんと理解して希望しているのだろうかということです。
もちろん、就職活動の中で様々な情報を得た上で希望をしているとは思いますが、実際に希望の部署に配属され仕事をした結果、イメージしていたものとは違っていたということもあるでしょう。また、反対に、冒頭の例のように希望とは異なる部署に配属されたことによって、結果として将来にわたって役に立つような経験を得られることも少なくないはずです。
ハイカツを始めた学生の皆さんには、今後40年以上の長いビジネス人生を歩むわけですからスタート時の配属先に一喜一憂せずに、そこで何を学ぶのか、まずはしっかり目の前のことに取り組むことが大切ですとお伝えしたいです。