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「悲観」とは、「物事がうまくいかず、悲しんで失望すること。または落胆すること」と辞書に書かれています。楽観の反対の意味である悲観は、一般的にはマイナスの状態をさして使用することが多い言葉です。
「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもない」、「こと仕事に関していえば、そもそも自分の思い通りになることなんて、ほとんどありません」
これは「絶対悲観主義」(楠木健2022 講談社+α新書)の中での著者の言葉です。
「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもないという前提で仕事をする」こと、「世の中は甘くない、・・・うまくいくことなんてひとつもない」これが楠木氏が言うところの「絶対悲観主義」です。
絶対悲観主義を前提に仕事をすれば、たとえば会社の内外を問わず納期が過ぎてしまっているのにもかかわらず何の音沙汰がないことに慌てたり、イライラしたりするなどのマイナスの感情を持つことが減るのかもしれません。もともと上手くいかないことを前提に、予め先手を打ったり予防線を張っておいたりするなどの備えをしておけば、仮にそれがうまくいかなかったときでも「やっぱりそうなったか!予期していたとおりだ。それなら、こういう手を打とう」というように、さほどがっかりもせずに、粛々と事を運べばいいというふうになるのかもしれません。
私たちは物事を楽観的に考え、「きっと大丈夫だろう」「きっとうまくいくだろう」とさしたる根拠もなしに思い込み、きちんとした準備もすることなく物事を始めてしまい、その結果痛い目を見るということが少なくない。そうしたことから、この「絶対悲観主義」の考え方が出てきたようにも思えます。
私自身、これまで仕事やプラーベートの上で思いどおりにいかず、慌てたりいらいらしたりすることは数えきれないくらいあったわけですが、はじめから自分の思い通りにうまくいくことなんてないのだと思っていれば、さぞかし気持ちは楽だったろうなと思います。
同時に、私はこの「絶対悲観主義」は「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもない」から、物事をいい加減にやってもいいと言っているのではなく、「自分自身はやるべきことをきちんとやったうえで、それ以上のもの(他人や環境など)には過度の期待をしないこと」と言っているようにも理解をしました。
他者や周囲の環境は、なかなか自分の思い通りにコントロールすることはできませんが、逆に言えばそれ以外の自分でやれることはきちんと準備をしておく。まさに「人事を尽くして天命を待つ」ことの大切さにも触れているように感じられたのです。
「思い通りにいかないことを前提条件にすることで、逆に自分に対して楽に生きることができる」との著者の言葉、何十年も仕事をしてきたからこそ、改めて染み入ります。良い意味で他者に期待しない、その上で自身としてどう準備するのかが大切なのだと思います。