中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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発注側と請負側の「フェアトレード」

2016年11月23日 | コンサルティング

 受講者 「請負の仕事が75%終了したところで、その仕事がキャンセルになってしまったんです。それが2度もあったので、泣いてしまいそうです」

私    「えっ、3/4も終わったところでキャンセルですか? そういう場合、お客様(発注者)からキャンセル料はとれないのですか?」

受講者 「とれないんだそうです。それが一度ならず二度も続けてあったので、辛いです・・・」

これは、先日担当させていただいた、ある研修でお会いした受講者から伺ったお話しです。

この会社のある部署では、発注者からの依頼によって仕事を開始するのですが、実際には仕事を受けてから内容変更が度々生じ、何度もやり直しになったり、仕事そのものが中止になったりすることもよくあるのだそうです。

このような事態であれば、本来はキャンセル料などの料金を請求できるはずではないのかと思いますし、そもそも仕事に入る前に契約で詳細を詰めておくべきものだと思うのですが、この業界のルールなのか、それがなかなかかなわないとのことです。

確かに、発注側と請負側の力関係に差があることは、業種業態に限らず数多く見受けられることです。

先日も、テレビでコンビニエンスストアの本部とフランチャイズ契約を結んだ店舗の経営者が、契約を更新してもらえるのかどうかが直前まで不透明で困っているとのことで、今後明らかにしてほしいとの要望を出すという番組を報道していました。この番組を見た際にも、本部と加盟店の力関係を強く感じました。

公平な貿易を目指す「フェアトレード」という言葉があります。フェアトレードは、コーヒーやカカオを始めとして開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のしくみのことを言います。

フェアトレードでは、生産者が品質の良いものを作り続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準が保証され持続可能な取引のサイクルを作っていくことが重要であるとされています。改めて、最近これと同じように発注側と請負側の間にも「フェアトレード」の考え方が必要なのではないかと思っています。

冒頭のお話しのように、請負側に一方的に負担を強いることで、発注側ばかりが潤うような仕事の仕組みにはやはり無理があり、こうした関係はいつまでも続けられるものではないでしょう。

貿易にフェアトレードの考え方があるように、仕事においても発注側と請負側の関係に一定の公平性を担保できる仕組みが必要なのではないかと強く感じます。

最近、長時間労働の問題により、午後10時に一斉消灯を始めた会社のことが話題になりました。この会社の労働環境が改善されることはもちろん良いことなのですが、同時にそのしわ寄せが下請けの会社に行かなければいいけれど、と心配になってしまいます。

日本の発注側と請負側の双方が良い関係を築け、互いに持続的に成長していける間柄になるためにも、このフェアトレードの考えが重要だと思います。

(人材育成社)