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「モーターサイクル・ダイアリーズ」

 NHK・BShiで放送された「モーターサイクル・ダイアリーズ」を録画して見た。若き日のゲバラ(23才)が友人と二人バイクに乗って南米大陸を縦断したときの旅行記をもとに映画化したものだが、「チェ 28歳の革命」を見たばかりの私としては、医学生・エルネスト・ゲバラが革命家チェ・ゲバラへと変貌するきっかけを与えた旅をドキュメント風に見られたことは、大変意義深いことだった。どうしてゲバラが民衆のためにあれほどまで過酷な闘争を繰り広げたのか、彼を突き動かした衝動の源となった旅を少しばかり追体験できたように思う。
 この映画のストーリーは・・、

 23歳の裕福な医学生エルネストは親友アルベルトとともにおんぼろバイクに乗って南米大陸探検の未知への旅に出る。それは、好奇心のままに10,000キロを走破する無鉄砲な計画だった。アンデス山脈を抜け、チリの海岸線に沿って進み、アカタマ砂漠を通ってペルーのアマゾン上流へと。
 旅の途中には、彼らにとって未知の姿のラテン・アメリカとの出会いが待っていた。政治的信念を持ったがために土地を奪われた夫婦との出会い。インカ帝国の栄光と現代のまとまりのない都市風景とのコントラスト。隔離医療施設に閉じ込められた人々とのふれあい。ついにベネズエラに着いた時、ふたりが旅した距離はキロ単位でははかれないまでになっていた。ラテン・アメリカ深部への旅は彼らの生涯の最初の揺らぎ、生涯変わらぬ情熱と原動力となる。
 運命の軌跡、自我の確立、一個人がアイデンティティとこの世界における居場所を見つける旅、それはまた、私たちにラテン・アメリカのアイデンティティの軌跡をも見せてくれる。
 
 などとコンパクトに要約された文を引用してみると、なるほどそうだったのか、と思い返すことも多いが、実際に見ている間には、何もそんな気宇壮大さは感じられず、若い二人が悪戦苦闘しながらも少しずつ成長していく様を淡々と描いている静かな映画だと思った。ただ、日を重ねる毎に彼らの人間的な広がりが増していくのがじわりと感じられて、心の奥底に少しずつ感動が積み重なっていく、そんな深い味わいのある映画だった。
 
  

 この映画の中の医学生エルネストと、武力革命家・ゲバラとの距離はまだかなりあるように思う。旅の途中で使い物にならなくなったバイクを捨てて、徒歩やヒッチハイクで旅を続けるようになってからは、土地の人々との交流も多くなり、彼らの厳しい生活状況を肌身で知ることになる。旅の果てにたどり着いたハンセン病患者の治療施設で献身的に働く彼の姿は胸を打つ。他人の苦しみや悲しみを己の身に起こることとして感じ取れるからこそ、そうした親身な医療行為もできるのであろう。それには彼自身、喘息の発作に苦しむという背景があるのだろうが、それだけではなく、人を思いやる心を彼が持っているからだろう。
 旅が終わり、アルベルトに別れを告げる時に、ゲバラは「この旅で自分の中に生じたものが何であるかを突き止めなければならない」と言うが、それを検証し終えた結果が、キューバ革命への参加であり、「祖国か、死か!」という激烈なアジテーションだったのだろうか。だが、何故そこまで先鋭化していったのか、安穏な日常を送っている私にはイマイチ分からない。分からないのが幸せな証拠かもしれないが、分からなければいけないような気もする。
 
 私は近々、「チェ39歳 別れの手紙」も見に行く予定だが、この「モーターサイクル・ダイアリーズ」を見てよかったと思う。この旅の体験があったからこそ、革命家チェ・ゲバラが生まれたのだろうし、彼の行動を支える原動力の核が何であったかが朧げながらも分かったような気がするから。だが、ゲバラの映画を間をあまりおかずに続けて見たことによって、一人の人間としてのゲバラにかなりの魅力を感じるようになった私が、ゲバラが銃殺される場面を正視することができるだろうか?それとも、己を射殺しようとする兵士に向かって「ちゃんと狙って撃て」と言ったといわれる彼の最期は映されていないのだろうか・・。
 
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