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映画 「探偵物語」

 日曜日、「BS11デジタル」というチャンネルで「探偵物語」を見た。妻の部屋にある新しいTVは今まで知らなかったチャンネルがいくつか見えるようになっていて、このBS11もたまたまチャンネルを変えていたら、昔懐かしい「探偵物語」の一場面が流れていたので見始めただけのことで、まったくその存在を知らなかった。有料のチャンネルでもなさそうだし、どんな番組を放送しているのかよく分からなかったが、まあ、見られりゃ何でもいいわけで、途中からであったが、久しぶりに最後まで「探偵物語」を見た。
 「探偵物語」と言えば、松田優作主演のTVドラマが最初に頭に浮かんでくる私だが、薬師丸ひろ子の映画「探偵物語」にも松田優作は探偵役で出ている。この映画のDVDはもちろん持っているが、TVで見る時の方が緊張感があっていい。DVDだと好きなところで停止させることができ、自分のペースで見られるから便利ではあるが、そこに油断が生じて見る者に緊張感がなくなってしまう。やはり映画は劇場で見ることを前提に作ってあるものだから、始まったら最後まで一気に見るようにしなければならないだろう。
 などと立派なことを考えながら見ていた私だが、今年は松田優作が亡くなって20年、節目の年だ。そんな時にこの「探偵物語」をTVで放送しているのを見つけるなんて、さすがに私との縁は深い・・。おっ、そう言えば11月に松田優作を取り上げた映画が公開されると、少し前に映画館にチラシがおいてあった。たしか・・、「SOUL RED 松田優作」という題名のドキュメンタリー映画・・。私の中では、何をおいても見に行かねばならないという思いと、松田優作は今でも私の心で生きているからわざわざそんなもの見なくても、という2つの思いが交錯しているが、やはり公開日が近づけばいてもたってもいられなくなるような気がする。
 松田優作が40才で亡くなったとき私は31歳だった。それなのにいつの間にか彼の享年を過ぎ、10年以上も長く生きてきてしまった。確かに40年という生涯はあまりにも短かい。だが、彼の鮮烈な生き様は今でも多くの者を惹きつけてやまないのだから、彼の人生は40年で見事に完結したと考えるのが一番いいように思う。それ以上短かかったり長かったりしたら、松田優作という一個の伝説はこうまで完全なものとはならなかったであろう。時代を切り裂いていく力を持った人間には長い時間は天から与えられないのかもしれない・・。


 私は髪を短くしてからの松田優作が好きだ。ハードボイルドな彼がかっこいいのは言うまでもないが、人間的に深みを増した頃の松田優作が好きだ。「家族ゲーム」で、それまでとは一線を画した役柄を演じた彼が、薬師丸ひろ子を相手に見せる、どこか頼りなさそうで、その実深い思いを心の奥に秘めた探偵役は、TVドラマで演じたファンキーな探偵とはまるで違っていて、松田優作の深化を如実に表している。私が一番好きな映画「それから」の代助の原型が探偵・辻山の中に見つけられて、薬師丸ひろ子が話題の中心になったこの映画の中でも、しっかりとした存在感を見せているのはさすがだと改めて感心した。
 と言っても、やはりこの映画の薬師丸ひろ子は可愛い。文句の付けようがないほど可愛い。何故こんな可愛い女の子が、玉置浩二などというバカの毒牙にかかってしまったのだろう、とずっと悔しく思いながら見ていた。若い頃にはとても信じられないような暴挙を熱に浮かされて犯してしまうことがよくあるが、薬師丸が玉置浩二と結婚したことは、20世紀最大の愚行だといっても過言でないような気がする。


 この映画のラストシーンは空港で松田優作と薬師丸ひろ子の長いキスシーンだが、25年以上も経ってしまうと、いろんな感情が入り混じってきて、なかなか公開当時のような新鮮な気持ちで見ていられなかったのは、ちょっと残念だった。でもやはりいい映画だった。
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