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移項

 【鈴木さんは、方程式を解くときに使う「移項」について、「どうして一方の辺の項を他方の辺にうつすとき、符号を変えなければいけないの」と聞いてきました。あなたならどのように説明しますか。
 方程式 2X-5=-9 を使って説明しなさい。】

 この問題にどうやって答えたらいいか、教えて欲しいと中1の女の子に頼まれた。方程式を解くには、「移項」と言って、左辺には文字の項、右辺には数字の項を集めるのが基本であるが、その際数字の符号を+なら-に、-なら+に変えなければならない。それが何故なのかをたずねているのが上の問題である。例に挙げられた式について言うならば、
  2X=-9+5  ‥‥①
  2X=-4    ‥‥②
   X=-2    ‥‥③
と解くのだが、①のところでもとの式の左辺にあった-5を右辺に移項する時に、+5としたのは何故か、という質問である。
 この質問の内容は、方程式の一番肝要な考え方であり、移項の際に符号を変えるのを忘れて間違った答えを出してしまう悪癖がなかなか直らない生徒も時々いるから、口を酸っぱくして「移項する時には符号を変えるんだぞ」と言っている私だが、ならばどうして?と改めて聞かれたりすると、一瞬答えるのに逡巡してしまう。それは、塾では解法を教えることが主眼になっていて、その解法がどういう理由で可能なのかを教えることなどほとんどないせいなのだろうが、時々そういった数学の根本をたずねられたりすると、私の数学の根本原理に対する理解を試されているようで、気持ちがピリッと引き締まる。高校生の頃から数学が大嫌いになり、数学のない世界に心から憧れていた私ではあるが、塾を始めるようになって徐々に数学の楽しさに開眼したのもまた事実であるから、改めて数学の最も基本をおさらいできるのは、塾長としての能力を保つのにとても役立つ。この問題も当たり前のことだと思って何の疑念も挟んだことがなかっただけに、解答を考える過程がなかなか楽しかった。

 【答え】
等式には次の4つの性質がある。
 (a)等式の両辺に同じ数をたしても等式は成り立つ。
 (b)等式の両辺から同じ数をひいても等式は成り立つ。
 (c)等式の両辺に同じ数をかけても等式は成り立つ。
 (d)等式の両辺を同じ数でわっても等式は成り立つ。
この4つの性質を使って、与えられた方程式 2X-5=-9 を解いていく。
  両辺に5をたすと、等式の(a)の性質より等式はそのまま成り立つから、
   2X-5+5=-9+5 ‥‥④
整理すると  2X=-4 
この両辺を2でわって 2X÷2=-4÷2
          ゆえに、X=-2
ここで、④の左辺だけを計算してみると、
   2X=-9+5
となり、これは与えられた方程式で、左辺にあった-5の-符号を+に変え+5として右辺に移したことになる。
また、2X+5=-9 の場合でも、
等式(b)の性質を使って両辺から5をひいても等式はそのまま成り立つから、
   2X+5-5=-9-5 ‥‥⑤
    2X=-14
     X=-7
⑤の左辺だけを整理してみると
    2X=-9-5 
となり、これはあたえられた方程式で、左辺にあった+5の+符号を-に変えて-5として右辺に移したことになる。したがって、「一方の辺の項を他方の辺にうつすとき、符号を変えなければいけない」ことになる。

 こんな感じで中学生には教えたが、果たしてこれが満点の解答だと褒めてもらえたかどうか、その中学生に確かめていないので、分からない。自分としてはなかなかうまく証明できたと、自賛しているのだが・・。
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