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性懲りもなく・・

 性懲りもなく・・、とお叱りを受けるのは覚悟の上で、カブトムシの幼虫を育て始めたことをご報告せねばならない。だが、なにも好き好んでカブトムシを育てようとしたわけではないことだけはご理解願いたい。事の顛末を手短に話せば・・、
 数日前、父が畑から帰ってきて、「カブトムシを育てる子供はいないか?」と訊いてきた。「いまどきの子供は虫が嫌いだからなかなか欲しがらないよ」と答えてみたものの、父には納得できないようだった。どうも「男の子は誰もがカブトムシを欲しがるものだ」という先入観があるようだ。あまり無下に断ってこれ以上がっかりさせるのも申しわけない気がして、「じゃあ、何人かに訊いてみる」とひとまず答えておいた。だが、見込みはほとんどないから、とりあえずは私が面倒をみることにした。


 しかし、問題なのは、父が持ち帰ったのは幼虫だけで、畑にあった幼虫の住処となっていた古畳の混じった土を持ち帰ってこなかったことだ。前回私が幼虫を全滅させてしまったのは、住環境の改善のつもりで、幼虫たちを、それまで住んでいた黒土から、おがくずに移し換えて食べるものを奪ったのが原因だった。今思えば、何であんなバカなことをしたもんだと不思議でたまらないが、その時学んだ教訓を生かさねば、全滅させた幼虫たちに申し訳が立たない。エサのないおがくずの中に入れるなんて愚は繰り返してはならない。ならば、どこに入れたらよいのだろう・・。
 庭をぐるっと見まわしてみたところ、腐葉土が詰まったような場所はない。穴を掘って幼虫を埋めても、うまく育ちはしないだろう。じゃあ、父が畑から幼虫たちが住んでいた土を持ち帰るよう頼んで、その間だけ緊急避難的に庭に埋めて雨風を避けさせようか・・。
 と、その時妻が、「このプランターの中に埋めてやれば?」と、自分で何かの種を植えて芽が出始めているプランターを指差した。「芽は違う鉢に植え換えればいいから」。カブトムシの幼虫を見た時には渋い顔をしていたのに、なぜ突然気が変わったのだろう?なんだか気味が悪かったが、好意に甘えて損はないだろう。さっそく芽を植え替えて、カブトムシを新居に引越しさせた。


 この土ならきっと幼虫たちの食べものはたくさんあるだろう。幼虫たちも気に入ってくれたようで、しばらくすると皆地中に潜って行った。


 カブトムシの幼虫など可愛いものではない。これだけ大量にいるのを見ると、思わずぎょっとしてしまうほどだ。だが、夏までうまく育てば、立派なカブトムシになる。そう思えば、少しばかり愛おしくなってくる・・。
 前回は屋内で飼って水やりなどの世話をした記憶があるが、今回は自然に任せようと思う。プランターは今まで通り外に置いておき、雨が降ろうが雪が降ろうが、そのままにしておくつもりだ。住処だけ確保してやり、後は幼虫たちの生命力に委ねよう・・。

 とは言え、念のために父が持ち帰った畑の土を、プランターに山盛りにしておいた。


「カブトムシ」と書いた立て札が、幼虫たちの墓碑銘にならないよう、祈っている。
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