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さすが!

 秋田犬の太郎は、塾舎の隣の工場との境目の細長い土地で飼っているのだが、そこには教室のエアコンの室外機が3台設置されている。昨年末に死んだ弁慶はそれに対して何も損傷を加えたことはなかったのに、太郎はまだ若いためか、ひどい目にあわせてくれた・・。

 

 2階の教室にあるエアコンから室外機までつながる配線が太郎に噛まれて剥き出しになってしまっている。隣にあるもう一台の室外機は、おしっこがかけられたせいで根元が腐ってしまい、運転しなくなってしまった。これは太郎単独の仕業ではなく、弁慶との共同作業だろうと思って諦めもついたが、配線を噛んだのは間違いなく太郎であり、このまま放置しておくと、配線が切れるか、太郎が感電するか、のどちらかだと、室外機を見た電気店の人に警告された。「じゃあ、配線をカバーで覆ってよ」と頼んだのが、夏休みの前。壊れたエアコンを買い替える相談も同時にしたが、こちらは一旦見送ることにして、配線だけは直すように話をしたはずなのに、電気店の人はその後一度も現れず、とうとう夏休みも終わってしまった。「いい加減な奴だな」と思ったが、電話をするのも面倒で、これくらいなら自分で直そうとずっと思っていたのだが、なかなかホームセンターに行くことができず、いつの間にか10月も下旬となってしまった。
 ところが先日、シンビジュウムの栄養剤を買うため、ホームセンターに行った。その時、私は全く忘れていたのだが、妻から「エアコンの修理は?」と指摘されたので、運よく配線のカバーを買うことができた。2mほどの長さで500円、確か電気店の人は修理に10,000円かかると言っていたから、500円で直せるなら儲けものだ。素人のやることだから、少々雑になってしまうだろうが、太郎の攻撃を防御できさえすればいいのだから、何とか自分でやってみようとやる気満々で家に帰った。

 さあ、やるかと太郎を外に出して作業を始めかけたら、ちょうどそこへ父が畑から戻ってきた。何やってるんだ?という顔をしたので、事情を説明したところ、「そうか」と言って、カッターナイフとビニールテープを持って入ってきた。いくら年をとったとは言え、こういう作業は昔取った杵柄、たやすいもんだ、と言いたげに、カバーを配線にあて、長さを計り、カッターで切ってビニルテープでグルグル巻く、この一連の動作が実にスムーズだ。こうなると私の出る幕などないから、見学者でいるしかない。全部で10分もかかっただろうか、あっという間に作業を終えてしまった。(わたしだけだったらとてもこうはいかなかった・・)

 
 
 

 手際の良さには唸るしかなかったが、やはりしっかり修行を積んだ職人は、色んなことに対応できるだけの技を身に付けているもんだな、と今さらながら感心した。
 さらには、それだけでは飽き足らないのが職人の職人たる所以なのだろう、奥から鉄柵を持ってきて、それを組み立てて太郎が室外機に密着できないようにしてくれた。

 


 もうこれで安心だ。よかった・・。
 
 久しぶりに父の職人技を見たような気がして、「この人には叶わないな」という思いを新たにした。どうしてこんなに実務的な人の倅に、私のようにいつまでたっても書生っぽのような男が生まれたんだろう。不思議と言えば不思議だ。



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