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フェニックス

 昨日の朝、妙に早く目が覚めてTVを点けたら、どの局も、チリのサンホセ鉱山落盤事故の救出作業が始まるとのニューでもちきりだった。「そうか、もうすぐか・・」と思いながら、じっとTVを見ていたら、色んな事が分かって面白かった。
 まずはこの落盤事故の原因について、ここ数年の銅の価格の高騰が挙げられていた。すなわち、中国やインドが銅を買い占めようとしているため、銅の産出量を増やそうとして、従来の大企業だけでなく、中小の企業も採掘に参入したのだそうだ。安全面を二の次にして、どんどん地下深くまで坑道を掘り下げていった結果、落盤事故が頻発し、多くの犠牲者が出ているという。
「ここでも中国が暗躍しているのか・・」と、なんだか気分が重くなってしまったが、かつての日本がエコノミックアニマルと世界から糾弾されたように、中国も早晩激しいバッシングを受けざるを得ないような気がする・・。
 さらに、33人の作業員を救出するカプセルが「フェニックス」と命名されているのも知った。幅が53cmしかない細長い筒状の入れ物であり、ワイドショーでは実際の「フェニックス」と同じ大きさのカプセルを作って、スタッフが出たり入ったりしていた。


 こんな狭い物に乗って真っ暗な700mも続く穴の中を15分かけて登って行く・・、閉所が苦手な私では想像しただけで気が遠くなりそうだが、70日も閉じ込められた作業員たちにとっては、再び生命の舞台へ戻って行く産道のようなものであり、カプセルが「フェニックス」と命名されたのもそういう意味において納得できた。いい名だ・・。

 その後出掛けて、11時半過ぎに家に戻ってすぐにTVを点けたら、ちょうどレスキュー隊員が地下に着いたところだった。しばらくしてフロレンシオ・アバロスさんが最初の救助者としてフェニックスに乗り込んだ。程なくカプセルが地上に続く穴の中に姿を消した後は、無事地上にたどり着けるよう、現地で見守る人々と同じように祈っていた。
「うまく行けよ!!」
 ほぼ予定通りの時間をかけてカプセルが引き上げられ、地上にその姿が現れた時には、ジーンときた。はるか遠く離れた土地の、見ず知らずの人のことなのに、その69日ぶりの生還には心から快哉を叫んだ!!
「おめでとう!!よく頑張った!!偉い!!」


 奥さんや息子と抱き合うアバロスさんの映像を見ながら、極限状況をどうやって生き延びてきたのか聞きたくなった。33人も仲間がいたから励ましあいながら過ごせたのかもしれないが、大勢だからこそ逆に困ったこともいくつかあっただろう。それをどうやって乗り切ってきたのか、彼らの肉声を聞きたいと思った。もちろん、つもり積もった精神的・肉体的な疲労をすっかり取ってからのことだが・・。
「まずはゆっくりして下さい!!」

 しかし、この作業を見ていて、人間の力はすごいものだなと感心した。当初、クリスマスごろと予想された救助が、2か月以上も早まったのだから驚いてしまう。だが、人間の叡智は本来事故処理に発揮するものではなく、事故を起こさないように結集させるべきものであろう。この落盤事故の教訓が、今後鉱山での事故の撲滅に生かされるよう、しっかりと失敗から学んで欲しい。



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