毎日いろんなことで頭を悩ましながらも、明日のために頑張ろうと自分を励ましています。
疲れるけど、頑張ろう!
団扇
節電の夏、扇風機が売れているらしいが、節電どころか電気をまるで使わない団扇の方がずっと役に立つ。塾の授業中に下敷きをパタパタする生徒は時として目障りだが、今年の夏はそうも言っていられない。いっそのこと団扇持参を促そうか・・。
江戸時代の俳人、横井也有の俳文集「鶉衣」に「奈良団賛(ならうちはのさん)」という軽妙洒脱な一文がある。以下に原文とその現代語訳を載せてみる。
【原文】
青によし奈良の帝の御時、いかなる叡慮にあづかりてか、この地の名産とはなれりけむ。
世はただ其道の芸くはしからば、多能はなくてもあらまし。かれよ、かしこくも風を生ずるの外は、たえて無能にして、一曲一かなでの間にもあはざれば、腰にたたまれて公界にへつらふねぢけ心もなし。ただ木の端と思ひすてたる雲水の生涯ならむ。
さるは桐の箱の家をも求めず。ひさごが本の夕すずみ、昼ねの枕に宿直して、人の心に秋風たてば、また来る夏を頼むとも見えず。物置の片隅に紙屑籠と相住みして、鼠のあしにけがさるれども、地紙をまくられて野ざらしとなる扇にはまさりなむ。
我汝に心をゆるす。汝我に馴れて、はだか身の寝姿を、あなかしこ、人にかたる事なかれ。
袴着る 日はやすまする うちはかな
【現代語訳】
青によし奈良の帝(称徳天皇)の御時に、どのような叡慮にあずかってか、この土地(奈良)の名産となったのだろうか。
世間では芸を十分に知っているから、多能でなくてもよいのだ。「彼」は、賢いことに風を生み出す外は、全く無能で、音楽の一節、舞の一手を奏でる時に出会うこともないから、扇子のように腰にたたまれて公の場所へ出て機嫌をとることもない。この世をただ木の端のように軽く思いすてた僧の境涯のようだ。
豪華な桐の箱の入れ物をも求めない。夕顔の下での夕涼みや昼寝の枕にお共して、涼しくなって人の心に秋風(飽き風)が立てば、また来年の夏にも頼むと思われることもない。物置の片隅に紙くずのゴミ箱と一緒に住んで、鼠の足跡に汚されるけれども、
不要になると表の地紙をまくられて野ざらしとなる扇子よりはましであろう。
私はお前に心を許す。私がお前に馴れたからと言って、私の裸身の寝姿を、恐れ多くも人に語る事はするなよ。
袴を着る日は休ませるのだよ、団扇は。(正装の袴の時は団扇でなく扇子)
作者の横井也有は、名古屋の産で、若い頃から俳人としても知られていたが、俳諧では句よりもむしろ俳文のほうが優れ、俳文の大成者と呼ばれる多芸多才の人物であった。その才の発露である「鶉衣」の中には、他にも面白い文がたくさんあり、こんな自在な文章が書けたらいいのになあ・・、と浅学非才な私は羨むばかりである。
もし、「団扇」というお題で文を書くとしたら、今の私には先日手に入れた「ウチワヤシ」のことぐらいしか書けないだろう・・。
でも、このウチワヤシ、なかなか立派でしょう!!
江戸時代の俳人、横井也有の俳文集「鶉衣」に「奈良団賛(ならうちはのさん)」という軽妙洒脱な一文がある。以下に原文とその現代語訳を載せてみる。
【原文】
青によし奈良の帝の御時、いかなる叡慮にあづかりてか、この地の名産とはなれりけむ。
世はただ其道の芸くはしからば、多能はなくてもあらまし。かれよ、かしこくも風を生ずるの外は、たえて無能にして、一曲一かなでの間にもあはざれば、腰にたたまれて公界にへつらふねぢけ心もなし。ただ木の端と思ひすてたる雲水の生涯ならむ。
さるは桐の箱の家をも求めず。ひさごが本の夕すずみ、昼ねの枕に宿直して、人の心に秋風たてば、また来る夏を頼むとも見えず。物置の片隅に紙屑籠と相住みして、鼠のあしにけがさるれども、地紙をまくられて野ざらしとなる扇にはまさりなむ。
我汝に心をゆるす。汝我に馴れて、はだか身の寝姿を、あなかしこ、人にかたる事なかれ。
袴着る 日はやすまする うちはかな
【現代語訳】
青によし奈良の帝(称徳天皇)の御時に、どのような叡慮にあずかってか、この土地(奈良)の名産となったのだろうか。
世間では芸を十分に知っているから、多能でなくてもよいのだ。「彼」は、賢いことに風を生み出す外は、全く無能で、音楽の一節、舞の一手を奏でる時に出会うこともないから、扇子のように腰にたたまれて公の場所へ出て機嫌をとることもない。この世をただ木の端のように軽く思いすてた僧の境涯のようだ。
豪華な桐の箱の入れ物をも求めない。夕顔の下での夕涼みや昼寝の枕にお共して、涼しくなって人の心に秋風(飽き風)が立てば、また来年の夏にも頼むと思われることもない。物置の片隅に紙くずのゴミ箱と一緒に住んで、鼠の足跡に汚されるけれども、
不要になると表の地紙をまくられて野ざらしとなる扇子よりはましであろう。
私はお前に心を許す。私がお前に馴れたからと言って、私の裸身の寝姿を、恐れ多くも人に語る事はするなよ。
袴を着る日は休ませるのだよ、団扇は。(正装の袴の時は団扇でなく扇子)
作者の横井也有は、名古屋の産で、若い頃から俳人としても知られていたが、俳諧では句よりもむしろ俳文のほうが優れ、俳文の大成者と呼ばれる多芸多才の人物であった。その才の発露である「鶉衣」の中には、他にも面白い文がたくさんあり、こんな自在な文章が書けたらいいのになあ・・、と浅学非才な私は羨むばかりである。
もし、「団扇」というお題で文を書くとしたら、今の私には先日手に入れた「ウチワヤシ」のことぐらいしか書けないだろう・・。
でも、このウチワヤシ、なかなか立派でしょう!!
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