じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

井上荒野「切羽へ」

2018-07-26 20:33:45 | Weblog
☆ 井上荒野さんの「切羽へ(きりはへ)」(新潮文庫)を読んだ。

☆ 恋愛小説、ヒューマンドラマといったジャンルだろうか。私は、新興宗教が国家転覆を図るような小説が好きだ。恋愛ものは「どうでもいい」「自分には関係ない」とシラケてしまうのだが、この作品には付き合わされてしまった。

☆ 3月に始まり、4月に終わる。離島に暮らす人々の1年が描かれていた。巻末に山田詠美さんの解説が添えられており、それ以上に付け加えることはない。概要だけ書けば、話者は島の小学校で養護教諭を勤める女性。画家の夫と暮らしている。学校には校長先生、教頭先生、そして友人の月江先生がいる。この月江先生には愛人がいて週末には本土から律儀にやってくる。

☆ この長閑ともいえるいえる島の小学校に新しく音楽を担当する石和という男の先生がやってくる。背が高くて人当たりは良くない。悪い人ではなさそうだが謎な存在だ。どうやら主人公の女性はこの先生に魅かれているようだ。

☆ さて、月江先生をめぐる三角関係は、大事件に発展。月江先生の愛人(本土さんと呼ばれる)をめぐる月江先生と本土さんの妻との修羅場。一件落着と思いきや、今度は月江先生と石和先生が怪しい関係になり、復活した本土さんと石和先生の大乱闘。このあたりの話の展開は面白い。構成の妙だと思う。

☆ そして最後はしっとりと。美しく終わっている。「切羽」とは炭鉱の一番掘り進んだ地点を言うらしい。「切羽詰まる」とは語源が違うようだが、切羽詰まった状況は共通しているように思った。

☆ 文章がうまく、面白かった。
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海老沢泰久「帰郷」

2018-07-26 17:05:09 | Weblog
☆ 海老沢泰久さんの「帰郷」(文春文庫)を読んだ。

☆ F1チームのメカニックに3年契約で選ばれた工員。レースとともに世界中を転戦し、緊張と充実した日々を過ごす。3年の期間が過ぎもとの工場に帰るが、刺激的な日々が忘れられず、日常のことには無感動になってしまう。

☆ 淡々とノンフィクションタッチで描かれているので読みやすい。レース前後の緊張感が伝わってくる。

☆ 鬱な日々は一種のPTSDだろうか。
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