じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

堀江敏幸「スタンス・ドット」

2018-07-21 21:12:20 | Weblog
☆ 堀江敏幸さんの短編集「雪沼とその周辺」(新潮文庫)から「スタンド・ドット」を読んだ。

☆ 題になっている「スタンド・ドット」とは何かと思っていたが、読んでいるうちにボーリングの立ち位置だということが分かった。と同時に、それは人生の立ち位置を暗示しているようにも思えてきた。

☆ 父の中古車販売業を受け継いだ男がボーリング場の経営を始める。妻はそのボーリング場で小さな喫茶店を開いた。ブームに乗ってゲームを待つ客であふれたこともあったが、ブームが過ぎると客足も途絶えた。妻は亡くなり、男は難聴になってしまった。そして、遂に廃業することを決める。その最後の日、閉店間際のドラマが書かれていた。

☆ 最後の客のゲームの進行とともに、思い出されるあれこれ。男は最後の一投を託される。
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辺見庸「自動起床装置」

2018-07-21 18:41:44 | Weblog
☆ 辺見庸さんの「自動起床装置」(文春文庫)を読んだ。

☆ ある会社(多分、マスメディア関係。通信社か)の仮眠室、そこで「起こし屋」をする嘱託職員の「ぼく」と聡さん。眠り方はひとそれぞれで、起こし方にも奥深いものがある。その会社は「自動起床装置」なるものを導入するという。布袋にゴムホースが連結されたその機械に対して「ぼく」たちの「起こし屋」としてのプライドをかけた戦いが始まる。

☆ 人が人を起こすというのは、とても贅沢なことかも知れないと思った。
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保坂和志「この人の閾」

2018-07-21 10:33:03 | Weblog
☆ 保坂和志さんの「この人の閾」(新潮文庫)を読んだ。

☆ 出張で小田原に来た「三沢君」、少し時間が空いたので大学で1年先輩の真紀さんの家を訪れる。真紀さんは夫、2人の子どもと暮らす主婦だ。作品のほとんどは「ぼく(三沢)」と真紀さんの会話で進む。

☆ のどかな昼下がりの風景。ごくありふれた家庭。「ニコベエ」という人懐っこい迷い犬がいて、サッカーをしている小学生の長男がいて、幼稚園に通っている長女がいる。夫は朝早く出勤し、夜遅くに帰ってくる。仕事が好きなのだという。

☆ 大きな事件は何も起こらないが、二人の会話が実にいい。「間」が素晴らしいと思う。

☆ 真紀さんは主婦としての自分に満足しているけれど、なかなかの読書家で才人でもある。会話の中でそれがにじみ出る。三沢君はいつしか聞き役に回っている。

☆ 作品に出てきたラテン・アメリカの小説に出てくる微睡んだ風景。ガブリエル・ガルシア=マルケスの小説でも読んでみたくなった。イルカの知能論争には考えさせられた。

☆ ホッとする作品だった。
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