じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

谷崎潤一郎「恐怖」

2020-11-03 20:23:11 | Weblog
★ NHK「100分de名著」、10月は「谷崎潤一郎スペシャル」だった。島田雅彦さんを迎えて、「痴人の愛」「吉野葛」「春琴抄」「陰翳礼賛」が紹介されていた。

★ ロリコン、フェチ、サド・マゾ、パワハラなど、あらゆる異常性欲が網羅され、興味深い内容だった。

★ 源氏物語の近代版的な「痴人の愛」など面白そうなのだが、少々長いので、今日は「初期短編集」(中公文庫)から「恐怖」を読んだ。

★ 主人公のTという男は「鉄道病」だという。鉄道に乗ると「死ぬか、狂うか」の恐怖を味わうという。乗らずに済むものなら避けたいところだが、京都に住む彼は、徴兵検査を受けるために、どうしても大阪の役所に出頭しなければならなくなった。

★ 酒の力で恐怖を抑えようとするのだが、恐怖の前では効果なし。乗車すべきか逡巡していたところ、友人に出会ってしまう。途中まで一緒に行こうと誘われる。男は遂に乗車を決意すのだが。

★ 男は今でいう「パニック障害」のようだ。発作が起こるのではないかという恐怖心が恐怖を増幅させる。不規則な生活が誘因だと本人も自覚しているが、いったんの恐怖の渦に巻き込まれるとどうしようもないようだ。

★ 無事に大阪に着くことを祈るばかりだ。

★ 初期作品はそれほどでもないが、谷崎作品はその文体に特徴がある。私は句読点がないような長い文は苦手だが、そのスタイルにハマれば虜になるのかも知れない。
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