じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

新田次郎「聖職の碑」

2023-02-10 19:54:14 | Weblog

★ 京都府の私立高校入試が始まった。受験した皆さん、お疲れさまでした。あとは結果を待つのみ。実力をイマイチ発揮できなかった人、受験はまだ始まったばかりです。公立の前期、私学の1.5次、公立の中期と続きます。次のテストで頑張りましょう。

★ さて、今日は塾生が少ないので、ネットフリックスでドラマ「真夜中のミサ」を観た。天使(いや悪魔)が人々を襲い、それに血を吸われた者は悪魔化(吸血鬼のような感じ)するというもの。基本はゾンビが人を襲うホラームービーだが、それに宗教色が練り込まれている。

★ エンディングは仏教的な宇宙観、諸法実相的な境地を語っているような気がした。

★ 読書の方は、新田次郎さんの「聖職の碑」(講談社文庫)を読み始めて、これがなかなか面白い。明治時代、近代化を駆け足で進める日本は、富国強兵のため画一的な教育を行っていた。そして、日清、日露の2つの戦争を経て、社会にもゆとりができてきたのか、明治後期から大正にかけて、児童中心、個性を尊重する教育が興隆してきた。

★ 新教育、大正自由教育と呼ばれる潮流だ。教育県として知名度の高い信濃地方にもこの流れは押し寄せる。いささか旧来型の校長と若い教師が対立し、それが山岳遭難事故へと進展していく。

★ まだ50ページほどしか読んでいないが、作品に引き付けられる。新田次郎さんといえば八甲田山の遭難事故を扱った作品を思い出す。映画では「天は我を見放したか」と叫んだ北大路欣也さんが印象に残っている。

★ 指揮系統の乱れ、意見の対立が被害を大きくしたところは、「聖職の碑」にも見られそうだ。

★ 「聖職の碑」のほかにも、葉真中顕さんの「コクーン」(光文社文庫)、川越宗一さんの「熱源」(文春文庫)、横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」(文春文庫)と最近面白い本に出会える。

★ 薬丸岳さんの「神の子」(光文社文庫)、相場英雄さんの「ガラパゴス」(小学館文庫)、中嶋博行さんの「検察捜査」(講談社文庫)もだんだん面白くなってきた。

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野沢尚「殺し屋シュウ」

2023-02-09 18:16:41 | Weblog

★ 遂に明日は京阪神の私立高校入試。天気が荒れそうなのが気がかりだ。早くも奈良の私学を受験した生徒からは合格の知らせ。今年も緊張の高まる季節がやってきた。

★ さて、呉勝浩さんの「スワン」(角川文庫)は200ページでリタイア。ネットで知り合った3人組がショッピングモールで無差別テロ。大量の死傷者が出て、犯人も自ら命を絶った。破滅的な犯罪だ。

★ たまたま事件に遭遇し、生き残った女子学生が無慈悲なバッシングを受け、一方で事件を体験した人々が「お茶会」と称する集まりに呼ばれる。

★ テロの描写や女子学生への心のない非難は興味深かったが、「お茶会」あたりからわけがわからなくなってきた。多分、この後でいろいろな真相が暴露されるのだろうが、耐えきれなくなった。

★ 野沢尚さんの「殺し屋シュウ」(幻冬舎文庫)を第4章の途中まで読んだ。第1章が面白かった。父親はマル暴の刑事。実績を残しつつも裏では反社集団とつながっているようだ。粗暴な性格は家庭でも荒れまくり、母親は傷が絶えない。母子ともに怯える日々。遂に息子は父親を殺す。

★ それから彼は殺し屋として生きることになる。この作品も読んでいるうちにだんだん心が重くなってきた。第4章あたりで小休止。

☆ さて、塾生の健闘を祈りたい!

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受験まであと3日

2023-02-07 16:02:37 | Weblog

★ 京都の私立高校入試が10日から始まる。最近は幅広く受験生を確保するため(まぁ受験料を稼ぐために)前期・後期(あるいはA日程・B日程)と2回受験機会を設ける高校が増え、10日から12日まで、受験は続く。

★ 一方、京都府の公立高校前期入試まであと9日。昨夜、教育委員会から志願者数が発表された。全体としては私学志向がさらに増え(就学援助が充実してきたのも理由に1つ)、公立全体としては過去最低の倍率となった。

★ 人気のある学校とそうでない学校の格差はますます広がりつつある。多くの高校で前期で合格できるのは全体の30%なので、倍率が3倍以内なら、中期試験でほぼ全員が合格できる。(なぜ、前期、中期があるのかは大人の事情だ。優秀な生徒を私学にとられたくないという公立側の本音だ。この方式に落ち着くまでには紆余曲折があった。)

★ 受験がここまで迫ってくると、塾としてもやることが限られる。今日は、ぶらっと本屋に立ち寄り、川越宗一さんの「熱源」(文春文庫)を買った。好きな感じの出だしだ。

★ 小川哲さんの「地図と拳」も気にはなったが、さすがにあのボリュームに挑む気力が今はない。文庫になったらチャレンジしよう。呉勝浩さんの「爆弾」も文庫になったら読んでみたい。

★ 昨日の京都新聞「迷い道」と題する読み物記事が面白かった。国立大の付属小の教諭だった50歳の男性が、公立小学校の教頭への就任を命じられる。授業研究には熱意を燃やすが管理職には興味がないと、彼は職を辞して学習塾を始める。「元氣塾」と名付けられたその塾は、「勉強が苦手だったり、学校に足が向かなかったりする子」をターゲットにしたという。

★ 出だしは順調で一気に100名の塾生を集め、2つめの塾も開講した。しかし。年度末に塾生が減り、売り上げが急減することまでは予想できなかったようだ。「補習」にこだわるあまり経営が苦しくなり、ついに10年後自己破産に至る。

★ 「補習」へのこだわりに共感した同僚が経営を引き継ぎ、彼は塾長として今も塾生に向き合っているという。「あの日の私に」という、反省の弁も面白い。「経営も多少は学んでおいた方がいいよ」と過去の自分に呼びかける。

☆ 公立学校と「塾」という教育産業は、どちらも児童・生徒を対象(あるいは顧客)としているが、そこには大きな違いがある。一方は公共事業であるし、一方は営利を目的とする私企業だ。NPOといった制度を利用すれば、その中和を目指すことになるかも知れないが、「塾」は理念だけでは生き残れない。

☆ 市場のニーズ(具体的には顧客の個別ニーズ)を満たし、実績を残さなければ経営は継続できない。

☆ 教えることだけではなく、経営には異なった能力が求められる。経理、税務、人事、営業、宣伝、マーケティングなど。こうした多様な雑務を面白く感じられなければ個人塾を経営することはできないし、あるいは組織化して役割分担をする必要がある。 

☆ そんなことを感じた。

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吉田修一「熱帯魚」

2023-02-05 22:52:54 | Weblog

★ 明日は奈良の私立高校入試。塾生が一人受験する。そして京都の私立高校入試は今週の金曜日。さすがに切羽詰まってきた。

★ 忙しすぎる毎日。しかし少しずつでも読書を進めたい。今日は吉田修一さんの「熱帯魚」(文春文庫)から表題作を読んだ。

★ 大工をしている若い男・大輔が主人公。行きつけの雇われママ(そしてその幼い娘)と同棲をはじめ、それに父母が離婚したため生き別れていた弟・光男も加わる。

★ 弟は熱帯魚を見て日々を過ごし、あまりに無為なのを見かねて大輔は建築現場に連れていくが、やはり役には立たず、みんなの笑われ者になって、やめてしまう。

★ 大輔は心優しいのだが、どうも人づきあいが不器用だ。彼はこれからどう生きていくのか、気がかりを残して作品は終わる。

★ 随所に、吉田さんの筆の巧さを感じる。

★ 読みかけの本がたまってきた。瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」(文春文庫)、呉勝浩「スワン」(角川文庫)、澤田瞳子「若冲」(文春文庫)、野沢尚「殺し屋シュウ」(幻冬舎文庫)、伊坂幸太郎「ホワイトラビット」(新潮文庫)、相場英雄「ガラパゴス」(小学館文庫)、薬丸岳「神の子」(光文社文庫)、中嶋博行「検察捜査」(講談社文庫)、横山秀夫「クライマーズ・ハイ」(文春文庫)、新田次郎「聖職の碑」(講談社文庫)

★ さて、どの本が最初に読み終われますやら。

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吉村昭「死顔」

2023-02-02 17:41:04 | Weblog

★ 高校入試前あと8日。自分が受けるわけではないが、何かそわそわワクワクする。

★ さて今日は、吉村昭さんん「死顔」(新潮文庫)から表題作を読んだ。長編作品の合間に、五十音の後ろから比較的短い作品を読んでいるが、たまたま昨日に続き「死」をテーマとした作品になった。

★ 「死顔」は吉村さんの遺作だという。9男1女に恵まれた吉村さんの兄弟も、戦中、戦後を経て、4男だけになってしまった。その内、弟が病で亡くなり、そして今また次兄が死の床にある。

★ もはや70代も半ばの自分と6歳年上の兄だけになってしまった。自分にも遠からず死は訪れるであろう。その日を思い浮かべながら、淡々と筆は進む。

 

☆ 死を気にしすぎてビクビクしても仕方がない。有限の時間をいかに有意義に過ごすか。そんなことを感じた。とはいえ、日々の多忙に死さえ忘れる毎日だ。それはそれで幸せなことかも知れない。

 

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渡辺淳一「宣告」

2023-02-01 18:18:53 | Weblog

★ 高校受験までと9日。年末から通っていた歯医者が今日で一段落。痛みなくものが噛めるありがたさを痛感する。

★ さて今日は、渡辺淳一さんの「光と影」(文春文庫)から「宣告」を読んだ。「宣告」といえば先ごろお亡くなりになった加賀乙彦さんの作品も読んでみたいが、今回は渡辺作品。

★ 末期がんに冒された著名な画家。主治医は「宣告」を迷った挙句、残された時間を作品に費やしてほしいと「宣告」に踏み切る。

★ 覚悟はしていたとはいえ、余名宣告は死刑の執行を待つようなもの。画家も困惑する。衰弱も進んでいく。主治医は宣告したことを後悔し始める。

★ そんなあるとき画家は外泊を申し出る。故郷を描きたいという。それから数か月。衰える身体とは裏腹に目は輝きを増し、画家は遂に作品を完成させ、死を迎える。

★ 画家は確かに作品を残したが、死期を早めたのは確かだ。「宣告」の是非を巡って、医師はなおも葛藤を続ける。

★ 不確実な時代の中で、誰しも死を迎えるという点だけは確実だ。そう考えると、死期の到来を必要以上に恐れることはないのかも知れないが、やはりその日が来ればショックを受けるだろうなぁ。

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筒井康隆「モナドの領域」

2023-02-01 00:57:29 | Weblog

★ YouTubeを見ていると「帰ってきたウルトラマン」のエピソード「怪獣使いと少年」(1971年)が問題作だというので観てみた。身寄りのない少年が地球探査に来た宇宙人に助けられ生活を共にするが、隠された宇宙船を見つけるために穴を掘り続ける少年を気味悪がる町に人々が、彼らを迫害するというもの。

★ 彼らの住処が河原の廃屋で、人間に変身した宇宙人が「金山」と名のっていたのも意味深だ。

★ いじめにせよ、迫害にせよ、自分たちと異なる人々を排除しようとする人間の残酷な性向がよく描かれていた。時代は移り変わり「多様性を認めよう」といわれるようになった時代でも、いじめは根絶しない。人間の性(さが)は結構深そうだ。

★ さて、今日は筒井康隆さんの「モナドの領域」(新潮文庫)を読んだ。80歳を越えられた作者の「最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と銘打たれるもの。

★ 連続バラバラ死体事件から、神を超える「神」の出現。「神」を裁く一種の宗教裁判が描かれていた。

★ オープニングとエンディングは普通にわかりやすかったが、中盤から後半にかけての裁判風景は、いわば哲学論争で難解を究めた。作者の教養の深さというべきか、すべては神を超える「神」である「作者」の仕掛けた罠か。

★ 浅く読めばそれなりに、深く読めば実に深く、読者によって評価の別れそうな作品だ。「モナド」とはライプニッツが思い浮かぶ。汎神論、決定論(予定調和)だったかな。そもそも創造物である人間が創造主を認識することができるのか。「ただ信じるのみ」というものかも知れない。

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