じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

渡辺淳一「宣告」

2023-02-01 18:18:53 | Weblog

★ 高校受験までと9日。年末から通っていた歯医者が今日で一段落。痛みなくものが噛めるありがたさを痛感する。

★ さて今日は、渡辺淳一さんの「光と影」(文春文庫)から「宣告」を読んだ。「宣告」といえば先ごろお亡くなりになった加賀乙彦さんの作品も読んでみたいが、今回は渡辺作品。

★ 末期がんに冒された著名な画家。主治医は「宣告」を迷った挙句、残された時間を作品に費やしてほしいと「宣告」に踏み切る。

★ 覚悟はしていたとはいえ、余名宣告は死刑の執行を待つようなもの。画家も困惑する。衰弱も進んでいく。主治医は宣告したことを後悔し始める。

★ そんなあるとき画家は外泊を申し出る。故郷を描きたいという。それから数か月。衰える身体とは裏腹に目は輝きを増し、画家は遂に作品を完成させ、死を迎える。

★ 画家は確かに作品を残したが、死期を早めたのは確かだ。「宣告」の是非を巡って、医師はなおも葛藤を続ける。

★ 不確実な時代の中で、誰しも死を迎えるという点だけは確実だ。そう考えると、死期の到来を必要以上に恐れることはないのかも知れないが、やはりその日が来ればショックを受けるだろうなぁ。

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筒井康隆「モナドの領域」

2023-02-01 00:57:29 | Weblog

★ YouTubeを見ていると「帰ってきたウルトラマン」のエピソード「怪獣使いと少年」(1971年)が問題作だというので観てみた。身寄りのない少年が地球探査に来た宇宙人に助けられ生活を共にするが、隠された宇宙船を見つけるために穴を掘り続ける少年を気味悪がる町に人々が、彼らを迫害するというもの。

★ 彼らの住処が河原の廃屋で、人間に変身した宇宙人が「金山」と名のっていたのも意味深だ。

★ いじめにせよ、迫害にせよ、自分たちと異なる人々を排除しようとする人間の残酷な性向がよく描かれていた。時代は移り変わり「多様性を認めよう」といわれるようになった時代でも、いじめは根絶しない。人間の性(さが)は結構深そうだ。

★ さて、今日は筒井康隆さんの「モナドの領域」(新潮文庫)を読んだ。80歳を越えられた作者の「最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と銘打たれるもの。

★ 連続バラバラ死体事件から、神を超える「神」の出現。「神」を裁く一種の宗教裁判が描かれていた。

★ オープニングとエンディングは普通にわかりやすかったが、中盤から後半にかけての裁判風景は、いわば哲学論争で難解を究めた。作者の教養の深さというべきか、すべては神を超える「神」である「作者」の仕掛けた罠か。

★ 浅く読めばそれなりに、深く読めば実に深く、読者によって評価の別れそうな作品だ。「モナド」とはライプニッツが思い浮かぶ。汎神論、決定論(予定調和)だったかな。そもそも創造物である人間が創造主を認識することができるのか。「ただ信じるのみ」というものかも知れない。

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