★ 中嶋博行さんの「検察捜査」(講談社文庫)を読んだ。法曹界の現実と裏側を知ることができた。
★ 検察官は裁判官や弁護士と同じく、司法試験合格者が就任するという。近年、検察官を志望する司法修習生が減少。案件は増える一方なのに、このままいけば検察という組織さえ崩壊しかねないという。
★ そんな折、弁護士会の次期会長になろうかという重鎮が拷問の上殺害される。事件を担当したのは横浜地検の若い女性検事。男社会の法曹界、上司たちにも真っ向から意見を言うその態度は煙たがられる。しかし、彼女はそんなことは苦にもせず、県警と情報交換をしながら真相に迫っていく。
★ 事件の裏には、検察制度をめぐる2つの改正案があった。
★ こんなことで連続殺人が行われるのかは疑問に思ったが、権力の座にある狂信的な人の考えることは計り知れない。検察官を増やそうと司法試験合格者を増やしたことが結局弁護士の増やし、弁護士間の過当競争を招いていること。弁護士にもギルドといった派閥があることなど、勉強になった。
★ 一方、検察は組織権力の拡大を目指してじっと息をひそめて出番を待っているように感じた。
★ 法曹界の内部を知る作家ならではの作品だった。