曜日のない暮らし

日々の暮らしにあるささやかで素晴らしい瞬間
暮らしと心を癒してくれる生き物たち
山本弘三の写真を中心にした日記帳

みかんの季節

2017年10月02日 | 日記

 10月になりました。看板がいきなりミカンに変わりましたが、我が家(山本柑橘園)では今月より来年の7月末までの10ヶ月間に、みかんをはじめいろいろな柑橘類を生産販売しています。私の家は代々みかん農家で、と言っても私で3代目ですから老舗と胸を張れるほどではありません。京都などでは300年くらい続いて初めて一人前のお店というところもあります。京都人にとって先の戦争以来と言うときに、私たちよそ者が太平洋戦争のことを指すのかと思えば、その戦争とは応仁の乱のことだったりするという冗談のようなことが通用する土地柄ですから。私はそんな京都が好きでよく行きますが、住みたいとは思いませんね。ということで我が家は新参者ですが老舗にないこだわりを持っています。みかんやその他柑橘において常に新しいものを受け入れ、よりおいしく食べられる果物を探し求めています。簡単にいえば私が新し物好きなだけなのかもしれません。コンビニで「新発売」のラベルが貼ってあると直ぐに買いたくなります。そして結果はがっかりすることがほとんどなのですが(いつもカミさんに笑われています)、それでもめげずに「新発売」に手を出します。あれはコンビニの消費者心理をついた一種の販売手段なのでしょうか。お客さんをだますのは良くないと思いますが、我が家(山本柑橘園)ではわたしの好きな新品種に取り組み、私が食べてみて、そして周りの人にも試食していただいて納得のゆく者を新発売として紹介してゆきたいと思っています。
最近では柑橘の新しい品種として 南アフリカから来たジャクソンフルーツのことを紹介しました。そしてもう一つ、フィンガーライムのことも写真で紹介したと思います。ジャクソンフルーツについてはすぐには苗木が入手できないので山本柑橘園で販売できるようになるかどうかわかりませんが、フィンガーライムについては4年前に話題になるとすぐに苗木を入れましたので、今年から少しですが販売できるようになりました。先日、東京のあるレストランから注文があり、初めての出荷をしました。お客様に満足していただけるとよいのですが。今後需要が広がってゆくようであればこのフィンガーライムも栽培を拡大してゆきたいと考えています。今は国内でほんの少ししか栽培されていなくてしかも原産地のオーストラリアからの輸入もままならぬらしく希少性が高いため高価で取引されているようです。今はマツタケ並みの価格ですが庶民が気楽に使えるようになるには国内での生産量が相当増えないと無理でしょうね。

 そんな高価な新品種のことはさておき、秋になり最初に出てくるみかんは極早生みかんです。その年に初めて食べるみかんはオレンジ色に着色してはいるもののまだ緑の部分も残っていますが、柔らかな皮をむくと果皮の油胞つぶれて爽やかな柑橘臭が広がってきます。12月以降に食べる熟したみかんは甘いけれどあまり香りがありませんよね。極早生みかんの持つあの香りはもともと完全に熟す前の果物の持つ害虫や獣や人に食べられることを避けるための香りなのです。果皮がオレンジ色になって香りが弱まって来ると、みかんの木は果実としてはもう食べてくださいと信号を出しているのです。人は臭覚よりも視覚に頼って行動しますからみかんの木からオレンジ色に着色したものから順次収穫しますが、臭覚の鋭いイノシシは真夜中に畑に出てきてみかんの色は解りませんから香りを頼りに熟れたみかんを食べます。それは見事と言えるほど広いみかん畑の中から極早生みかんを探して食べ、それを食べつくすと次に熟してくる早生種のみかんを食べます。みかんの木が発散している「もう食べてもいいよー」という香りの信号をよく知っているのでしょうね。今年もイノシシにみかんを少しばかり食べられました。どこのみかん畑もすべてイノシシ除けの鉄柵で囲ってあるのですが、敵もさる者弱いところを見つけては破って侵入して来ます。この数日は毎日囲いの見回りをしていますが大変なことです。囲いの中においしい食べ物があることを覚えさせてはいけないのです。一度味を覚えさせると彼らも生活がかかっていますから、執拗に柵を破ろうとします。破られたところはすぐに修理してそこからはもう入れないのだと諦めさせねばなりません。これから来年の5月に南津海の収穫が終わるまでイノシシ・タヌキやカラス・ヒヨドリなどの鳥獣たちから果実を守らねばなりません。大変なことなのです。

 

 さて、話は変わりますが、10月になると私はがぜん忙しくなります。みかんの収穫も始まりますが、アサギマダラが大島にやって来るからです。趣味のことで忙しくなるわけですからストレスは全くありません、楽しくて忙しいのです。今日は雨が降っていますからアサギマダラは飛びませんが、北の方から南下してきたアサギマダラの群れの先頭は少し前に関西地方を通り過ぎていますから、今日あたりには中国山地の中ほどか広島県までは到達しているはずです。天気予報では明日も天気が良くないようですがもしも雨があがったら第一陣が大島に入る可能性があります。
昨日は天気がよかったので我が家のフジバカマ園を見張っていましたが、1頭だけとてもきれいな新鮮個体が来ていました。でもたった1頭ということは北の方から旅してきたものではなく、近くで生まれたアサギマダラだと思います。昨年は10月4日に初めて約200頭のアサギマダラが大島にやって来ました。それから徐々に数が増えてゆきピークの10月中頃には大島内には数千頭のアサギマダラが立ち寄っていたものと思います。昨年は長野県や福島県などの北の方でマーキングされたアサギマダラを大島内で40数頭見つけました。今年もマーキングされたアサギマダラがどこからどれだけやって来るかを楽しみにしています。そして大島に立ち寄ったアサギマダラはやがて九州に渡り、11月の寒さの訪れとともにさらに南の暖かい沖縄・台湾を目指して海を渡ってゆきます。2000キロメートルにも及ぶ長旅のできる不思議な力を持つアサギマダラに魅せられた人たちが全国にいますが、私もそのうちの一人です。10月半ばにはたくさんのアサギマダラがいると思いますので見にいらっしゃいませんか。

雨の日で暇なものですから長話になりました。