今日の花
Fier Dance と言う洋種の椿です。春咲きの椿だそうで12月に買った時には蕾が3個付いているだけの苗でした。花を見ずに買うのは少し冒険ですが安かったのでまあいいかと衝動買いをしました。初めて1輪咲いたのですが御覧のように赤みの濃いいい花です。
今日は少し変わった写真をご覧に入れます。やや専門的なことで面白くはありませんが、こんなことでも将来世の中の一部が変わるかもしれないということです。世の中が引っくり返るようなことではありませんし、ノーベル賞につながるような人類に貢献するようなことでもありません。でも将来の人々が美味しいみかんを食べられるか否かのきわどい瀬戸際なのです。一粒の雨は大河になって大きな力を持って行くこともありますが、そのまま乾いて蒸発して消えてしまうこともあります。そんなことは誰にも分かりませんが同じようなことが一粒のみかんの種にも当てはまります。雌蕊に付けられた花粉の遺伝子と胚細胞の遺伝子が融合して新しいみかんの種ができます。その種に私が少しばかり手を貸してやって成長を助けてやるとします。芽が出て何年かかかって成長し1本のみかんの木になり、新しい今までになかったような実を付けるようになるとします。そのみかんは美味しくて誰からも好かれる果物になるかもしれません。本当においしい果物ならやがて世界中の人たちに好んで食べられるようになるでしょう。一粒の種から育ったみかんの木にはそんな可能性があると思います。そんな夢のようなことが起こる確率は宝くじに当たるより難しいかもしれませんが誰かが手助けをしてやらなかったら夢はすぐに消えてしまいます。
そんな夢への手助けを40年近くやっていますが夢が実現されたことはありません。それが普通ですね。先日、そんな夢の一つが消えそうになって私はあわてました。今年の秋に実った新しいみかんの一つですが少し気に入っていました。春になったら苗木を作って保存しておこうと考えていたのですが数日前に畑の中にそのみかんの木を見に行って驚きました。葉が萎れて木全体が枯れそうになっているのです。まだ完全に枯れているわけではなく枝は緑色で生きているはずです。このまま春まで放置すれば木全体が死んでしまいこのみかんの木の遺伝子は永遠に失われるのです。枝はかろうじて生きていますからこの木を救おうとすれば健康な樹に接ぎ木するしか方法はありません。気温の低い時期だし生きているとはいえ枝の水分はかなり失われています。接ぎ木をしても活着するかどうか可能性はとても低い状態です。でも遺伝子を残すためにはやってみるよりほかにはありません。少しでも条件をよくするためにハウスの中のみかんの木に接いでみました。春になって芽が出れば成功です。生きた枝を少しでも確保できればクローン的に増殖することはできます。
ということで、生き残ってくれよと願いながら季節外れの接ぎ木をしました。
急に枯れそうになったみかんの木
このみかんの木は種から発生した木でこの遺伝子を持つ木は世界に1本しかありません。枯れたらこの木の遺伝子は永遠に失われます。
育種の世界では良い性質をもつものはすぐに複製を作っておく必要があります。
この枯れそうな木の枝を取って健全な木に接ぎ木をします。
台木となる木の幹に形成層まで切り込みを入れます。
枯れそうなみかんの木の比較的健全そうな部分からとった枝です。
切り口に差し込み形成層を合わせて固定します。血管と血管がうまくつながれば生命の維持ができます。
傷口がお互いに癒合するまで乾燥しないようビニールテープで保護します。
安全を期して何本も接ぎました。
台木は弓削瓢柑です。植物の移植手術は人間の移植手術ほど難しくはありません。近縁のものであれば何でも活着します。
安全のため別の木にも接いでおきました。
みかんの木の接ぎ木の時期は4月になってからが最適なのですが枝が弱っているので寒くても今すぐに接ぐしか方法がありません。はたしてこの枝は生き残ることができるでしょうか。もしも生き残ったなら皆さんは将来美味しいみかんが食べられるかもしれません。
全ての枝が枯れてしまったら無かったものと諦めてください。