自分の周りの空を写します
北東気流の街に生まれて
母に教わった一期一会
僕は母が家での最後の日を家での思い出を懐かしんで出かけると思っていた。
その前の夜、夕食後母が「頑張ってくれてありがとう」と言ってくれた。
そして翌日の午後1時15分に介護タクシーが家に来ることになった。
でも当日、母は体調が悪くて起き上がれない。ずっとベッドで寝ていた。
1時間おきに僕は様子を聞きに行ったけれど母は起きれなかった。
僕は母が今まで昼間ずっと座っていたお気に入りの椅子をながめながら朝からずっと待っていた。
何があるか分からない。その時を大切にしようと思った。一期一会だな。
やれることをやっておかないと、あらかじめ用意しておく。
そして12時になっても母は起きられない。
人間そんなものなのかな。いくら立派なことを考えていても体には勝てない。
そして出発の15分前、午後1時に母を起こしに行った。
仕方ないな運転手さんとふたりでやれば車に乗せられるだろうと思った。
すると母が今までずっと寝ていたのに、すっと立ち上がった。
「待たせてしまうから」と言った。
そして母は歩き出した。
僕が運転手さんが来るまでまだいいよと言ったら
母は「トイレに行っておく」と言って歩きだした。
僕とお母さん、ゆっくりゆっくりとトイレに歩いて行った。
トイレを終わらせてゴミも捨てて、玄関に行きそこで立って運転手さんを待った。
運転手さんが来て母は車椅子に乗って車に入った。スムーズに乗れた。
そして車は家を出てホスピスへ向かった。
車の中で僕は「立ってくれて助かった。ありがとう」とお母さんに言った。
お母さんは遠い目でにこにことして誇らしげだった。
本当にやる時にやってくれた。
お母さんかっこよかった。
ホスピスはいい雰囲気でスタッフさんも穏やかでよかった。
ずっと入るのを待った甲斐があったと思った。
僕が帰る時にお母さんが「疲れたでしょ」と言ってくれた。
僕はまた明日来るねと言った。
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