結局、冥王星は太陽系の惑星から外されることになった。
冥王星の公転周期は248年197日5.5時間だそうだ。気の遠くなるような軌道。太陽系は広い。その太陽系は銀河系にあるらしいが、その外にまた別の銀河系があり、それも数知れぬと言う。たしか太陽系から一番近い恒星まで4光年という話だった。
産経抄 平成18(2006)年8月26日[土]
「朝三暮四」という言葉がある。中国・宋の狙公という人が、飼っている猿に「木の実を朝三つ、夜四つやろう」というと、そんな少なくはいやだと反抗する。「じゃあ朝四つ、夜三つだ」と変えると、猿は喜んで従った。言葉で人をだます意味だ。
▼初め、そんな数字の詐術かと思ったほどだ。国際天文学連合が認定する太陽系の惑星の数がたった1週間で、原案の12個から8個に減ってしまったのだ。家族が急に増えたような良い気分にさせられていただけに、ちょっとガッカリという気もしなくはない。
▼問題は冥王星の扱いにあったらしい。この星を惑星と認めると、それより大きい小惑星や似たような星も仲間に入れなければならない。だから原案では12個に増えた。しかし、最終的に冥王星が惑星から除外され、逆に教科書で学んだよりも1個少なくなってしまった。
▼もっとも、学問的には冥王星を惑星に数えることに無理があったという。公転の軌道が他の惑星とは違ううえ、星自体が小さいためだ。それでも1週間前まで、除外の決断はつかなかった。それはこの小さな星が米国でちょっとした「人気者」だったからだ。
▼冥王星が発見されたのは76年前、トンボーという米国人によってだった。その頃、ディズニー映画に登場した犬は「プルート」と名付けられた。冥王星の英語名である。新惑星の発見は当時の米国にとって、科学的躍進の象徴のように思え、愛着を持っていたのだろう。
▼いや世界にとっても、この星が宇宙への関心を高めた功績は大きかった。だが、発見から公転軌道を3分の1近く回った所で、その役目を終えることになる。定年を迎える団塊の世代からは「お互いご苦労さま」という声が聞こえてきそうだ。
冥王星の公転周期は248年197日5.5時間だそうだ。気の遠くなるような軌道。太陽系は広い。その太陽系は銀河系にあるらしいが、その外にまた別の銀河系があり、それも数知れぬと言う。たしか太陽系から一番近い恒星まで4光年という話だった。