河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

カオスは病んでいる?

2012-11-17 | 私と歩行分析
最近、従来の動作分析の手法に限界を感じている。
現在私が整備したシステムを使えば全自動でリアルタイム計測が行え、そのデータを元に体節の重心および体全体の重心や関節角度などを簡単に求めることができる。
さらに全身の筋張力解析も簡単に行える。

しかしそれだけでは運動のスキルやしなやかさ等の分析を行うことが出来ない。

例えばピラティスの運動指導を受けて体にどのような変化が起こったのかなどは従来の力学的分析では評価しきれない。

偶然、保健福祉研究所に非線形解析を得意とする野中君が来てくれたこともあり、新しい動作分析が非線形的解析手法で出来るのではないかと考えた。

手始めに取っつきやすい日本語の書籍を6冊ほど購入して研究室に積み上げていた。

カオス時系列解析の基礎と応用
カオスと時系列
カオス―カオス理論の基礎と応用
カオスとフラクタル
カオスから見た時間の矢
カオスの紡ぐ夢の中で

そうしたところ、研究室を訪れた大学院の卒業生がこんなことを言った。

「カオス、カオスって、先生が精神的に病んでいるのかと思いました。」


おおよそ、『カオス』と言う言葉の持つ意味はネガティブである。
混沌とか全く規則性のない混乱をイメージする。

ところが『カオス時系列解析』というのは、乱雑さの中に潜んでいる『法則』を計測された時系列データから見出すことなのである。
カオスというのは乱雑に見えて、その背後に規則性がきちんとあるのである。

そういったことが少し分かり始めてきて、この新しい解析法に期待が高まっている。

やらなければならないことが多くて多少疲れてはいるが、精神的に病んでいるわけではない。
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猿の惑星:創世記(ジェネシス)はモーションキャプチャーの傑作

2011-09-19 | 私と歩行分析
10月7日に公開される映画:猿の惑星:創世記(ジェネシス)はモーションキャプチャーの傑作である。
これは是非映画館で見たい。

YouTube
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Optitrack フルボディモーションキャプチャーシステム始動

2011-04-08 | 私と歩行分析
昨年度末に新たにOptitrack フルボディモーションキャプチャーシステムを購入した。

ViconやMotionAnalysis のシステムが数千万円するのに対して、Optitrackは基本システムの価格が1,207,500円とにわかには信じられない低価格である。
価格から想像するとそこそこの安かろう悪かろうというシステムのように思うが、デモで見た限りではかなり優れものである。
予算に少しゆとりがあったのでZebrisFDM-Tトレッドミル・システム と組み合わせて使ってみようと考えて購入した。
ZebrisFDM-Tトレッドミル・システム は足圧をモニターできるのだが、膝関節角度などの情報が得られないので何とかならないかと以前から考えていたのである。

新学期になりゼミ生が配属されたので、この新しいシステムを使い始めることにした。
保健福祉研究所でポスドクの野中君に手伝ってもらいながらセットアップして、新しいゼミ生にモデルになってもらい、試行錯誤しながら計測を行った。

2時間ほどいろいろとやってみたらかなりきれいなデータがあっさりと計測できた。
こんなに安価なのにリアルタイム計測ができるのである。
ARENAというモーションキャプチャーソフトウェアは非常に良くできていて、得られたデータにかぶせるスキンのキャラクターは明らかにMotionAnalysis のそれよりもハイクオリティである。パソコンの計測画面上でキャラクターが笑えるほどリアルに動くのである。

一昔前に1億円もした動作解析システムがまともに動かないという経験をした私にとっては非常に驚異的なシステムである。

これからもっともっと安価で高性能なシステムが登場することを願っている。


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Windows PCで”Kinect”をサポート

2011-01-20 | 私と歩行分析
Microsoftは現在、公式のKinect SDKとWindows PCで”Kinect”をサポートする為のドライバを準備しているらしい。

近い将来、サードパーティの開発者がWindowsで”Kinect”を利用するアプリを作成することができる見込みだ。

これでいよいよ格安で3次元動作解析が可能になりそうだ。


これ以外でもDesktop MoCap iPiという普通のデジタルカメラを使った驚異的低価格の製品が最近発表されている。
これは何と10万円前後でモーションキャプチャができるらしい。

すごい時代になってきた。
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『Kinect』ハッキングで「3次元撮影」

2010-12-12 | 私と歩行分析
マイクロソフトのゲームで3次元動作解析装置が安くなるということを書いたら、ネット上に既にそれにつながる取り組みが出ていた。

『Kinect』ハッキングで「3次元撮影」

この調子だと誰かが数万円の3次元動作解析システムをすぐに作りそうだ。
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世界ゲーム革命

2010-12-12 | 私と歩行分析
今夜のNHKスペシャルは「世界ゲーム革命 」と題して、最新のゲーム産業の動向について放送していた。
中でも革新的なのはマイクロソフトが開発した人間の身体そのものをインターフェースとする新たなゲーム機である。
この技術は最新の3次元動作解析システムの技術そのものである。
私にはなじみ深い赤外線を利用した仕組みが使われている。

先日、OptiTrackという100万円台のリアルタイム3次元動作解析システムに驚いた話を書いたが、このマイクロソフトのゲーム機が普及したらもっと安価な3次元動作解析システムが登場するのではないかという気がした。
たぶんテレビくらいの値段で売られる時代が来るのではないだろうか。
何しろ後進国もそのうちゲーム産業の市場になるだろうから、世界中でどれだけ売れるか想像もつかない。
たくさん売れれば単価は劇的に下がるはずだ。
同じ技術でモーションキャプチャーもできるのだから当然3次元動作解析システムもおもちゃのような値段になるだろう。
そのうち「昔は3次元動作解析システムが数千万円もしたんだよね。」という昔話がはやるようになるだろう。

Appleがパソコンの会社からiPhoneをきっかけに音楽や映像を配信する会社に変貌したように、マイクロソフトはそのうちWindowsよりもゲームで有名な会社になるのではないだろうか。
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第32回臨床歩行分析研究会定例会

2010-11-28 | 私と歩行分析
愛知県豊橋市の豊橋創造大学で第32回臨床歩行分析研究会定例会が行われた。
会長の金井 章先生とは古くからの知り合いで、今回も参加しないわけにはいかなかった。

昨日のプレカンファレンスには遅れて参加となったが、夜は懇親会でいろいろな方と情報交換を行った。

本日行った発表は以下の通りである。


足圧解析機能を有したトレッドミルによる歩行分析
酒井孝文 河村顕治
 超高齢社会を迎えた我が国において、健康寿命の増進は重要な課題である。人は加齢に伴う筋力低下、バランス能力の低下などにより歩行中の転倒事故が増大する。転倒予防を行う上で、加齢に伴う歩行の変化の抽出は重要な研究課題といえる。そのため加齢に伴う歩行の変化を調査するため、高齢者を対象とした、安全かつ信頼性の高い歩行分析を行う必要がある。そこで今回、圧分布の評価解析機能を有したトレッドミルを用いた歩行分析を行った。これは、一定の歩行速度を維持した状況で、連続した足圧データを計測することが可能である。さらに、手すり等の転倒防止装置や介助者の配置が十分に行え、転倒に対する危機管理が容易となった。
本研究では、歩行時の足圧データを計測し、健常若年者と健常高齢者の比較から加齢の影響を明らかにすることを目的に歩行分析を行った。


そのほかにもいろいろと収穫があった。

数千万円が一般的なリアルタイム3次元動作解析装置であるが、今回企業展示で株式会社スパイスが今までの常識を打ち破る低価格を実現したフルボディーモーションキャプチャーシステム『OptiTrack』を展示していた。6台のカメラ構成で基本システムが1,207,500円という信じられないような低価格である。
ポータブルシステムとして本気で購入を検討しようかと思った。

会場で吉備国際大学理学療法学科7期生の大田瑞穂君に声をかけられた。
来年の定例会の担当である誠愛リハビリテーション病院に勤務して動作解析を行っているとのことだった。
学生時代とはずいぶんイメージが変わって落ち着いた雰囲気になっており、成長ぶりが頼もしかった。

そのほかにもいろいろな人に会い、有意義な研究会であった。
金井先生、ご苦労様でした。
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手術が増えれば動作解析システムは安くなる

2009-10-18 | 私と歩行分析
第36回日本臨床バイオメカメカニクス学会では会長の愛媛大学教授 山本 晴康 先生が「足の外科」が専門で新人のころから歩行分析を行っておられたということから「歩行分析」が主題にも取り上げられていた。

そのため、動作解析の発表が多かったのだが、同時にACLや人工関節手術のナビゲーションの発表も多かった。
実は最新の3次元動作解析装置も手術用のナビゲーションシステムも本質的には全く同じものなのである。
3次元動作解析システムは通常4台以上の赤外線カメラと反射マーカーを使用するが、手術のナビゲーションシステムは2台のカメラを固定して空間のキャリブレーションを不要にしたものである。


今回の学会で、ハッとした場面は下記のランチョンセミナーの時に起こった。


座長 史野 根生 (大阪府立大学総合リハビリテーション学部)

LS3 下肢アライメント3次元評価法の開発と人工関節置換術への応用
古賀 良生 (新潟こばり病院)

古賀先生の講演では、現在使われているナビゲーションシステムはあまりにも高価すぎて有用性が低い。
それに対して古賀先生達が開発したシステムは安価で有用だということであった。

講演が終わって質疑応答の時に、ナビゲーション手術を実際に行っておられる整形外科の先生が猛然と反論を行った。

曰く、
「現在の手術ナビゲーションシステムを高価すぎるからと言って遠ざけてしまうのは、将来のためにマイナスである。
昨年1年間でナビゲーションシステムが一番多く導入されたのは中国だ。
このままでは経済発展が著しく固定式電話を飛ばして携帯電話が導入された中国に、手術システムで日本は後れをとるかもしれない。
車のナビだって導入当初は役に立たないと言われた。
今はなくてはならないツールになっている。
手術ナビゲーションシステムを全く役に立たないもののように断言するのは看過できない。」

一瞬、会場は静まりかえってしまった。
座長の史野先生が持ち前のユーモアでその場の空気をほぐしたが、このやりとりは大いに考えさせられるものであった。


現状では3次元動作解析装置も手術用のナビゲーションシステムも数千万はする高価なものである。
その原因は考えてみるとユーザーの数が少ないのが一番の原因だろう。
携帯電話やパソコンのように普及すればあっという間に値段は10分の1、100分の1になるはずである。

私が今回学会に持参したMacBook Airは、もし10年前に市場に出たなら価格は数百万円はしたと思われる。
ところが実際にはSSD内蔵の上位機で20万円しない。

ユーザーが多くなれば性能も飛躍的によくなり、価格も劇的に下がるのである。

もし、将来整形外科や脳外科の病院には手術用ナビゲーションシステムは必須という状況になったらどうだろうか。
実際に手術をしていると目で直視できないところの手術は困難を極める。
そのためX線透視装置を使うのだが被爆が大問題となる。

ちょっとした手術でもナビゲーションが気楽に使えるようになれば、その有用性は計り知れない。
車のナビと一緒で、必須のシステムになるだろう。
そうすれば値段は一気に安くなるはずである。
性能も飛躍的に向上するだろう。
良いことだらけである。

もともと同じ装置を使っているのだから、3次元動作解析システムも安くなるはずである。

心配なのは日本がその流れに取り残されそうなことである。

きっと、中国や韓国メーカーが、そのような時代のリーディングカンパニーになっているような予感がする。


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妄想はまだまだ続く。

もし、車に動作解析システムが装備されるようになったらどうだろう。
車のヘッドライトは動作解析にほどよい位置に二つついている。
これを利用して、動く人を認識する衝突回避システムを作るのである。
あるいはさらに上を行って、車自体が地形を認識して自動走行するシステムを作ればよい。

もし車に動作解析システムが装着されるようになったら,きっと3次元動作解析システムの値段は数十万円まで下がると思う。

そうすれば今度は、

「車が売れれば動作解析システムは安くなる」!!
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筋骨格モデル解析表示ソフト(無料)

2008-06-08 | 私と歩行分析
リハ学会で労災リハ工学センターの元田先生からついに筋骨格モデル解析表示ソフトをホームページからダウンロードできるようにしたとの情報を得た。

http://www.lwc-eirec.go.jp/seika/msmodel/msmodelsoft.html

このソフトは学生や歩行分析に興味を持つ人が利用するにはうってつけのソフトなので是非多くの人に活用して欲しい。

実は臨床歩行分析研究会ではこれまでに行ったセミナーなどで膨大なデータを蓄積しており、今回の運営委員会でもそれを一般に広く公表できないかという議論があった。
ところがデータ収集時に公開のための同意を得ていないので不可能という結論になってしまった。

私は以前から歩行分析の成果が一般の人でも気軽に活用できるようにならないかと考えていたのだが、労災リハ工学センターの試みがその先駆けとなりそうに思う。


参考のために、歩行分析研究会ニューズレターに寄稿した随想を転載する。

「グーグル時代の歩行分析」
吉備国際大学保健科学部理学療法学科
河村顕治

 私が歩行分析に初めて触れたのは1987年4月に新しくできた吉備高原医療リハビリテーションセンターに赴任した時です。そこにはアニマ社製の床反力計測システムが導入されており、床反力計の上に坂道を設置できるようになっていました。坂道歩行の研究を行うために1989年に第2回歩行分析セミナーに参加させていただきました。その後歩行分析がきっかけで1994年にアメリカ東海岸で留学生活を送ることになりました。この時経験したのはMotion Analysis社製の3次元動作解析システムでした。当時アメリカでは情報スーパーハイウェー構想がクリントン政権の最重要政策の一つとして打ち出され、ゴア副大統領が20世紀中に全米の全ての学校、図書館、病院を新しいネットワークに組み込むと表明していました。私が所属した研究室はバイオメカニクスの研究室でしたが、別名コンピューターラボとも呼ばれているほど最先端の技術を導入していました。そこでモザイク(Mosaic)というWebブラウザーの初期モデルを初めて見たのです。
 それから13年、2007年3月に私は勤務校において、文科省の補助金を得てリアルタイム3次元動作解析システムMAC3Dを導入しました。最新のシステムは高性能になり、リアルタイム解析も可能になり動作解析が新たなステージに入ったことを感じさせられます。一方、インターネットの方は初期の頃こそがらくた情報ばかりと言われていたのが、今では生活に欠かせないツールになりました。その結果、ヤフーやグーグルのような新しいIT企業が製造業のトヨタと並ぶ時代になったのです。つい先日グーグルの追い上げに危機感を抱いたマイクロソフトによる総額446億ドル(約4兆7千億円)でのヤフーの買収提案がありました。グーグルは巨額の利益をあげていますが、利用者にサービスを提供するのに使用料を取っているわけではありません。検索結果の表示画面や提携したウェブサイト上に広告を載せることで、収益の大部分をあげています。その結果、高品質で有用なサービスが無料で提供されているわけです。またグーグルは「衆人の知恵の集合」を目指していることがその特徴とされています。
 このような時代に、3次元動作解析システムはどうでしょうか。高性能になりましたが、価格は依然として高価です。未だにVICONやMAC3Dを購入できるのは大学で新規に学部を設置するとか、新しくリハセンターを作る時くらいです。昔も今も動作解析をできるかどうかは3次元動作解析システムがあるところに所属しているかどうかといういわば運次第という状況です。これが、せめて努力して科研費の基盤研究Bクラスを当てたら購入できる位までは供給側の知恵と工夫で何とかならないものかと思います。
 動作解析のハードは仕方がないとして、グーグルが提供しているサービスのように、解析結果を幅広く無料で提供することはできないものでしょうか。私がイメージしているのはGoogle Earthで、衛星画像や航空写真を撮影するハードがなくても今や無料で簡単に入手できる時代です。動作解析のデータやそれを基にした種々のアニメーション動画などが豊富に無料で入手できて利用できる時代は来ないのでしょうか。動作解析の成果は、研究のみに役立つのではなく、教育やエンターテイメントなど幅広く利用価値があり、もっと広まれば、これまで想像もしていなかったような利用方法が出てくることでしょう。Web 2.0時代にふさわしい動作解析の到来が待ち遠しい今日この頃です。





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私と歩行分析 15

2008-02-07 | 私と歩行分析
MAC3Dを導入して約1年間にわたって使用してきた。
途中プロジェクトファイルの不具合で計測が強制終了したり、Noraxonの筋電計のレシーバーの初期不良などと言うトラブルもあったが本質的にどうしようもないと言うほどの問題は発生していない。

それよりも計測結果をそのままパソコン画面上でリアルタイムに提示できるという機能は歩行分析を新しいステージに引き上げたと感じさせる。
なぜなら床反力ベクトルと関節中心との位置関係がすぐに分かるし、それより何より見ていて楽しいからである。

本学ではろくに操作ができないうちからオープンキャンパスや来客にこのリアルタイム3次元動作解析のデモをどんどん行っていった。
そうすることによって我々も操作練習ができるし、来客も喜んでくれる。
大金を支払ったわけだが、大学のPRにはかなり貢献したのではないかと思う。

これからはこのシステムを活用して、教育と研究面で成果を残して行かなくてはならない。

幸い、外部の大学や企業からも共同研究の提案が入ってきており、少しずつ活用できはじめているところである。

今後の課題は、大学内にMAC3Dを操作できるチームを作り上げ、効率的に計測が行える体制を確立することである。
その一番良い見本は江原先生の作ったVICONクラブではないかと思う。
VICONクラブではクラブ活動として動作解析を行い、先輩から後輩にうまく操作テクニックが伝わっていくと聞いている。
このような機能的なシステムを確立できるかどうかが、高価なシステムが生きるかどうかのポイントだと思う。

これを持って「私と歩行分析」のシリーズは一旦終了である。
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私と歩行分析 14

2008-02-06 | 私と歩行分析
実際にMotionAnalysis社製MAC3Dシステムを導入してみて、アメリカに留学中の時使っていたシステムとそっくりだと言うことに気付いた。
以前アメリカでMotionAnalysisになじんでいたのでMAC3Dを入れたわけではないのである。

当初、機器選定を行う時に、当然真っ先にVICONを考えた。
一度エリートで懲りているので機器の選定は慎重にならざるを得ない。

判定のポイントは
1.性能
2.アフターケア
3.価格
この3点である。

性能についていろいろな人に意見を聞いて回った。
すると意外なことに、メカに詳しい工学系の人が口をそろえてVICONよりもMAC3Dの方が優れているという。
詳細に調べてみるとVICONのNEXSUSが登場する前の段階では確かにMAC3Dの方が優れているように思えた。

アフターケアについても評判を聞いて回った。
MAC3Dを扱っているNACさんは以前はVICONを扱っており、評判は良かった。

価格についてもMAC3Dの方が割引が大きかった。

結局詳細に検討した結果、MAC3Dの方が優れているという結論になったのだった。

VICONの名誉のために付け加えると、その後、VICONには新型が登場し、性能的には五分五分だと思う。
あるいはわずかにリードしているかもしれない。
しかし、VICONに先行された分、MAC3Dも次のバージョンアップではさらに進化すると思われる。

私にとってみれば、性能の多少の差よりは、実際にそれが使いこなせることの方がはるかに重要である。

パソコンでも世界中で全ての人がWindowsを使っても、自分のMacが不自由なく使えればそれでよい。

ちなみにMacユーザーだからMAC3Dにしたわけではない。
誤解されると困るがMAC3Dは現状ではWindows Xpで動くシステムである。
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私と歩行分析 13

2008-02-05 | 私と歩行分析
5.吉備国際大学現在(平成19年3月~)

1回目のオープン・リサーチ・センター整備事業補助金申請失敗を受けて我々が利用した補助金は私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助というもので学術研究の振興、高等教育の高度化を推進するため、私立大学等の研究施設、大型の教育研究装置の整備費について文科省が補助するものである。
このうち研究装置についての補助金には下記のような縛りがある。

1個又は1組の価格が4,000万円以上のものであること。
ただし,設備を単に数個集めて4,000万円以上にしても1組とはみなさないので留意すること。

当該装置を設置する建物その他の施設に関し,新増改築工事,改修工事又は電気工事,ガス工事,給排水工事その他の付帯工事(以下「施設工事」という。)を必要とするものであること。

補助率は,装置の整備に要する経費の1/2以内とする。(保守料,消耗品費及びソフトウェアの整備に係る経費等は補助対象外。)

特に施設工事を必要とするものという制限があるので、オープン・リサーチ・センターを建築する時なら問題ないが、現在の3次元動作解析システムを更新する場合には何らかの工事が必要となった。
そこで、少し贅沢ではあるが、床反力計をそれまでの2枚のシステムから床工事を行って4枚に増やすことにした。

結局補助金は獲得できることになり、平成19年3月に下記のシステムが導入された。

MotionAnalysis社製MAC3D(カメラ8台)
Kistler床反力計4枚
ビデオカメラ3台
Noraxon無線式動作筋電計(16チャンネル)
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私と歩行分析 12

2008-02-04 | 私と歩行分析
1年近くかけて保健科学研究科の教員全員の研究内容を無理矢理まとめ上げて、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業(オープン・リサーチ・センター整備事業)に応募する申請書を書き上げた。
この補助金は半額助成であり、予算の半分は法人から出してもらわなくてはならず、最終的には理事長の許可が必要である。
私は学長始め主だったメンバーと共に緊張しつつも理事長面談に臨んだ。
平成17年年末のことである。
これでだめだと言われればそれまでで、これまでの努力は全て無駄になる。
しかし、実際に理事長に面談すると意外にも好意的で、逆に是非頑張って下さいと励まされてしまった。
そうしていよいよ平成18年1月に文科省に申請書を提出したのであった。

あとは採択の返事を待つばかりと思っていたが、4月6日に不採択の連絡を受けたのであった。
かなりショックだったが、へこたれていても何の解決にもならず、とりあえず3次元動作解析装置などの大型研究機器だけでも、文科省の研究装置・設備を対象とした別補助金に申請することになった。
オープン・リサーチ・センター整備事業に再度挑戦しても採択される見込みがあるかどうか分からなかったからである。
その上で、改めて次年度の文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業(オープン・リサーチ・センター整備事業)に応募する事にしたのである。

その結果、平成19年2月には3次元動作解析装置などの補助金の採択通知が届き、5月1日にオープン・リサーチ・センター整備事業の採択通知が届いた。

こうして念願の3次元動作解析システムの更新が平成19年3月に行われたのである。

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私と歩行分析 11

2008-02-03 | 私と歩行分析
3次元動作解析システムを更新しなければならないとは考えていた。
しかし同時にそれは不可能であると言うことも分かっていた。
何故なら更新のために必要な予算は控えめに見ても数千万円であり、私がいくら努力して研究費をかき集めても数百万円だったからである。
私がこれまで獲得した一番大きな研究費は科研費基盤研究Bであるが、これは上限が数年計画で総計2000万円である。
2000万円全部出せば最低限のシステムは組めるかもしれないが、2000万円で初年度に3次元動作解析システムを導入してあとは予算無しで研究を行うという研究計画は100%間違いなく落ちるに決まっている。
機器の購入が目的の研究計画とみなされるからである。
科研費で購入するとしたら基盤研究A以上の大型研究費を取るしかない。
とてもそんなことができそうには思えなかった。

私が見聞きした範囲では3次元動作解析システムを導入するのは学部を新設するとか、リハセンターを新規に作るとかの場合に設置経費で導入するという場合だけだった。
もう諦めるしかないと本気で思っていたのである。


ところが、事態は思わぬ方向へ流れていった。

少子化で入学者の減少が続く中、全国どこの私立大学においても生き残りをかけた大学改革の動きは盛んである。
学生は減る一方なのに大学はどんどん増えている。
文部科学省は大学設置の基準を緩くする一方で、大学のクオリティーチェックを始めたのである。
2002年の学校教育法改正に伴い、2004年度以降わが国の大学は、文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価を7年以内の周期で受けることが義務づけられた(認証評価制度)。これを受けて、大学基準協会が2004年度に機関別認証評価機関としての認証を受け、わが国ではじめての認証評価を行うとともにその結果を公表するようになった。
吉備国際大学においても生き残りのために大学をあげて報告書を作成し、大学基準協会の認証評価を受けたのである。

その結果、何とか認証を受けることはできたのだが、多くの改善勧告と指摘事項を受けることになったのである。
その中の一つが、保健科学研究科につけられた
「設置後10年を経過して研究機器の老朽化が問題である。」
と言う指摘だったのである。

吉備国際大学では次の基準協会の評価を受けるのに備えて、新学長の下、教育・研究改革推進中核センターという組織を立ち上げ、私は何故か研究部門の副部門長に任命されてしまった。
これが3年前の出来事である。

それからが大変だった。
基準協会の指摘もあり、研究機器の更新をしなくてはならないが、大学の一部学科で定員割れが起こっているような状況で大学全体の予算も厳しいものがあり、法人本部が予算を新規につけてくれるわけがない。
今回は細胞培養などの基礎実験室の整備なども問題になっている。
もともと3次元動作解析システムの更新すらできないのにどうやって保健科学研究科全体の研究機器・実験室の整備ができるというのか。

会議を開いていろいろ検討した結果、これらの問題を一気に解決する方法として、文科省が行っている補助金の申請をするしかないと言うことになった。
いろいろ検討して一番可能性がありそうなのが、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業(オープン・リサーチ・センター整備事業)に応募するというものだった。
この補助金は、研究所などの建物を建てる予算も補助の対象になる上、研究機器、研究年間予算など全て対象として5年間半額が補助される仕組みになっていた。
これなら、基礎の実験室も整備できるし、3次元動作解析システムなども新規に導入できるし、地域の健康増進の拠点としても使うことができる。

戦略として大学院保健科学研究科=保健福祉研究所=オープンリサーチセンターという形を取ることにした。
保健福祉研究所というのは吉備国際大学に設置はされているものの規定と年間220万円の予算があるだけで、建物としての実態のない組織であった。これを、補助金申請の母体と位置づけたのである。


問題解決の戦略は決まったが、それからが苦難の連続であった。
結局私一人で申請書を書かなくてはならなかったからである。
容易に想像できると思うが、いろいろな立場の人がいろいろな意見を言ってくれるが、実際に作業を手伝ってくれる人はほとんどいないからである。
中核センターの研究部門副部門長という辞令をよくわからぬまま受け取ってしまったがために、この大変な作業を行わなくてはならなくなったのである。

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私と歩行分析 10

2008-02-02 | 私と歩行分析
その後歩行分析に関しては鳴かず飛ばずという状況であったが、平成15年4月に畠中先生、中俣先生が鈴鹿医療科学大学へ転出していった。こうなると誰もエリートを使う人がいなくなり、オープンキャンパスの時に設置した部屋を見てもらうだけになってしまった。

ちょうどこの頃、東大のベンチャー企業から3DマッスルシミュレータARMOがリリースされ、私はすぐにこれを購入した。
それまで名古屋の労災リハ工学センターの元田先生、鈴木先生に筋張力シミュレーションをお願いしていたのが自力でできるようになると思ってのことである。
3DマッスルシミュレータARMOは3次元動作解析装置で計測したデータをDIFFという臨床歩行分析研究会が提唱するフォーマットに書き出して、それを読み込むだけで筋張力の計算ができ、アニメーションで動画が見られるという画期的なソフトだった。

こうなるとエリートで何とかデータを計測する必要性が出てきた。

そうこうしているうちに、兵庫リハセンターでエリートの計測をしていたPTの人が、吉備国際大学には同じエリートがあるからとして大学院修士課程に入学してきた。
ますますエリートを使わなくてはならない状況になってきた。

それで意を決して、苦労を承知でエリートを使い始めたのだが、やはりうまく計測ができるときとだめなときがあり、なぜうまく計測できないのかという原因がさっぱり分からないと言う状況が続いた。
これではせっかくこのエリートを目的に本学大学院に来てくれた人に申し訳ない。
大学院修士課程は2年間であるから何とか計測して修論を完成させなければならない。

最初は関連校の岡山理科大学のVICONを使わせてもらったりしてデータを取った。
次に同じエリートが入っている岡山県南部健康作りセンターに行ってデータを取らせてもらおうとした。
ところが、岡山県南部健康作りセンターのエリートも壊れていたのである。

この頃になるとそれまでイタリアからエリートを輸入販売していた商社丸紅系の業者もエリートの取り扱いをやめており、別の業者がエリートの販売権を引き継いでいた。
しかし、もう業者はまったく頼りにできないような状況だった。
エリートに関しては本体の老朽化と、ソフトが全くバージョンアップせずに不具合を残したままであると言うことと、サポートすべき業者がさじを投げたと言うことで完全に終わっていた。

ちょうどその様な時に、ブラジルのサンパウロで国際学会があり、私も参加した。
平成17年4月のことである。
この学会にイタリアBTS社も機器展示を出しており、新しい3次元動作解析システムを展示していた。
そこで分かったのはエリートシステムは欠陥商品であり、BTS社はエリートをバージョンアップすることなく新規に全く別のシステムを作っていると言うことであった。
その時、展示していたBTS社の人は、日本の市場が失われかけている事を非常に憂えていて、必ず特別価格で新しいシステムを提供すると約束したが、日本に帰ってイタリアと連絡を取って提示された金額は全然安くなかった。
当時からユーロは円に対して随分高くなっており、イタリアで安いと思う金額も日本円に直すと全然安くなかったのである。

このようなことがあって、新しい3次元動作解析システムをいかにして導入するかと言うことが問題になってきたのである。

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