河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

産官学連携について

2009-01-29 | 保健福祉研究所
先日、大学所在市の市役所の方とお話しする機会があり少し感じることがあった。

私はこれまでリハ器機を開発するという研究を行ってきた経過から自然と地元のリハメーカーとの産学連携が成立した。
今ではある程度良好な関係が築けている。
しかし、ここに至るまではいろいろと行き違いもあり数々のトラブルも経験した。
それでも何とかやってこられたのは双方にメリットがあり、その時々で無理のない範囲でお互い譲り合ってきたからだと思う。

一方、官との連携であるが、これまで依頼されて講演など行ってきたが、いつも一方的に呼ばれて講演してはいさよならという形であった。
僅かな講演謝金はいただくが、あまりこちらにとってメリットはなかった。
一時期健康作りの講演をするために岡山県下のいろいろな市町村から声をかけられてあちこち回ったことがあったが、ひたすら消耗した。
県北に行くと一日がつぶれた。
そのうちあるところから極めていい加減な講演依頼があり、それにクレームのメールを送ったらそれ以来講演要請はぴたりと止まった。
こちらは多少なりとも地域貢献ができればと思って頑張っているわけで、行政のスケジュール消化のための便利な講師ではないのだ。

昨年行った保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室は私にとっては初めての官学連携成功のモデルケースであった。
こちらの負担は大きかったが、貴重な研究のためのデータが数多く得られた。
また、参加者の方にも喜んで頂けた。

しかし、それがうまく行ったからと言って介護予防事業を大学で引き受けて大々的に行ってくれと言われてもそんなことできるはずがない。
冷静になって考えると、これまでお互いに連携したことがないので相手の事情がまるで分からないのだろうと思う。
私が産学連携で試行錯誤してきたようなことを、少しずつ官学連携事業でも試行錯誤して、相手の事情と求めているものを理解することが必要なのだと思う。

外部からの大学に対する理解で一番困るのは、授業がないときは大学の教員は暇なはずだというものである。

例えば今現在は後期試験期間であるが、試験が終われば採点しなければならないし、その結果を学内LANで登録しなければならない。落第者がいれば再試験もしなければならない。
また、この時期は来学期に向けてシラバスを用意しなければならない。
これが学部だけでなく、大学院修士、博士それに通信制の大学院の物も新しく作らなくてはならない。
まだまだ入試は続くので試験問題も作らなくてはならない。
大学院生は卒業のため修士論文・博士論文を提出しているのでそれを審査しなければならない。
後期試験が終わったら、学部生のゼミで卒論のためのデータを取らなければならない。
2月の頭には通信制大学院生のスクーリングがある。
修士1年生はそろそろ研究に着手するので倫理審査のための準備も必要だ。
今年からは人事評価が始まったので評価表を提出しなければならない。
大学の学内の仕事だけでもすぐに思いつくのはこれくらいある。

さらに、研究の仕事では
2月上旬に共同研究報告会のための3ページの抄録を提出
2月下旬アメリカへ出張してORSで学会発表
アメリカ出張中に共同研究報告会が行われるため、代理発表者のために発表スライドと原稿を用意しなければならない
3月上旬に九州延岡の関連校で高梁学園学術研究コンファレンスで発表

さらに、学会の仕事では編集委員をしているので
新規担当論文が複数
2月上旬までに昨年一年間の掲載論文を全て審査して点数を付ける

さらにさらに一番大変な大仕事が、研究所の補助金の締めのために予算をぴったり使い切るという神業を3月には成し遂げなければならない。

こうしたルーチンワークの合間にオリジナルな学術論文を書かねば生き残れない。

要するに寝ても覚めても仕事の山と言うことである。

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第4回保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室

2008-12-18 | 保健福祉研究所
本日、保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室の最終回が無事終了した。
おおむね参加された高齢者の方には好評で、大きな事故もなく事業を終えることができほっとした。

今回は前回に引き続き、佐藤講師が指導しているゼミ生とともに運動指導を行ってくれた。
手指マッサージあり、壁体操あり、歩行練習ありで盛りだくさんの内容で参加者には有意義だったのではないかと思われる。

参加してくださった高梁市老人クラブの皆様、ありがとうございました。
また来年も是非来てください。

企画してくださった高梁市高齢福祉課の皆様、ありがとうございました。
また来年もよろしくお願いいたします。

それからこの企画を実施してくれた研究所のスタッフの皆さん、どうもお疲れ様でした。
手伝ってくれた学生、院生の皆さん、どうもありがとう。

来年度は夏休みに第1回目を行って、学部学生にも是非体験してもらいたいと考えている。
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第3回保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室

2008-11-27 | 保健福祉研究所
月に一度行っている保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室も本日無事に第3回目を終えることができた。
今回は佐藤講師を中心に、具体的な健康運動指導を行った。
また、冒頭でこれまでの計測結果から将来の骨折リスクについてフィードバックを行った。
とりあえず当初の計画では来月最後の教室を開催して、本年度は終了となる。
最初はどうなることかと心配だったが、参加者の方の評判も上々で、少しほっとした。
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第2回リハビリテーション高度専門職業人養成公開講座

2008-10-24 | 保健福祉研究所
保健福祉研究所の公開講座に位置づけて、卒業生の花岡正敬君にピラティスの講演と実技指導を行ってもらった。
かなりの人気が出そうで、むしろ参加案内は控えめに行ったのだが、夜7時の開講にもかかわらず66人の参加があった。
保健福祉研究所が有効活用できて非常に喜ばしい。
在校生にとって、社会で活躍する先輩の講義は格別だと思う。
こういう機会はもっとあっても良いのではないかと思う。
花岡君の講演は初めて聴いたが、人の興味を引きつけるという点では若いだけあってなかなかのものであった。
今回は本当にありがとう。
また、アシスタントを務めてくれた久世君もご苦労様でした。
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第2回高梁市老人クラブ健康教室

2008-10-23 | 保健福祉研究所
保健福祉研究所において第2回高梁市老人クラブ健康教室を開催した。
初めての時はかなり緊張したが、2回目になると主催する我々も参加する老人クラブの方にも余裕が出てきた。
参加する方は知識が得られ、こちらは貴重なデータが得られ、双方に利益のある取り組みである。

今後の予定は以下の通り。

第3回 平成20年11月27日(木)13:30~15:30
記述式の調査
前回調査による転倒リスク判定結果のフィードバック
体操指導

第4回 平成20年12月18日(木)13:30~15:30
講話
体操指導
アンケート(感想)

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研究所の視察

2008-09-26 | 保健福祉研究所
今週初めにいきなり文科省から大学の視察に来るので、保健福祉研究所に待機して説明して欲しいと言われた。
何のために文科省から視察に来たのか未だ持って不明であるが、おろそかにはできないので今日午後、私と所長の加納先生と2人で言われたとおりに待機して、説明をさせていただいた。

今週はほとんど毎日のように研究所の見学があった。
いつもはポスドクの井上君に任せられるが、今回のようにえらい人が来られる場合はやはり責任者が説明しなければならない。

これからもこういった視察はたびたびあると思うが、あまり頻回にあると消耗してしまう。

明日はリハ学会の臨時編集委員会で朝一番に東京へ飛ぶ。
もう体はがたがたである。
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第1回高梁市老人クラブ健康教室

2008-09-25 | 保健福祉研究所
本日、第1回高梁市老人クラブ健康教室が保健福祉研究所で行われた。
参加者は当初32人とのことだったが、3名が今回のみ忙しくて欠席、他3名が参加取り消しで別の方を代わりに参加してもらったとのことで合計29人であった。
次回は3人増えて32人の予定である。
今回は身体計測、体力テストが目的で、下記項目の計測を行った。

 問診、血圧、身長、体重計測、握力
 アニマ重心動揺計、足趾筋力、骨密度計測(CM-100)
 体組成計測(PhysionXP)、足部デジタルカメラ撮影
 筋力計測(腹筋、背筋、膝伸展筋力)
 歩行速度(5m)
 トレッドミル足圧計測 (ZebrisFDM-T)

このうち足趾筋力は発注していた器械が間に合わずに次回に繰り越しになった。
3時間の予定であったが、手際よくみんなが協力してくれたおかげで、約2時間でほぼ終了した。

やる前はいろいろと心配したが、やってみるとなかなか良い雰囲気で、参加者の方も納得して帰っていただけた。

この計測データは貴重であり、これから大学院生を中心にまとめ上げさせて、論文にまで持っていく予定である。

次回は1ヶ月後の10月23日(木)である。
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オープンキャンパスほか

2008-09-23 | 保健福祉研究所
本日はオープンキャンパスのため朝一番から出校した。

雑用を少し片付けた後、高梁駅まで名古屋大学のO先生を迎えに行った。
数週間前に連絡があり、私に会って研究がらみでいろいろ話を聞きたいと言うことだったのだが、あいにく先方の予定と私の予定をすり合わせることができず、オープンキャンパスの合間なら会えるということになったのである。

まず保健福祉研究所を見学していただいて、あわただしい昼食の後、オープンキャンパスのデモの準備をしながらいろいろと話をした。
今日はたまたまnacの古田さんがデモの応援に来てくださったので、3次元動作解析システムMAC3Dの詳しい説明も聞けるので好都合であった。

夕方には保健福祉研究所で第1回目のリハビリテーション高度専門職業人養成公開講座も開催された。
卒業生も大勢集まってくれて盛会であった。

朝から夕方までほとんど休むこともなく、あわただしい一日であった。

それでも遠くから大勢の人が大学まで来てくれて、ありがたいことであると思う。
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保健福祉研究所案内

2008-09-20 | 保健福祉研究所
今日は土曜日で大学は休日であるが、加計グループ幹部会の研究所視察があるということで午後から大学に出てきた。
午前中は愛媛の実家に母親の膝を診に帰っていたので、車でとんぼ返りである。
視察そのものはほんの数十分で、待機している間に、来週木曜日に行う『保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室』のための案内のサインをパソコンで作ってプリントした。
今日は1日で車で400km近く走ることになる。
大事なこととはいえ全くエネルギーの無駄使いである。
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保健福祉研究所と大学、大学院との関係5

2008-09-16 | 保健福祉研究所
2005年4月 吉備国際大学教育開発・研究推進中核センター 研究推進部門 副部門長の辞令を受け取った。
副学長の古田部門長の下で、学内の研究推進のための体制を整えていくことになった。

その職務として補助金に申請し保健福祉研究所を建設して研究のハード面を整備した。

その一方で、近年外部から求められている研究における規定を整備していった。

吉備国際大学保健福祉研究所規程
平成11年4月1日から施行

吉備国際大学保健福祉研究所運営委員会細則
平成11年4月1日から施行

吉備国際大学研究規範
平成19年12月1日

吉備国際大学「人を対象とする研究」倫理規程
平成19年4月1日から施行

吉備国際大学倫理審査委員会規程
平成17年4月1日から施行

吉備国際大学における動物実験に関する基本指針
平成18年4月1日から適用

吉備国際大学動物実験委員会規程
平成18年10月1日から施行

吉備国際大学における動物飼育保管施設および動物実験施設管理運営規程
平成19年4月1日から施行

吉備国際大学組換えDNA実験安全管理規程
平成19年10月1日から施行


こうして、現在では基礎から臨床に関わる研究環境がハード、ソフト両面に渡って整備されたのである。
各規定の施行年度を見てみるとすぐに気付くが、親規定が子規定よりも後から整備されたりしており、いかに混乱していたかと言うことがよくわかる。
私自身、大学の研究にかかわる規定をこれほど細かく整備しなければならないということは、現在の役職に就くまでは全く認識していなかった。

例えば動物実験をして論文を発表しようとしたら、まず国が求めている規格を満たす動物飼育施設が必要になる。
さらに、学内に整備された動物実験委員会にかけて許可をもらわなくてはならない。
さらに、実験を行う前には動物飼育保管施設および動物実験施設管理運営規程に定められた教育訓練を受けなければいけない。

こうした一連の流れをきちんと押さえていなければ論文発表ができないというのが現在の状況なのである。

もちろん、このブログにも再三記載したように、人を扱う研究を行うには倫理審査委員会の許可がいる。
学内に倫理審査委員会がないと言うことは、研究以前に落第ということになる。

こうしてみるとこれまで約3年の間にずいぶん大きな仕事をしてきたように感じる。


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保健福祉研究所と大学、大学院との関係4

2008-09-10 | 保健福祉研究所
保健福祉研究所が建設されたことから、今年度から地域の高齢者を対象とした健康教室を開催することとなった。
直接のきっかけは高梁市高齢福祉課から依頼があったからであるが、もともと計画の一部として検討していたものである。
この事業は研究所を利用した地域貢献につながるだけでなく、研究として位置づけて、その中に大学院生、ポスドクなどを参加させることで若手研究者の養成にもつながる。
健康教室は全国到る所で行われているが、保健福祉研究所ではトレッドミル足圧計測 (ZebrisFDM-T)など、よそにはない高価な解析機器を利用して、ひと味違ったものにしたいと考えている。
将来的には単に健康指導にとどまらず、学会発表、論文投稿などを行い成果を広く公開していく予定である。


保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室

1. 対象 
   高梁地域老人クラブ会員で、体力づくりに関心がある人
65歳以上15人、75歳以上15人

2. 送迎
 高梁市マイクロバス

3. 日程
第1回 平成20年9月25日(木)13:30~16:30
身体計測、体力テスト
 問診、血圧、身長、体重計測、握力
 アニマ重心動揺計、足趾筋力、骨密度計測(CM-100)
 体組成計測(PhysionXP)、足部デジタルカメラ撮影
 筋力計測(腹筋、背筋、膝伸展筋力)
 歩行速度(5m)
 トレッドミル足圧計測 (ZebrisFDM-T)
 SF-36、老研式活動能力指標

第2回 平成20年10月23日(木)13:30~15:30
講話
体操指導

第3回 平成20年11月27日(木)13:30~15:30
講話
体操指導

第4回 平成20年12月18日(木)13:30~15:30
講話
体操指導
アンケート

4. 将来の見通し
今回の参加者にはできるだけ毎年参加していただき、身体計測、体力テストのデータを基礎資料として蓄積していく。

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保健福祉研究所と大学、大学院との関係3

2008-09-09 | 保健福祉研究所
文科省に提出したオープンリサーチセンター構想調書の内容を受けて、吉備国際大学保健科学部学生、保健科学研究科大学院生、卒業生などリハビリテーションに関わる人材に広く呼びかけて、ORCを活用した人材育成のための『リハビリテーション高度専門職業人養成公開講座』を開催することになった。
これまでに本学卒業生からも大学において講演会や講習会を開いて欲しいという要望が寄せられており、研究所が稼働した事によりこれに応えることができるようになった。
大学にとっても卒業生と密に連携が取れると言うことは臨床実習を抱える保健科学部にとっては非常に意味がある。
今後、学内の教員にも順次講師を依頼する予定である。

第1回 平成20年9月23日(火)理学卒業生中心
理学療法における手技療法の第一人者である松永秀俊(まつながひでとし)先生をお招きし、「触診」というテーマでご講演いただく。
日時:平成20年9月23日(火)祝日15:00~17:00
場所:健福祉研究所(15号館)1階

第2回 平成20年10月24日(金)花岡正敬君(ピラティスの理論)
日時:平成20年10月24日(金)19:00~21:00
場所:健福祉研究所(15号館)1階

第3回 平成20年11月(未定)
第4回 平成20年12月(未定)

(参考:ORC健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究構想調書)
3.人材育成計画
1)研究者の養成
 各プロジェクト研究を通じて保健・医療・福祉分野における若手研究者育成を図る。そのために、次のような人材育成計画を持つ。
1.研究プロジェクトに共同研究者として積極的にPD、RAなどを参加させて、幅広く人材養成を行う。
2.本学保健科学研究科大学院生を研究プロジェクトに参加させることによって、若手研究者の養成を図る。
3.病院、施設、リハビリ機器メーカー、福祉機器メーカーや製薬会社など関連する企業の研究者を積極的に受け入れて広範な産学連携を展開するとともに、研究者養成を図る。これまでに企業との共同研究は多数行ってきており、連携は容易である。
2)高度専門職業人養成型
 保健科学研究科に所属する理学療法士・作業療法士・看護師の資格を有する大学院生においては各プロジェクト研究を通じて高度な専門知識を有する職業人として育成を図る。
 本学が設置されている高梁市を中心として地域の健康づくりのための計画策定や、その後の実践活動、評価に協力できることは多い。専門職(保健師・栄養士等)や行政関係者に研究所の利用を開放し、共同研究を進める中で地域でのリーダー的な人材の養成を図る。

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保健福祉研究所と大学、大学院との関係2

2008-09-04 | 保健福祉研究所
文部科学省が実施している私立大学学術研究高度化推進事業の一つであるオープン・リサーチ・センター整備事業に平成19年度採択されて5年間に渡る『健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究』がスタートした。
オープン・リサーチ・センター整備事業では研究所を建設する予算も半額補助される。
2007年6月20日、保健福祉研究所の起工式が行われた。竣工が2008年3月なので平成19年度はハードとしての研究所がない状態での5年間の補助事業の初年度となった。

研究所がないと言うことはデメリットでもあるが経費の面ではメリットもある。年間数百万円と予想される光熱費、清掃費などの経費が生じないという点である。
研究費としては研究員の個人研究費や研究科予算をかき集めて、それと同額の補助金が期待できるため年間総額2500万円の予算を計上した。この中から上述の初年度節約できる経費を利用してZebrisFDM-Tトレッドミル・システム(トレッドミル式歩行解析装置)を導入した。これはドイツ製で、全国でも初めての導入となり、研究所の目玉の一つと位置づけた。

平成19年度には補助金を利用してリサーチアシスタント(RA)を2名雇用した。
『健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究』は2つのプロジェクトから構成される。
「細胞・分子レベルでの加齢・疾患障害の予防治療法の開発」(プロジェクト1・基礎研究)と「健康増進と障害予防のためのバイオメカニクス・臨床研究」(プロジェクト2・臨床研究)である。
そこで保健科学研究科博士課程の学生を基礎・臨床のプロジェクト毎に1名雇用した。
RAで雇用された博士課程の学生にしてみれば研究をしながら学費をある程度稼ぐことができるのでかなり助かることとなった。
もう一つのティーチングアシスタント(TA)は修士課程の大学院生が本来であれば対象となるのであるが、研究所は研究をするのが務めであり、大学生の授業を行うのは本来の役割ではないため、補助事業を利用してTAを雇用することは不可能であった。

平成20年度になり、研究所が稼働し始めると年間数百万円の光熱費、清掃費などの経費が生じる。これは1年が終わってみなければ総額いくらかかるか分からないが、1年中エアコンを動かし続ける細胞培養の研究室や動物飼育室などを抱えているので莫大な額になることは最初から覚悟している。
その一方で、人的には今年からポスドク(PD)を1名雇用した。ポスドクはプロジェクト1・基礎研究に今年度初めて卒業生を出した保健科学研究科博士課程から井上君が採用された。基礎の研究能力と人柄が評価されたのである。
ちなみにPDの採用は吉備国際大学では今回初めてのケースであった。
昨年に引き続き、リサーチアシスタント(RA)は博士課程の学生からプロジェクト2・臨床研究に1名雇用した。

このように、オープン・リサーチ・センター整備事業の補助金を活用することでRAやPDを雇用することができ、これは大学院生にとっても経済的に望ましいことである。

一方ハードの面では先にあげた歩行解析装置のような研究機器だけでなく、保健福祉研究所の建物が建設されたと言うことは計り知れないくらい大きな意味を持つ。

研究所は既に先行した文化財総合研究センターと臨床心理相談研究所のある13号館の隣に15号館として建設されたため、建物自体が吉備国際大学の研究エリアとしてシンボル的意味を持つこととなった。
本年4月以降、学外からの見学のコースには必ず組み込まれ、大学のアピールに貢献している。

基礎研究の面では、これまで基礎の研究室というものが正式には存在しなかったので、研究所ができたことは画期的である。
とくに細胞や動物を扱う基礎研究は近年各省庁から厳しい制限が指示されるようになってきているので、この研究所ができなければ基礎研究は大学院でもできないという事態が予想されていた。
きちんと規定を満たす研究所ができたと言うことは、大学院の発展のためには非常に大きな意義があった。

臨床研究では1階の広大なワンフロアを活用して動作解析や健康教室の開催などが自由自在に行えることとなった。
プロジェクターとスクリーンも整備されているので多人数を集めて公開講座も行える。
床にマットを敷けば実技を取り入れた講習会も開催できる。

こうしてみると研究所の存在意義は大学・大学院にとって非常に大きいことがあらためて認識される。

(参照)保健福祉研究所のホームページ
http://kiui.jp/pc/hokenfukushi/





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大学基準協会の認証評価

2008-08-31 | 保健福祉研究所
2002年の学校教育法改正に伴い、2004年度以降わが国の大学は、文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価を7年以内の周期で受けることが義務づけられた(認証評価制度)ということは2月3日の記事に書いた。
本学では財団法人大学基準協会の加盟判定審査ならびに認証評価の結果、「本協会の大学基準に適合している」と認定された。2005 (平成17)年4月1日付で正会員への加盟・登録が承認され、2010(平成22)年3月31日までの期間が認定された。
今年に入って2回目の審査を受けるための準備が本格化し、先日も大学の各責任者が集まり、報告書編集のための打ち合わせが行われた。
来年審査を受けるための準備であるが、法律による規定なので、きちんとした報告をしないと大変なことになる。
私も、これまでの経緯から保健福祉研究所に関わる報告を書かなくてはいけないとのことでその会議に参加した。

こういった作業は上からの命令だから仕方なくやるというのでは良いものは書けない。
そこで、この機会を我々が行っている活動のアピールの場だと捉えて、積極的に関わってみようと思う。
とりあえず、取りかかりとして保健福祉研究所の位置づけについて簡単にまとめてみた。



保健福祉研究所と大学、大学院との関係

保健福祉研究所は21世紀の長寿社会における保健と福祉の課題に対して、自然科学から社会科学に至るまでの幅広い分野の総合的・学際的研究を目的として平成11年4月に設立された。その業務は以下の通りである。
1.保健福祉分野についての幅広い総合的・学際的研究。
2.保健福祉分野の基礎および臨床の研究。
3.福祉機器の開発。
4.児童・家庭の援助に関する研究
5.看護・介護・リハビリテーション及び、社会的援助等の研究。
6.高齢者の自立と、社会参加を支援する為の啓発活動。

現在、研究員は全学から34人参加している。大学院保健科学研究科の教員は全員参加しているほか、新しく「準研究員」の制度が定められた。準研究員は、本学大学院保健科学研究科に在学する学生のほか、教育・研究上有益かつ適当であると所長が承認した者で、研究員の指導のもとに、活動を行う。

34人の研究員のうち18人(18人全員が保健科学研究科の教員)が文部科学省が実施している私立大学学術研究高度化推進事業の一つであるオープン・リサーチ・センター整備事業に平成19年度採択され現在研究を行っている。
研究プロジェクト名は健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究。

リハビリテーション先端科学研究プロジェクトの運営は、「保健福祉研究所運営委員会」と大学院保健科学研究科の「研究科委員会」とが協力して、研究活動の円滑な運営と2つのプロジェクトの連携を図る。
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榊 佳之先生の講演

2008-06-16 | 保健福祉研究所
昨日の記念講演会は大盛況であった。
榊先生の講演「ゲノムと健康長寿」はすばらしかった。
講演内容は非常に高度な内容であるにもかかわらず、分かりやすくて一般の方にもよく理解できたのではないかと思う。

講演後、理事長に声をかけられて、少人数で懇親会を行った。
本来なら大がかりなパーティーを行うところだが、今回は榊先生がどうしても帰らなくてはならないとのことで理事長以下少人数での簡単な食事会だけになってしまったのだ。
元々私は参加する立場ではなかったが、今回の研究所の補助金申請の責任者であったので、所長の加納先生と共に突然声がかかったのである。

榊先生は直接お話をしてみるとお人柄がよく分かったが、すばらしい方である。
二重らせんのワトソン博士とも親交があるような世界的な研究者であるにもかかわらず、人の話にもよく耳を傾け、決して偉ぶることもなく、終始にこやかにされていた。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を地でいくような方である。

昨夜はこのようなすばらしい方とお話ができて本当に楽しかった。
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