群馬県内も新型コロナウイルスの感染拡大によって8月20日に発令された「緊急事態措置」が9月30日まで延長されています。このためパークボランティア(PV)活動も依然として休止の状態が続いています。
今回は深刻になっているニホンジカの増加について報告します。1997年発行の「鹿沢の自然観察・10年のあゆみ」鹿沢の動物リスト(哺乳類)には、カワネズミ・ヒミズ・アズマモグラ・コテングコウモリ・ノウサギ・ニホンリス・ヤマネ・ハタネズミ・タヌキ・キツネ・テン・カモシカの13種が記載されています。その後のPV活動の中でヒメネズミ・アカネズミ・トガリネズミ・クマ・ハクビシン・イタチ・イノシシ・シカなどの生息を確認しています。1985年発行の「群馬県動物誌」では鹿沢地域はシカやイノシシの分布の空白地域で、2000年頃まで鹿沢園地ではクマやシカの生息を確認していません。しかし、その後のPV活動において湧水川沿いでクマ棚を発見し、園地内でシカやイノシシの食痕が観察できるようになりました。2013年のフィールドサイン研修会では注意深く観察すれば鹿沢園地内でシカのフィールドサインがたくさん見られることがわかりました。
最近ではシカによる食害が極めて激しくなっています。特に2019年秋の19号台風被害のあと、休暇村鹿沢高原の一時休業とその後の新型コロナウイルス感染拡大による観光客の減少やPV活動の休止などで、鹿沢園地内の人出が減少し、それに反比例して園地内のシカの活動が活発になっています。里地調査開始時点(2018年)の調査地点の写真と現在(2021年)の写真を比べると、3年間でシカの食害がいかに激しくなったかわかります。シカはリョウブ・イタドリ・スイバ・アカソなどを好んで食べます。このままでは植物相が変化するかもしれません。シカの糞がたくさん見られるので、ルート上の糞塊を数える「糞塊密度調査」でシカの生息密度の変化を記録することが出きるかもしれません。傾斜地が裸地化すれば土壌流亡が懸念され、対策が必要な時期になっています。
群馬県では2020年度の野生鳥獣による農林業被害は前年比0.4%増の5億6152万円、シカによる被害は23%増の2億6474万円、シカの捕獲数は36.8%増の1万2779頭で、「継続的な対策が必要」としています(読売新聞群馬版:2021年9月8日)。

キャンプ場近くに現れ、警戒するシカの群れ(2021年9月3日早朝:鹿沢園地)

キャンプ場近くで草を食むシカの群れ(2021年9月3日早朝:鹿沢園地)

下草が亡くなった、今年の鹿沢園地(2021年9月3日撮影)

おなじ場所、3年前の鹿沢園地(2018年8月5日撮影)

おなじ場所、3年前の鹿沢園地(2018年9月3日撮影)

下草が亡くなった、今年の鹿沢園地(2021年9月3日撮影)

おなじ場所、3年前の鹿沢園地(2018年7月16日撮影)

食害されたイタドリ(2018年7月16日撮影)

食害されたイタドリ(2020年7月12日撮影)

食害されたアカソ(2020年7月12日撮影)

鹿沢園地でのフィールドサイン研修会(2013年6月30日撮影)

シカの食痕(研修会:2013年6月30日撮影)

シカの足跡(研修会:2013年6月30日撮影)

シカの食痕に絡んだ獣毛(研修会:2013年6月30日撮影)
(投稿:ワイルド馴鹿)