【経営四字熟語で目から鱗が落ちる】3-01 一念発起 過去の延長線上で思考しない 過去の言動・思考をを改めて、別の課題達成を決意する
日本の経営者・管理職は、非常によく勉強をしていますが、耳学問が進みすぎて、それらに振り回されすぎているように思えます。いろいろな経営理論を聞きかじり、そのメリットのみが強調されたお話を聞き、消化不良を起こしていることに気がついていません。そのために「知っているつもり」「やっているつもり」という”つもり”が積もっていて、自社にとって最適な方法が提案されても「陳腐な理論」「古い経営手法」というような位置づけでかたづけてしまっている企業が多いです。
四字熟語の中には、【心 de 経営】の精神に則る、経営者・管理職の心の糧になる発想が多数見つかります。前章の思考法を用いながら、それを企業経営に活かすことが、“戦略的”な経営に繋がります。企業経営で欠けている【心 de 経営】をいかに読み解いて、戦略経営を行うかを感じ取ってください。
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~ 過去の言動・思考をを改めて、別の課題達成を決意する ~
子供の頃、「一年の計は元旦にあり」ということを親から教えられ、正月には毎年、その年の過ごし方とか心構えを親の前で話させられました。それが尾を引いていたのでしょうか、小学生の時に「一念発起」という言葉を初めて耳で聞いたときに「一年発起」と思い込んだことがあります。
「一年の初めに発起すること」が私の正月行事の一つでした。成人してからも、自分自身の長所短所や自分の理想的な人間像、現在何をやりたいと思っているのか等々を、前年の正月の時に書き出したり、平素思っていることを参照したりせず、毎年、ゼロから書き出すことをやってきました。一見しますと効率悪い方法ですが、ゼロベース思考という論理思考の基本に則っていることもあるからか、毎年新鮮な気持ちになり、初心に返る思いで今日まで続けています。すなわち「初志貫徹(しょしかんてつ)」な気持ちを自分に言いきかせることに繋げるのです。「初志貫徹」は「はじめの決意を貫き通す」という強い意思決定、その志を指します。
この継続的な経験の積み重ねが、私自身が経営コンサルタントになってから、自分自身で、その方法を使うだけではなく、それを自分の顧問先の社員研修でも利用するようになりました。自分が永年使い続けているやり方ですので、その作業を進めるときの注意点や使い方の上でのポイントを充分に把握しています。企業内で、管理会計的思考から、単に目標管理制度を導入するだけではなく、この作業を実施することにより、社員が自分を見直し、会社でどのように仕事をしたら良いのかを考える契機になることが分かりました。爾後、いろいろな面で成果を上げ、クライアントからは評価されるようになりました。昨今、大学生がキャリアプラニングという観点で、社会経験の深い先生が特任講師となって指導している大学が増えてきました。その走りを私が子供の頃からの経験でやってきていたのです。
少々自慢話的になってしまい、ご不快に思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご容赦ください。経営コンサルタントとして、クライアントの社員研修を重ねる内に、人間ドックをもじって「ビジネスパーソン・ドック」という形にまとめ上げました。それを自分の経営コンサルタントとしての売り込み商品として作り上げ、社員研修の一環で各社に売り込みをかけて多くの企業で利用していただきました。社員研修だけではなく、対象を企業に向けて「ビジネスドック」という名称でも展開するようにしました。「一年発起」が、企業やビジネスパーソンの「一念発起」の契機となることで、成果に結びつけることにもなりました。若くして経営コンサルタントとして独立起業したにも関わりませず、幸運なことに、クライアント探しにそれほど苦労もせずにスタートできる要因のひとつでもあったのかもしれません。その体験から、経験が浅く、クライアント獲得に苦労している経営コンサルタントや士業の先生方に「経営コンサルタントとしての商品創り」の大切さを説くことがしばしばあります。
「一念発起(いちねんほっき)」という言葉は、私どもの日常生活に溶け込み、知らない人がいないと言えるほどポピュラーな四字熟語です。改めてその意味を紹介する必要もないかもしれませんが、簡単に紹介して起きましょう。
出典は、鎌倉時代後期に書かれた日本の仏教書として知られます「歎異抄(たんにしょう)」です。歎異抄の作者は、親鸞に師事した唯円です。書名は、その内容が親鸞没後に浄土真宗の教団内に湧き上がった異義・異端を嘆いたものです。(【Wikipedia】)
歎異抄では「一念発起菩提心」とあり、それを略して「一念発起」となったと聞いています。仏教上では、「それまで行ってきた悪行を悔い改めて、悟りを開こうと決意すること」を指します。このことから「今までの行いや考えを改めて、別の課題を成し遂げようと固く決意する」という意味に使われます。
多くの企業におきまして、過去の慣習や仕事の手順に固執して、新しい挑戦をすることに慎重になりすぎる状況をしばしば見てきました。経営コンサルタントの視点で見ます。効率の悪い仕事のやり方をしているのを発見しますと「なぜ、そのようにするのですか」とと言う質問が出てきてしまいます。その答の大半は、「先輩がこのようにやってきたから」とか「上司にこのようにしなさいと指示されたから」「マニュアルにそのように書いてあるから」という回答を寄せてきます。私の方で、「このようにしては如何でしょうか」と提案をしますと、多くの場合、それに対してできない理由が列挙されます。時には、キチンとした理由があり、私が経営コンサルタントとして提案を撤回するほどのアイディアで、しかもそれが過去の蓄積からの知恵であることを発見することもあります。
「自分の考えや主義主張が明確」という意味で「旗幟鮮明(きしせんめい)」という四字熟語があります。「旗幟」は、「旗と幟(のぼり)」のことですので「旗幟鮮明」は、「旗や幟が鮮明である」ということから「主義主張や考え方、立場などを明確に示す」ことやそのような人を指します。
クライアントの中には「なるほど」と私の提案を素直に受け入れられることもあります。大半は、抵抗に遭いますので、クライアントとじっくり、一緒に考えます。その内に、その企業にマッチした方法を生み出し、仕事の効率を上げたり、商品・サービスの改善に繋がったりし、それを基に共に取り組んで来ました。
「一念発起」は、過去の延長線上での発想を止めることから始まることが多いようです。
近年では、伝統のある企業でさえ、安穏として、暖簾を守るだけではなく、一念発起して新製品を開発するとか、市場を拡大するとか、他市場にまで手を伸ばすなどの努力をしています。
山梨県に明治二二年創業の株式会社桔梗屋という老舗のお菓子屋さんがあります。ブドウや桃の産地として有名な山梨県では、昔からブドウを核に入れた「月の雫」という銘菓があります。桃を使った焼き菓子もあります。しかし、これらは果物を使っていますので季節性があり、当然売上も季節の影響を受けてしまいます。その問題を解決するために「信玄餅」という新製品を開発し、経営の安定化を図りました。
この会社では、「代々初代(だいだいしょだい)」と四字熟語に基づき、暖簾に安住することなく、何代目の当主であろうとも「初代」のつもりで、謙虚に経営に携わり、創業者のつもりで新しい挑戦をするという理念が定着しています。そのために永い伝統ある歴史を持っていながら「一念発起」の精神が今日まで受け継がれているのです。
因みに、過去の延長線上での思考に関して「刻舟求剣(こくしゅうきゅうけん)」という四字熟語があります。これを訓読みしますと「舟に刻みて剣を求む」となります。揚子江を渡ろうとした中国春秋時代の男が、途中で川の中に剣を落としてしまいました。落とした場所の目印として乗っていた船縁に印を付けておきました。舟の船頭に舟を戻すように頼み、慌てて戻りました。しかし、印を付けた場所に剣を見つけることはでき真せんでした。
因みに、慌てる様を表す四字熟語に「周章狼狽(しゅうしょうろうばい)」があります。「周章」も「狼狽」も「あわてる」ことを指し、同じ意味の熟語を重ねて、慌てる様子を強調しています。「右往左往(うおうさおう)」すなわち「慌てて右に行ったり左に行ったりする様子」も同じ意味で、反意語としては別項にあります「泰然自若」があります。
時は留まることなしに、「日進月歩」します。いつまでも過去と変わらないことをやっていてはダメであること、融通の利かないことのたとえとして使われる四字熟語です。過去からの蓄積が生きる場合もありますが、過去のやり方や考え方、習慣などを「後生大事(ごしょうだいじ)」にして、固執しすぎると大切なものを失ってしまうと言うことでしょう。
「後生大事」は、なにかを非常に大切にすることで、「後生大事にしすぎる」という揶揄的な表現として用いられることが多いです。「もとは仏教の語で、来世の安楽を願ってひたすら善行を積んで仏道に励むこと(新明解四字熟語辞典)」です。「後生」とは「死んだ後に来世の極楽に生まれ変わることです。
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