■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】110 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19
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■ 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19
江戸時代の鉄砲製造を起源とする鋳物のまち三重県桑名市で、ユニークな鋳物製品を手掛けているのは、1950年に創業した有限会社伊藤鉉鋳工所だ。キューポラという煙突のような溶鉱炉で鉄を溶かし、手作業で砂型を作る「手込み造型」で、小ロット多品種・短納期の注文に対応している。
鋳物業界には、1キロいくらという重さで取引する慣行がある。一般的な工業用鋳物製品の収益性は低いままだ。同社は、小ロット多品種・短納期への対応力を強みとして取引先と粘り強く交渉。契約などの諸条件を適正化してきた。こうした地道な経営努力を積み重ねている最中、新型コロナウイルスに見舞われた。主力としている工業部品が大きなダメージを受け、売り上げは前年比で半減するまでに落ち込んだ。
だが、同社は未知のウイルスにも負けない商材を持っていた。契約条件の適正化をステップに、さらに成長するため、トレーニング用のウエイト器具「ケトルベル」を2016年から製造・販売していた。鋳物の短所とされる「重さ」を活かした、高収益が期待できる商品だ。
この「ワンハンドジム」と呼ばれるほど在宅トレーニングに適しているケトルベルの売り上げが、新型コロナによる巣ごもり需要で急増した。19年の1年間で285個だった通販サイトの売り上げは、20年4月の1カ月だけで200個以上に跳ね上がった。年間では、前年実績の3倍以上となる900個を販売した。
ケトルベルは、4kgから48kgの間に4kg刻みで12種類のラインナップを展開している。当初の10種類から、36キロと44キロの2種を追加し、さらに売れ筋の16kgと24kgの鋳型を増やした。競合製品より重量タイプを豊富に取り揃え、幅広いニーズに対応している。ラインナップ拡充に伴う増産体制整備には、三重県よろず支援拠点くわなサテライトと桑名商工会議所の支援を受け、コロナ対応の持続化補助金と三重県の補助金を活用した。
同社の代表取締役は、11年に3代目を継いだ伊藤允一氏。トレーニングとは無縁だったが、ケトルベルの商品化と同時に、自らケトルベルを使ったトレーニングで肉体を改造した。海外に出向いてインストラクター研修を受け、資格も取得した。トレーニング方法は、以前に別の補助金を活用して車庫を改装したトレーニングジムで指導している。並行して、効果的な全身運動が気軽にできるケトルベルのトレーニング方法をSNSで発信し、普及に努めている。
「ケトルベルを売るだけでなく、トレーニングで健康な体をつくるという文化を根付かせ、社会に本当に必要とされる会社にする」とビジョンを熱く語る伊藤社長。「ケトルベル事業を通じてファンを増やし、県の伝統産業の一つである『くわな鋳物』の知名度向上につなげたい」と、地域経済社会への貢献にも余念がない。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成