■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 「どんな時でも酒は必要とされるもの」、誇りをもってビジネス展開 3527-4a29
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■ 「どんな時でも酒は必要とされるもの」、誇りをもってビジネス展開 3527-4a29
「酒は憂いを払う玉箒(たまははき)」という格言がある。中国の詩人、蘇軾の詩から出たもので、酒は心配事や悩み事を払い去ってくれるすばらしいホ ウキのようなものだ、という意味である。酒にはなにかと悪いイメージが付き まとうが、その一方で酒の良さを強調する格言、ことわざも多い。茨城県つく ば市を中心に7つの酒店を展開するL社のS代表取締役は「私たちは世の中に役立つ商品を取り扱っているのだ」との誇り をもってビジネスを展開している。
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1936年創業の酒屋の3代目であるS氏は、長年にわたって規制に守られて きた業界の慣習やしきたりにとらわれない経営を模索。祖父や父と激しく意見が対立した末に、各地の隠れた銘酒や焼酎を発掘して販売する“こだわりの酒店”を目指すことに。家業を継いだ90年代前半はまだインターネットが普及していなかったため、人づてに情報をコツコツと収集し、全国各地の逸品を取り そろえていった。
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店舗は創業時以来1カ所のみだったが、2010年代半ばから は一転して販売網を広げた。2015年に2店舗、19年に1店舗、いずれもつくば市内にオープン。2022年には、つくばエクスプレス沿線の茨城県守谷市内と千葉 県流山市内に相次ぎ開店したのに続き、茨城県から運営を委託された会社が、JR水戸駅構内で開業した。こうした店舗展開は2011年の東日本大震災が転機だった。震災後の自粛ムードによる販売低迷に危機感を抱いたS氏が攻勢に出たのである。2023年に入ってネット販売も開始した。
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震災後にはこんなこともあった。茨城県内でも大きな被害が出て客足はしばらく途絶えたが、やがて酒を買いに来る人の姿がぽつぽつ。 その際、客は口々にこう漏らしていたという。「酒でも飲まないとやってられない」。まさに冒頭の格言のように、震災による精神的苦痛をやわらげようと 酒を買い求めに来た人たちである。
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避難所での飲酒によるトラブルがあったのも事実だが、S氏はこう語る。 「祖父が『泣いても酒、笑っても酒。お酒は人の悲しみを癒し、喜びを増やしてくれる』とよく話していた。どんな時でも酒は必要とされているもの、役立つものだ」。そんな想いが酒を販売するS氏の誇りにつながっている。こうしたプライドを抱き、同社は酒のビジネスをさらに広げていく。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成