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【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業6章 苦悩 4 母の思わぬ言葉

2024-11-15 00:21:00 | 【小説風】竹根好助のコンサルタント起業

  【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業6章 苦悩 4 母の思わぬ言葉 

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。
 これからコンサルタントを目指す人の参考になればと、私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。
 日常業務をこなしながら、アテンドという商社マンにつきものの業務を自分なりに見つめ直す竹根です。慣れないニューヨークを中心としたアメリカでのビジネスですが、時として折れそうになってしまいます。そのようなときに、若い竹根の支えとなってくれるのが、本社で竹根をフォローしてくれるかほりで、実務支援だけではなく、存在の有り難さに感謝を竹根です。

◆6章 苦悩
 商社マンは、商品を輸出すれば良い、というのが、それまでの商社の生き方でした。はたしてそれで良いのか、疑問に纏われながらの竹根好助でした。その竹根が、何とか現状で仕事をしながら活路を見いだそうと考えていました。
 しかし、問題は、そんなに簡単なものではなく、苦悩する竹根です。
  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
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◆6-4 母の思わぬ言葉
 正月は、母と二人で近所の天神様にお参りに行った。
 竹根が日本に一時帰国していることは誰も知らないので、年賀状は来ない。来ないはずが、一枚だけ、好助の名前が書かれた年賀状が来ていた。見慣れた文字に、竹根の心が騒いだ。
 竹根宛の年賀状が一枚だけなので目立ったのであろう、母が、どのような女性なのか、興味を持ったようである。竹根は、はじめは福田商事の社員で、日本での竹根の連絡係を務めてくれていると簡単に説明をしたが、母は満足しないでいる。しかたなしに、これまでのことを簡単に説明すると竹根が予想だにしない言葉が母の口から出た。
「すぐ電話しなさい。私と一緒に、先方に行ってきましょう」
 竹根には、その言葉の意味が一瞬理解できなかった。
「だって、お母さん、先方は、千葉の大地主で、地元の名士なんだよ。しかるべきところへでもなければ、嫁になんか出さないよ」
「そんなことを言って、好助、おまえはそんなよいお嬢さんを他の男に取られてもいいのかい?」
 そういわれると、竹根は逆に否定したい気持ちになった。
「それは、俺もあの人ならいい嫁さんになってくれると思う。でも、世の中というのは、そう言うモノでもないだろう。いつも、お母さんが言っているだろう」
「それは、それ、これは、これ」
 理屈にもならない、母らしからぬ言いぐさである。
 有無を言わさない母親のことをよく知っている竹根である。とりあえず、年賀状に書かれている電話番号に電話をかけた。
「はい、相本でございます」
 中年の女性の声である。
「私、福田商事で相本かほりさんにお世話になっている竹根と申します」
 竹根が話しかけると「お嬢様は、ただいま初詣にお出かけです。お帰りの時間はわかりません」ととりつく島もない冷たい言葉が返ってきた。
「では、竹根から電話があったとだけお伝えください」
「竹根さんですね。わかりました。お伝えはいたします」
 若い男からの電話なので、つっけんどんである。結婚前の娘にかかってきた電話が不愉快なのであろう。元日早々からのこの出来事が、逆の立場なら竹根にもわかる気がする。
――これで、完全に壊れてしまっただろうな――
 自分のことを思ってのことであるのに、何となく母が恨めしく思える竹根であった。
  <続く>

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