アダーチ。1980年代物。
私がかみさん用にシャフトを短
くカットして58インチから56
インチに改造。1980年代に
かみさんが使っていた。
糸巻きも除去して私が革を
巻いた。カンガルー革のしっ
とり感が良い。
58インチの時から、何だか
入れが強いキューでシャフト
がとても良い。
石垣。1980年代物の四剣。
シャフトはパイロッテッドなの
に樹脂プラグだ。変わった作り
込み。
打感がぼやける感触がある。
総合的には悪くないが、アダーチ
やアダムには遅れを取る。
今は廃業した日本の老舗2メーカー。
私が初めて買ったプールキューが
アダーチのリーシャンだった。
切れ切れのキューだったが、行き
つけの店のマスターが気に入って
譲ってくれとの事なので手放した。
それ以前の私の四ツ球キューは
石垣だった。
ハウスキューより少しましな程度
のラインナップの製品。
アダーチはプールキュー、石垣は
キャロムキューという印象がある。
1980年代前半、ビリヤード場の
ハウスキューはほぼ石垣だった。
アダムというメーカーは日本に
工場があってもアメリカ資本で
あり、アメリカへの輸出専門メー
カーだった。
アダム製品は質が良かったが、アダ
ムキューを購入するにはアメリカ
から逆輸入するしかなかった。
その頃はアダムスとかアダムカスタ
ムと呼ばれていて、少し高級なキ
ューを作るメーカーだった。
アダムの創始者のリチャード・
ヘルムステッターがキャロウェイ
の重役に引き抜かれたので、彼は
アダム社を無償で日本人の現地
従業員に譲渡した。
そして1986年からアダムは日本の
法人となり、日本国内向けにも
キューを発売するようになった。
私は即買った。
モデルはヘルムステッター86-9S
だ。
長年使ったが、バットに曲がりが
出たので、アダムの粕谷氏の作っ
た四剣フォアアーム部のみ残して
フルリビルドした。センターコア
方式で、リアスリーブには本物の
ブラジリアン・ローズウッドを
使い、エンドキャップはTADの
ロング・ブライアン・スタイル
の純白のデルリンにした。
音、入れ、切れ、最高のキューと
なって蘇った。
リビルドしてからすでに17年が
過ぎようとしている。ベースは
1986年製だ。メインシャフトは
1987年神田淡路亭製の良質物。
ごく普通に赤木のハードロック
メープルがあった時代のシャフト
で、最近の白いスカスカ材とは
質性がまるで異なる。粘りもあ
り、よく切れ、よく押さえつけ、
かつよく弾く。
35年前のシャフトだが、私が持
っているキューの中で、アメリカ
製カスタムを除けば一番良質な
シャフトがこの87年淡路亭だ。
5年前、先角の象牙が浮いたので、
マエストロさんから提案されたタ
イガー社の新樹脂に交換した。長
さは私の好みに指定。
この上なく快調である。
キューは木材がメイン材料だ。
昔の物のほうがキューもシャフト
も良質なのは致し方ない。
昔のキューで悪い点は接着剤の
質くらいなものだ。他は全てが
良質。
新製品売らんがなの毎年出る
商品のコピーの「今回の製品は
これまでの物を超える云々」
の宣伝文句がいかに虚構か
よく分かる。
物の良質性は使い捨て消費商品
などでは絶対に超えられない。
新製品ラッシュでビリヤード界
が路線と方向性を踏み間違えて
健全性を失ったのは、ハイテク
シャフトと積層タップで味をし
めた連中が現れてからだ。
サードパーティーも雨後の筍の
ように現れた。
あさましい世界になってしまっ
た。
鉄と人は昔のほうが質が良いと
刀剣界、冶金界では昔から云わ
れて来た。
どうやらビリヤード界もそう
なってしまったようだ。
私は今ではヴィンテージに属する
古いキューを使い、古くからある
一枚革のタップを自分で装着し、
100円そこそこのチョークを用
いて玉を撞く。グローブなどは
1980年代から世の中に存在したが、
自分は1980年代から使わなかった
ように今後も絶対に使わない。
良い物ならば当時から使っている。
流行でどうのなどというくだらぬ
ところでギアを選択しない。
そんなブーム乗っかりのくそダサ
根性ならば、とっとと玉撞きなど
やめたほうがましだ。
これらはスタンスの問題であり、
スタイルの問題であり、生き方の
問題だ。主体の立脚視座の。
流行を追うのが一番ダサい。
流行を着るのが一番ダサい。
真の良質性は時代を凌駕する不朽
性を有している。日本刀のように。
私はそれを選ぶ。