この景色を見た時、思わず単車を
道の端っこに停めた。
「あ!俺の康宏刀だ!」と思った
から。
暫く、雲が見えなくなるまで歩道
から眺めていた。
私の康宏作は粟田口のようなつんだ
小乱れの刃文に青い地鉄。
そして、その青い地の中にふわふわ
と空に浮いた雲ような飛び焼きが
一箇所ある。
まるでそれは空を楽しむはぐれ雲の
ような游雲。
それが悟空の筋斗雲みたいでかわい
いの。
なので、後銘で「游雲」と号を銘
に切ってもらい再登録した。
作者小林康宏先生は飲んだ時に
「あれは失敗。ごめんね」とサラッ
と言ってた。
失敗かぁ〜い!と思ったが、かわい
いからいいのさ。
気に入ってるし、めちゃくちゃ切れ
る二代目小林康宏斬鉄剣だし。
切れすぎて稽古にならないから刃を
引いて試斬刀法の稽古してたくらい
で。
斬鉄剣康宏は、初代はすべてが
虎徹興里と同じく実験刀のよう
な方向性だったが、二代目の子息
直紀康宏が斬鉄剣を完璧に完成さ
せた。工夫は鍛え方と熱処理方法。
二代目康宏は1988年〜1996年頃
の作と2014年〜現在までの作域
が最も切れる。
長く刀工本人と付き合っていると
よく分かる。
総じて全体的によく切れるが、その
二つの期間の作は切れ過ぎて気持ち
悪いほどに切れる。