倍賞千恵子の「桐子」
鳶の頭、栄次と桐子はいまも気軽に話せる仲。桐子の店の小料理屋でしみじみと酌み交わす場面がある。このシーンは、後に同じ脚本家によって設定を変えて再現される。
「あにき」から4年後。映画「駅STATION」で二人は共演する。役名も高倉は英次、倍賞はそのまま桐子である。映画のワンシーン。年も押し詰まった大晦日、雪深い町の居酒屋「桐子」。テレビでは紅白歌合戦が中継され、二人が八代亜紀の「舟唄」に聴きいっている。印象深い場面となった。
倍賞はその前にも「桐子」を演じたことがある。松本清張の小説を1965年に山田洋次が映画化した「霧の旗」。映画で復讐の念に燃える女性を演じたのが、まだ若い倍賞千恵子だった。名前は「柳田桐子」、小説の主人公である。
ついでながら、「あにき」のテレビ放映が始まった同じ10月に公開された映画でも、二人は共演している。監督は山田洋次で題名は「幸福の黄色いハンカチ」。映画はハッピーエンドに終わるが、「あにき」で桐子は悲しい結末を迎えることになる。
倍賞千恵子は山田監督の「下町の太陽」や「男はつらいよ」など、明るい庶民的な女優との印象があるが、悲運の女性を演じるときには「桐子」という名前になるらしい。
倍賞千恵子版の「舟唄」
何気なく借りてきた高倉健のDVDだが、いろいろ見どころがあって楽しめた。任侠映画の東映を退社して間もないころの作品である。私は彼のように自分の筋を通す意地は持ち合わせないが、世渡りが不器用だというところは同じだ。
健さん映画に惹かれる人が多いことが分かるような気がします。
映画と同じく実生活でも実直な人だったようです。