太宰府の九州国立博物館で「皇室の名宝」展が開催中です。宮内庁三の丸尚蔵館に所蔵されている皇室のコレクションの中から百点近くが展示されています。各地から献上されたものや皇室に古くから伝えられてきた史料や書画、美術工芸品など素晴らしいものばかりです。
展覧会は二つの章立てで構成されています。
第一章は「皇室の近代を彩る」と題して、九州ゆかりの献上物や帝室技芸員の作品などです。帝室技芸員とは、皇室が我が国の優秀な美術家や工芸家を顕彰・保護し、その制作を奨励するものです。明治23年の制度発足から戦前まで79名が任命されました。
「プチャーチン長崎上陸図」のほか、目についたのは「西南戦争熊本城矢文・征矢」、上野彦馬等による「西南役写真帖」、島津久光、西郷隆盛、大久保利通の書などです。
「西南戦争熊本城矢文・征矢」は明治10年2月の熊本城総攻撃のあと、籠城する政府軍に降伏を勧めるものです。矢文には「妄リニ暗殺ヲ謀リ」「政府ニ尋問ノ筋有之」などの文言とともに、降伏すれば寛大に扱う旨が書かれています。矢と矢文は、鎮台司令長官であった谷干城が戦役後に皇室へ献上しました。
また狩野芳崖、富岡鉄斎、橋本雅邦、上村松園、竹内栖鳳らの日本画や海野勝珉などの工芸品が並んでいます。 以下の写真は、当日買い求めたポストカードによるものです。
海野勝珉「蘭陵王置物」
第二章は「皇室聚宝」と題され、皇室の伝来品が展示されています。
「蒙古襲来絵詞」
この日はこの絵巻物を観るために来ました。日本史の教科書で見たものです。蒙古襲来絵詞は肥後国の御家人竹崎季長が、二度にわたる元寇の際に出陣し活躍した様子を描いたものです。それぞれの絵の端が切れており切り貼りのように見えます。
会場には貴重な書画が展示されています。小野道風の筆による「屏風土代」、藤原定家の筆による「更級日記」、「春日権現験記絵巻」「北野天神縁起絵巻」等です。他にも丸山応挙の「牡丹孔雀図」、葛飾北斎の「西瓜図」などなど。そして伊藤若冲の「動植綵絵」の中から12点が展示されています。
丸山応挙「牡丹孔雀図」
伊藤若冲「動植綵絵 魚群図」
伊藤若冲「動植綵絵 芙蓉双鶏図」
初めて観る若冲の画は迫力があって引き込まれてしまいました。「動植綵絵」は経緯を経て、明治22年に相国寺から皇室へ献上されました。彼は日本画の前衛のような気がします。どこが前衛かと問われても困りますが。数年前に京都の錦市場を歩いた時、店々のシャッターに若冲の画が描かれていて不思議に思いました。彼は錦市場にあった青物問屋の生まれだったのです。
コロナ対策でしょう、博物館の出入り口は離れて分けられていました。回廊の様な通路を歩いて帰ります。
展示会は後期に絵巻の巻替えや一部展示品の入れ替えがあり、奈良・飛鳥時代の御物「聖徳太子二王子像」、聖徳太子筆による「法華義疏」が展示されます。伊藤若冲の「動植綵絵」も別の12点が展示されます。皇室にはその時代における当代一流の品物が集まってくるのですね。見ごたえのある展覧会でした。
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