【薬師三尊像→弥勒三尊像→聖観世音菩薩像】
奈良市西ノ京の法相宗大本山、薬師寺で12月29日、仏様に積もった1年のほこりを落とす「お身拭い」が行われた。午後1時すぎ、金堂に安置された国宝の薬師三尊像の前で、加藤朝胤管主らによって新型コロナの終息などを祈願し、仏像の魂を抜く法要が営まれた。この後、僧侶やボランティアの学生たちがお湯に浸した白い浄布で拭くと、本尊の薬師如来像は両脇の日光・月光菩薩像とともに黒光りする本来の輝きを取り戻した。お湯はこの日朝、正月用の鏡餅を作るためにもち米を蒸した時に使ったものとのこと。
お湯の入った3つの大きな桶を担いで次に向かったのは北側にある大講堂。ここには弥勒三尊像が祀られている。中央に本尊の弥勒如来、右に法苑林(ほうおんりん)菩薩、左に大妙相菩薩。ここでも法要の後、台座に上ったりしてお顔などを丁寧に拭き清めた。この後、国宝の仏足石(753年製作)の両側に並ぶ釈迦十大弟子も学生のボランティアが一体一体手分けして拭き清めた。この十大弟子の像は彫刻家で文化勲章受章者の中村晋也氏の作で、2003年に大講堂の落慶に合わせて安置された。
お身拭いの最後は東院堂に祀られた聖観世音菩薩像。像高190cmの金銅仏で、称徳天皇の后、間人(はしひと)皇后が天皇の追善供養のため造立したという。直立不動の凛とした美しいお姿から〝白鳳の貴公子〟といわれ、悲劇の皇子として有名な有間皇子の姿を写したものではないかという説もある。この像だけでなく建物自体も国宝指定。現在の建物は鎌倉時代の再建だが、元々は奈良時代初期に長屋王の正妃、吉備内親王が母元明天皇の冥福を祈って建立した。お身拭いは白装束の僧侶や「薬」のマークが入った法被姿の学生たちによって手際良く進められた。浄布で丁寧に磨く女子学生の後姿にはピンク色の大きな可愛い縫いぐるみ。神々しいお姿の国宝の像との妙な取り合わせが目に焼き付いてしばらく離れなかった。このキャラクター、彼女にとっては手離せない念持仏(守り本尊)のようなものなのだろう。