【前季わずか1勝、今季はすでに6勝】
バレーボール女子の国内最高峰「プレミアリーグ」。8チームが3回戦総当りで戦うレギュラーラウンドが中盤に差し掛かり、毎週末、各地で熱い戦いを展開している。その中で予想以上に健闘し注目を集めているのが「岡山シーガルズ」。実業団チームばかりの中で唯一つ、市民クラブのプロチームだ。前季はわずか1勝(25敗)だったが、今季は1月29日現在6勝5敗で、5位につけている。
前季は苦しみに苦しんだ。全8チームの中で他チームに大きく引き離されてダントツの最下位。プレミアの下位2チームは2部リーグ「チャレンジリーグ」の上位2チームとの入れ替え戦がある。昨年3月上旬の時点でチャレンジの1位上尾は19勝1敗、2位日立は17勝1敗の戦績を挙げていた。岡山はまさに下位リーグ転落の瀬戸際にあったわけだ。
ちょうどその時、東日本大震災が起こる。バレーボールをやっているどころではない。日本バレーボール協会は断腸の思いで、上位4チームによる決勝ラウンドや入れ替え戦の取り止めを決定。2011/2012シーズンは両リーグとも前季と同じチーム構成で戦うことになった。これで岡山は転落を免れたが、監督や選手の思いは実に複雑だったに違いない。
【目標は4位以内・4季ぶりの決勝ラウンド進出】
プレミアリーグでは8チームのうち上位4チームが決勝ラウンドに進出し、セミファイナル、ファイナルを戦う。岡山は今季「新生」をテーマに4季ぶりの決勝ラウンド進出を目標に掲げた。
だが初戦のJT戦は0-3の完敗。今季もやはり駄目なのだろうか。ところが第2戦NEC戦で驚異的な粘りのバレーを展開、フルセットの末3-2で勝った。この勢いが翌日(12月25日)の第3戦東レ戦にも続く。相手は木村さおり、荒木絵里香、迫田さおりらをそろえる強豪。だが、ひるむことなく戦って、またフルセットの末に破った。東レ戦勝利は2007年3月以来実に5シーズン16試合ぶり。ファンにとってはビッグなクリスマスプレゼントになった。
全8チームのうち岡山を除く7チームは強力な外国人アタッカーを擁する。岡山は昨年オフ、若手を中心にブロックやバックアタック、レシーブの強化に取り組んできた。NEC、東レ戦の2連勝はその成果が着実に実を結びつつあることを見せてくれた。
数字もそれを証明している。1月29日現在、ブロック決定本数(1試合当たり)やサーブレシーブ成功率は全8チーム中5位。総得点(アタック+ブロック+サーブの得点)ランキングでは福田舞がデンソーのデラクルス・ベタニア、東レの木村さおりに次いで堂々の3位、若手の川畑愛希も8位につけている。ベテラン森和代はブロック決定本数(1セット当たり)で7位。ベテラン勢が持ち味を発揮し、川畑や関季香、丸山亜季、宮下遥ら若手の成長もめざましい。
【カギは下位に取りこぼさず、どれだけ上位を食うか】
29日現在の順位と勝敗を見てみよう。
(勝敗数が同じ場合の順位はセット率による)
1位 デンソー 9勝2敗
2位 東レ 9勝2敗
3位 久光製薬 7勝4敗
4位 JT 7勝4敗
5位 岡山 6勝5敗
6位 トヨタ車体 3勝8敗
7位 パイオニア 3勝8敗
8位 NEC 0勝11敗
この段階でデンソー、東レの上位2チームが抜け出し、その他は中位3チームと下位3チームにはっきりと色分けされてきた。残る試合数はちょうど10戦。岡山は下位3チームには5戦全勝だが、上位の1~4位チームとは1勝5敗。その1勝が東レ戦だが、1月29日の対東レ2回戦ではアタック、ブロック、サーブのいずれも圧倒され0-3で完敗した。
目標の4位以内を達成するには下位に取りこぼさないことが必須条件。そのうえで、中・上位チームから1つでも多く勝ち星を挙げるしかない。順位がセット率勝負による場合をにらんで1セットでも多く取る必要もある。そのためにはサーブレシーブの精度をもっと上げる必要がありそうだ。同時にアタック決定率(現在6位)や、サーブによる得点や相手のレシーブを崩すサーブ効果率(8位)のアップも課題だろう。
4位以内への戦いはこれからがまさに正念場。「ガンバレ! ガンバレ! シーガルズ」。