【 英国⋅キュー植物園公認画家⋅山中麻須美さん指導の教室作品展】
国営平城宮跡歴史公園(奈良市)内の平城宮いざない館で「春日大社万葉植物園の草木花」と題した植物画展が開かれている。監修者は奈良市出身で「英キュー王立植物園」の公認画家として活躍する山中麻須美さん(在英37年)。5年前から帰国時に平城宮跡の施設で開いてきた植物画教室の初の作品展だ。 来年2月9日まで。
会場の入り口正面を飾るのは山中さん自身が描いた「春日大社 本社 大杉」。樹齢1000年ともいわれるご神木だ。注連縄が掛かる幹の質感や葉の繊細な描写から、その力強い生命力と圧倒的な存在感が伝わってきた。
「春日大社の万葉植物」として展示中の受講生の作品は全部で23点。それぞれに植物の現代名と万葉名、代表歌とその意訳が添えられている。 ヤブツバキ(万葉名つばき)には坂門人足が詠んだ歌が紹介されていた。「巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ思はな 巨勢の春野を」
その他に「自由課題」として27点、「初心者クラス」として 21点 を展示中。 自由課題の作品の中にはボタニカルアートと呼んでもおかしくないような力作も多く含まれていた。
会場内中央には20世紀で最も優れる植物画家の一人と称された山中さんの師、故パンドラ⋅セラーズさんのコーナーも。キュー植物園との縁をつないでくれ「私の人生を大きく変えるきっかけを作ってくれた」恩人だ。
セラーズさんの没後、遺族から彼女が使っていた画材一式などが託された。原画 2点や2人が写った写真なども並ぶ。
山中さんに師事し、いま活躍している植物画家のコーナーもある。その一人が米田薫さん。植物学者牧野富太郎をモデルとした NHK連続テレビ小説「らんまん」のために数々の植物画を描き下ろした。その中には牧野博士が発見し夫人の名前に因んで名付けたという「スエコザサ」 もあった。米田さんは現在、筑波実験植物園を拠点に活動しているという。
米田さん同様、2005年から山中さんに師事している安江尚子さんは「新分類 牧野日本植物図鑑」( 2017年北隆館刊)で作画を担当した。図鑑には安江さんが描いた植物画が79点掲載されているとのこと。
植物画とは「植物をただ美しく描くだけでなく 、科学的に正しく描くこと、植物の声を聴くこと」と山中さん。平城宮跡での植物画教室からも、その精神を受け継いで活躍する画家がいつの日か生まれるかもしれない。
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