【曲芸師豊来家玉之助さんが奉納を始めて11年目】
奈良市の古社、漢国(かんごう)神社で29日、年末恒例の「獅子神楽」が奉納された。太神楽(だいかぐら)曲芸師の豊来家(ほうらいや)玉之助さんが2008年に1年間の厄払いと新年の招福を願って獅子舞を奉納したのが始まり。今は奈良県御杖村の桃俣(もものまた)獅子舞保存会なども加わってつくる漢国神社韓園講(からそのこう)が奉納している。観客も回を重ねるたびに増え、この日は境内をびっしり埋め尽くすほどの盛況。次々と繰り広げられる熱演に惜しみない拍手が送られた。
獅子神楽の奉納は午後1時、兵庫県立西宮高校邦楽部の生徒による獅子舞の入場でスタートした。その後、境内に設けられた舞台で、天照大神の道案内を務めた「猿田彦舞」や福をもたらす「大黒」、宝剣で邪気を祓う「回し剣」、大盃で獅子にお神酒を飲ませる「へべれけ」、阪神甲子園球場に程近い西宮市今津の「寅舞」、五穀豊穣を祈る「五穀」、曲芸の傘回しや子ども獅子を肩車する「太神楽」など、十を超える演目が2時間近くにわたって披露された。
舞台を取り仕切り八面六臂の活躍をしていたのが豊来家玉之助さん。自ら「猿田彦舞」や「大黒」「太神楽」「四方鎮(よもしずめ)」などを演じる一方、軽妙なトークで笑いを誘っていた。玉之助さんは大阪府生まれ、兵庫県育ちで大阪芸術大学出身の46歳。NHKの「おかあさんといっしょ」や「上方演芸ホール」に出演したこともあるという。アメリカやフランスなど海外で公演したことも。自慢はNHK朝の連続テレビ小説「わろてんか」で松坂桃李さんらの演技指導をしたこと。この日も傘回しの際には「この傘と鞠はそのときに使ったもの」などと自慢げに話していた。
演舞が終わるたびに舞台上には次々とおひねりが投げ込まれた。登場したある獅子舞の母衣(ほろ)はそんなおひねりを元手にして作製されたそうだ。獅子神楽の奉納後、参拝客にはカボチャと小豆を煮た熱々の「いとこ煮」が振る舞われた。御杖村の郷土料理とのこと。神社からは開運ご祈祷のお札も配られ、境内ではあちこちで参拝客が邪気を祓ってもらおうと獅子に頭を噛んでもらっていた。笑いの絶えない実に愉快な年末のひとときだった。