【東登山道で〝旅する蝶〟アサギマダラに遭遇!】
西登山道コースで山頂に向かう途中、右手の草原一帯をシモツケソウ(下野草)の大群落が淡紅色に染めていた。バラ科の多年草で、夏のお花畑の主役。その名は庭木として植えられることも多い落葉低木シモツケ(下野)の花によく似ていることから。シモツケの別称「キシモツケ」に対し、シモツケソウは「クサシモツケ」とも呼ばれる。登山道沿いにはシモツケの花もまだ咲いていた。(下の写真は㊧シモツケソウ、㊨シモツケ)
山頂付近にはノアザミの変種で伊吹山固有種のミヤマコアザミ(深山小薊)も群生していた。草丈は30~50cmほどとノアザミよりかなり低く、分岐した枝先に赤紫色の頭花を1つずつ付けていた。伊吹山のアザミには他に秋に咲くイブキアザミ(伊吹薊)とコイブキアザミ(小伊吹薊)があるが、この2種もここだけで見られる固有種。登山道沿いでは穂状の総状花序に薄紫色の花を密生したクガイソウ(九蓋草・九階草)も多く目にした。和名は輪生葉が茎に何段も層を成すことに由来する。(写真はミヤマコアザミとクガイソウ)
シュロソウ(棕櫚草)は直立した茎の円錐花序に暗紫色の花を付ける。別名「ニッコウラン(日光蘭)」。鮮やかな黄花のキンバイソウ(金梅草、金杯草)も目を引いた。伊吹山のお花畑は蝶にとっても楽園。東登山道を下っていると、〝旅する蝶〟アサギマダラが目の前をひらひらと優雅に舞って近くの草むらで一休み。クガイソウには羽の模様が美しい蝶が止まって蜜を吸っていた。アカタテハだろうか?(写真はシュロソウとキンバイソウ)
シカの食害が全国各地で問題になっているが、この伊吹山もその例に漏れない。お花畑を食害から守ろうと、シモツケソウの群落などはネットで囲まれ、東登山道の出入り口には金網の扉が設置されていた。繁殖力の強いアカソやフジテンニンソウの群落拡大の抑制も課題の一つ。草丈が高く日照を遮って既存のお花畑を侵食していくという。このため「伊吹山自然再生協議会」を中心に数年前からシモツケソウの群落再生事業などに取り組んできたそうだ。