【飼育ケース内に世界各地のゴキブリがどっさり!】
心優しい昆虫少年が室内にいたゴキブリを手でつまんで外に逃がしてあげた――。以前こんな話を耳にしたこともあるが、これは例外中の例外だろう。台所に出没するゴキブリは嫌われ者の代名詞にもなっている。ただゴキブリの種の大半は森にすんでおり、ペットとして飼育する人も意外に多いそうだ。奈良県の橿原市昆虫館(香久山公園内)はそんなゴキブリを大量に飼育し、新館の特別生態展示コーナーで公開している。
橿原市昆虫館の人気スペースの一つに様々な蝶々が飛び交う放蝶温室がある。主にこれを目当てに何度も訪ねているが、ゴキブリ類をじっくり観察したのは今回が初めて。新館に入ると、左手に日本と世界のゴキブリの標本箱が2つ。そして右手の「ステキなゴキブリ天国!」と大書した下には世界各地のゴキブリが入った飼育ケースがいくつも並んでいた。ケース内では数十~数百匹単位のゴキブリが飼われ、野菜や人工飼料に群がっていた。
その一つ、ユウレイゴキブリ(上の写真㊧)は中央アメリカに生息しており、その名前は成虫の胸にある模様が人の顔のように見えることによるという。南北アメリカ大陸にいるメンガタゴキブリ(同㊨)の名前も仲間に同様の模様がある種類がいることによる。マダガスカルオオゴキブリは体長が約7cmあり、昆虫館で飼っているゴキブリの中では最も大きい。触ると危険を察知し「シューシュー」と鳴くそうだ。このほかアルゼンチンモリゴキブリやチュウトウボキブリ(トルキスタンゴキブリ)なども展示されている。(下の標本箱は㊧「世界のゴキブリ」、㊨「日本のゴキブリ」)
ゴキブリは人類の祖先霊長類が現れるずっと以前の3億年以上前に出現したといわれる。いわば〝生きた化石〟だ。現在、世界で約4000種、日本では約50種が確認されている。その中で家にすみつき害虫として嫌われているのは世界でわずか10種類ほど、日本ではクロゴキブリ、チャバネゴキブリなど5種類。世界最大のゴキブリはナンベイチャバネゴキブリで、体長が約11cmもあるそうだ。
ゴキブリをカブトムシやクワガタムシのように飼育ケースで飼う人も意外に多いという。ゴキブリは①金魚の餌や野菜くずなどが餌になる②つるつるした壁を登ることができない種類も多く逃げ出す心配が少ない③卵でなく幼虫の姿で生まれるものも多く繁殖を楽しめる④カブトムシなどに比べにおいが少なく、飼育ケースを汚さずに飼うことができる――とのこと。ゴキブリの世界を垣間見ることでゴキブリを少し見直した。ただ触れ合いコーナーでゴキブリを手に乗せるだけの勇気はまだ持てなかった。