【中南米原産、名前は羊飼いの娘に由来!】
ヒガンバナ科ヒッペアストルム属で、春植え球根植物の王様ともいわれる。大きなものでは花径が20cmを超えるものもあり、鉢花や切り花として人気が高い。同属の植物はブラジルやペルーなど中南米に90種ほどあり、日本には江戸時代末期に「キンサンジコ(金山慈姑)」「ベニスジ(紅筋)サンジコ」など数種が渡ってきた。現在流通し栽培されている豪華な大輪のアマリリスはこれらの原種の交雑によって生まれた。
学名は「ヒッペアストルム×ヒブルドゥム」。園芸上ではこのヒッペアストルム属の植物が旧属名から一般にアマリリスの名前で通っており、旧アマリリス属(現ホンアマリリス属)に残った南アフリカ原産の植物「アマリリス・ベラドンナ」は「ホンアマリリス」や「ベラドンナリリー」と呼ばれている。属名ヒッペアストルムの語源はギリシャ語の「ヒッペオス(棋士)」と「アストルム(星)」から。種小名ヒブルドゥムは「雑種の」を意味する。
5~6月頃、光沢のある幅広の厚い葉の中心から太い花茎を伸ばし、直径10~20cmほどの花を2~4輪横向きに付ける。花色は赤、橙、白、ピンク、縞模様、絞り模様など多彩。花茎は中空で、雌しべは柱頭が3裂する(ホンアマリリスは秋咲きで、ヒガンバナのように開花時に葉がない、花茎は中実、柱頭が分岐しないといった違いがある)。現在多く栽培されている大輪種はオランダで改良された「ルドウィッヒ系」と呼ばれるものが主力になっている。
アマリリスの名称は古代ローマの詩人プーブリウス・ヴェルギリウス(紀元前70~19)の作品『牧歌』に登場する美しい羊飼いの娘の名前に由来する。アマリリスといえば小学校の音楽の教科書に載っていた唱歌『アマリリス』を思い出される方が多いかもしれない。「♪みんなできこう たのしいオルゴールを ラリラリラリラ しらべはアマリリス」(岩佐東一郎作詞)。元々はフランス民謡とも、フランス国王ルイ13世(1601~43)の作品ともいわれたが、最近ではフランス人のアンリ・ギース(1839~1908)作曲説がほぼ定説になっているそうだ。「アマリリス廃墟明るく穢なし」(殿村菟絲子)