【死者を邪悪な存在から護る古代中国の魔除けの副葬品70点余】
世界各地の民俗資料や考古美術を収集・展示する天理大学の付属博物館「天理参考館」で、企画展「墳墓の護り手 ―鎮め護り彩る品々―」が開かれている。古代中国の墳墓で死者を邪悪な存在から護(まも)る〝辟邪(へきじゃ)〟の役割を担った副葬品に焦点を当て、霊獣の置物など70点余(うち20点が初展示)を展示している。会期は6月5日まで。
古代中国の墳墓には角や翼を持った奇獣や霊獣など、怪異な姿をかたどった空想上の動物の埋葬品がしばしば納められた。外界から侵入しようとする邪悪な存在を威嚇し退ける役割を担った守護者として「鎮墓獣」や「辟邪獣」と呼ばれる。北朝時代には人面と獣面の鎮墓獣が墓室の入り口に対で飾られたという。写真㊧の『三彩霊獣』(唐時代)は胴や四肢は牛に似て、顔は龍か麒麟のようにも見え、様々な動物を組み合わせた不思議な姿。写真㊨は『灰陶加彩辟邪』(三国時代)。
空を羽ばたく鳥も古代の人々にとって神秘的な存在と映り、鳥をかたどったものが副葬品としてよく納められた。鳥を神との仲介者、さらに辟邪を持つ存在とみなしたのだろう。写真㊧の『緑釉鳳凰飾九技灯』は後漢時代の墳墓から出土した。写真㊨の『青磁神亭壷』(呉~西晋時代)は高さ48.9cmで、上部の瓦建物の周囲に小鳥や犬、熊など多くの動物や人物が配されている。葬送儀礼の情景を表したものとみられ被葬者の魂を悪霊邪鬼から護る〝依り代〟として副葬したのではないかという。
玉(ぎょく)にも神秘的な霊力が宿ると信じられた。玉を死者の身にまとわせたのもそのためで、遺体の腐敗を防いだり邪悪な存在が体内に侵入するのを防いだりする効果が期待された。西周時代の墳墓から出土した写真㊧の『玉覆面』は、本来は顔に被せた布の上に眉や目、鼻、口、耳などをかたどった玉片を綴じつけたもの。後の漢時代になると全身を玉で覆う金縷玉衣(きんるぎょくい)なども登場した。死者を邪悪な存在から護るものとして香炉(薫炉)もよく副葬された。写真㊨は前漢時代の『鍍金青銅虺龍文(きりゅうもん)香炉』。