【8戦で4勝、ライバル・サラに水をあけて独走】
昨年11月から世界を転戦してきたスキージャンプの女子ワールドカップ(W杯)は2月2~3日札幌・宮の森、9~10日山形・蔵王で各2戦計4戦を行う。前半戦では日本のエース、高梨沙羅(16歳)が8戦中4勝し、最大のライバルであるサラ・ヘンドリクソン(米国、18歳)をポイントで大きく上回る。残り8試合。高梨としては日本での4戦で初の総合優勝に向けて足場をさらに固めたい。ロシア・ソチ冬季五輪(来年2月7~23日)まで1年余。高梨への期待がますます高まっている。
W杯初開催の昨季は米国のサラが13戦中9勝し初代女王に輝いた。中学3年生だった高梨は9戦に出場し優勝1回、2位6回。出場試合が少なかったにもかかわらず総合3位となり表彰台に上がった。今季はノルウェー・リレハンメルの開幕戦で優勝すると2戦目以降,2位、3位、優勝、優勝、4位、2位、優勝と安定した実力を発揮してきた。さらに1月24日にチェコで行われたジュニア世界選手権の個人戦でも他を寄せつけずに2連覇を飾った。
【前半8戦までのW杯順位とポイント】
①高梨沙羅(670ポイント)②サラ・ヘンドリクソン(米国、501)③コリーヌ・マッテル(フランス、448)④アネッテ・サーゲン(ノルウェー、411)⑤ダニエル・イラシュコ(オーストリア、390)⑥ザイフリードスベルガー(オーストリア、357)⑦エヴェリン・インサム(イタリア、296)⑧カリーナ・フォークト(ドイツ、265)⑨カティア・ポズン(スロベニア、216)⑩リンジー・ヴァン(米国、206)
ポイントは1位100、2位80、3位60、4位50……などと決まっており、獲得した合計ポイントで順位が決まる。高梨が8戦のうち表彰台を逃したのは1月6日の第6戦(ドイツ・ショーナッハ)の4位だけ。この時はほとんど前が見えない濃霧という最悪の条件だった。この経験も今後に生きるに違いない。ライバルではサラが今季2勝しているが、昨季ほどの安定感が見られない。3位のコリーヌ・マッテルもまだ17歳で、16~18歳の若手が上位を独占している。4~5位は20代後半のベテラン。その一人ダニエル・イラシュコは昨季2勝し総合2位だった強豪だが、今季は5位にとどまっている。
【飛距離に加え飛型、着地のテレマークも安定】
高梨は今季、ジャンプの精度と安定感が増したうえ、不得手といわれてきた着地でのテレマーク姿勢がきっちり決まっていることが高ポイントにつながっている。今季から助走を始めるゲートを設定より下げることが可能になった。下げるとスピードが落ち飛距離も伸びないが、その分得点が加点される。ジャンプ2回の中でのその駆け引きが勝敗を分けるが、このゲート加算をうまく活用してきた。ジャンプスーツのルール変更(体からプラス6cmが2cmに)にもうまく対応できているようだ。加えて高校卒業程度認定試験(旧大検)にいち早く合格し、競技や練習に集中できるようになったことも精神的に大きい。
高梨にとって蔵王は1年前、第1戦が2位、第2戦でW杯初優勝(写真)と験がいい場所。W杯前半のペース通り仮に日本で4戦中2勝できれば、ライバルをさらに引き離すことができる。日本大会の後は2月16~17日にスロベニアで第13~14戦、3月15日にノルウェー・トロンヘイムで第15戦、そして同17日にノルウェー・オスロで最終戦が行われる。日本の小さな大エース、高梨が〝鳥人の女王〟として世界の頂点に立つ日が刻々と近づいている。