【全国の風鈴の展示も 南部・琉球・瀬戸・河内・明珍火箸風鈴……】
奈良県橿原市にある高野山真言宗の別格本山、おふさ観音で「風鈴まつり」が開かれている(8月31日まで)。本堂前のバラ園を中心に境内いっぱいに吊るされた風鈴はその数、なんと2000個以上。それらの風鈴が夏風に揺れ一斉に涼やかな音色を奏でる。その光景はまさに壮観そのもの、しばし夏の暑さも忘れさせてくれる。日本各地の風鈴を集めた展示会や即売会も同時に開催中。
風鈴まつりが始まったのは2003年。夏を無事に乗り切りたいと厄払いにやって来る参拝客に、少しでも心地よく過ごしてほしいと始めた。今や大和の夏を彩る風物詩の1つになっている。風鈴の起源はもともと古代中国で邪気除けとして寺院の軒先に吊るされた「風鐸(ふうたく)」。それが仏教とともに日本に伝わり、平安時代に貴族たちが屋敷に吊り下げたのが日本の風鈴の始まりといわれる。
おふさ観音では6月末まで「春のバラまつり」が開かれていた。風鈴まつりはその直後の7月1日にスタートしたが、バラ園ではまだ色とりどりの名残の花が咲いていた。風鈴はその上に竹を組んで吊るされ、短冊には参拝者の思い思いの願いが書き込まれていた。本堂前の天井からもカラフルな短冊が下がった無数の風鈴。その大半はガラス製で、風に揺られては軽やかな音を奏でていた。
風鈴展示会の会場は本堂北側にある「茶房おふさ」(入場無料)。一言に風鈴といっても、素材や形は実にさまざま。南部鉄器で作られた岩手の南部風鈴、「砂張(さはり)」と呼ばれる鋳物でできた小田原風鈴、高岡銅器製の高岡風鈴、琉球ガラスの琉球風鈴(下の写真上段㊨)、瀬戸焼の瀬戸風鈴……。「水戸駅の南部風鈴」は環境省の「残したい日本の音風景百選」にも選ばれている。姫路の伝統工芸・明珍火箸を使った火箸風鈴(下段㊧の右端)やリサイクル瓶を溶かし宙吹きで創作する河内風鈴(下段㊨)なども展示されている。
風鈴まつり期間中、本堂では「生き人形」を特別公開中。生き人形は江戸末期から明治にかけて作られた、まるで生きているかのような人形を指す。公開中の人形は天才人形師といわれた初代安本亀八(1826~1900)作の「飯田喜八郎像」。高さ40cm足らずの小さな座像だが、髪の毛の生え際や口元のしわ、手の甲に浮き上がる静脈など、その精緻な表現にはただ驚くばかり。亀八の作品で完全な姿で残っているのは現在日本に数点しかないというだけに一見の価値はある。ちなみに、飯田喜八郎はおふさ観音の本堂建立などに尽力した人物という。